NHK Eテレ「オトッペ」特集|不思議な音を生み出す熱意と混沌

こいつとなら心中できると思った

──せっかくなので、吉田さんが手がけたこれまでのオープニング、エンディング曲についてもお伺いしたいと思います。最初に作られたのはオープニングテーマの「ウキウキオトッペ」ですね。

吉田 これはすごい手探りだったので、何回も書き直してますね。完成するまでに6、7曲作ったと思います。歌詞も含めていろいろ提案したんだけど、なかなか決まらなかった。じゃあ正解は何だろうと制作陣と話し合いを重ねたんですが、答えも出なくて(笑)。みんな「うーん」って悩んでました。そしたら、キャラデザイナーのおおばるさんが「僕、書いてみます」って言って歌詞を書いてきたんですよね。ほかのスタッフさんが書いた歌詞もあったんですが、おおばるさんの歌詞が一番しっくり来るねってなってそこから曲を作りました。

──かなりの労作なんですね。

吉田 “原作なしの新番組の主題歌”なので正解なんかわからないじゃないですか。そんな中で、おおばるさんが「自分が責任を取る」って態度を見せてくれて、「こいつとなら心中できる」って思えた。「それじゃあ、こっちもやってやろうじゃないか」と思って「ウキウキオトッペ」ができたんです。

──エンディングテーマの「きっとそばにいる」はどうやって作られましたか?

吉田 実は幼少の頃アニメってあんまり観てなかったんですけど(笑)、流行ってたアニメソングは頭に入ってて、どのアニメもエンディングは寂しい感じだなっていう印象があって。「きっとそばにいる」はそのセオリー通りに作った感じですね。

──確かにエンディングテーマらしいエンディングテーマになっていますね。同じくエンディングテーマですが、全然毛色が違う「恋するなべぶぎょう」はどうやってできたんですか?

吉田 これは“アニメ本編の中にも入る楽曲”という企画でしたね。俺は曲にストーリーを持たせることが大事だと思っているので面白いと思いました。楽曲を好きになってもらうためにはいい曲であることが絶対条件で、さらに裏側に強い思いとか生まれたきっかけがあったほうが人の記憶に残る。「土鍋コーポレーションの社歌」という自分が想像したものとはちょっと違うお話になりましたけど(笑)。

大きな反響でエンディング曲に昇格

──曲に本編と絡んだ設定があるということでは6月に発表された「OH!OH!オトッペ」も同じですよね。

吉田 「OH!OH!オトッペ」の元になるフレーズは最初に劇中で出てきたんですよね。当初はエンディング曲になる予定もなかったんです。ただ、視聴者の方からの反響がすごかったので、これをエンディング曲にしようということになりました。最初に公開したフレーズをサビにして3、4曲作りましたね。その中からダブのバージョンが選ばれたんです。

──風のオトッペ「ウィンディ」役の井口裕香さんがさまざまな歌い方をしていますよね。

吉田 同じフレーズをいろんな歌い方で録音させていただきましたね。酔っぱらったように歌っていただいたりとか(笑)。ダブ処理は、せっかくなのでダブの神様にやってもらおうってことで、Dub Master X氏と一緒に作らせていただきました。いろいろ教えてもらって勉強になる現場でした。

Twoth あれはプロの仕事でしたね。ハンパないです。オトウイルスが広がっていくイメージもすごくよく出ていました。

──結果として、公開されている「オトッペ」の動画の中でも1、2を争う再生回数になっていますね。

吉田 そうなんですね。今朝の話なんですけど、うちの奥さんに子供がこの曲を歌ってるって教えられて。「ほら、あれ!」って言われて見てみたら、子供がブラインドをバンバン叩きながら「(バン!バン!)オートッペ!!」って言ってました(笑)。

DJシーナ(CV:久野美咲)、ウィンディ(CV:井口裕香)、メタルク(CV:千葉進歩)
「バラバラバンバ」
2018年11月2日配信開始
DJシーナ(CV:久野美咲)、ウィンディ(CV:井口裕香)、メタルク(CV:千葉進歩)「バラバラバンバ」
収録曲
  1. バラバラバンバ
NHK Eテレ「オトッペ」
NHK Eテレ「オトッペ」
放送情報
毎週月~金曜日 8:40~8:45
再放送:
毎週月~金曜日 17:55~18:00 / 日曜日 7:40~7:45
※放送日時は予告なく変更になる場合あり。
ストーリー
世界一のDJを目指す主人公シーナはある日、不思議な扉をくぐって別の世界に迷い込んでしまう。そこは音から生まれた不思議な生き物・オトッペたちが暮らす「オトッペタウン」。シーナはこの世界で風の音から生まれたウィンディをはじめ、さまざまな音から生まれたオトッペたちと出会っていく。
キャスト
  • シーナ:久野美咲
  • ウィンディ:井口裕香
  • メタルク / グラストン:千葉進歩
  • ウッドウッド / フレイミー:木内秀信
  • モータロン / マネスキー:渡辺明乃
  • ペッペラーノ / ポトレイン / ナレーター:桐井大介
  • ウォッタ / ウミッタ:小原好美
  • ドアモリソン / ウィンディパパ:大山鎬則
  • カットン:浅野まゆみ
  • エレキー:飯島肇
  • ウエスティ:西島秀俊
吉田ゐさお(ヨシダイサオ)
吉田ゐさお
東京音楽大学作曲科卒業後、1996年に音楽ユニット・Jungle SmileのメンバーとしてSPEEDSTAR RECORDSよりデビューし、2ndシングル「片思い」で全日本有線放送大賞新人賞を受賞。2002年のユニット活動休止後はさまざまなアーティストへの楽曲提供やプロデュースを行う。2007年、手嶌葵に楽曲提供した「徒然曜日」がauとヤマハ音楽教室のCMソングに採用されたことをきっかけにCM音楽にも携わるように。2010年、話題を呼んだワコールの「リボンブラ体操」でACC(全日本CM放送連盟)「ベスト音楽賞」を受賞した。その後も「キレイモ」や「タンスにゴンゴン」などユニークで耳に残るCM楽曲を多数制作。また坂上忍プロデュースの舞台などにも出演する俳優としての一面も持つ。
Twoth(トゥース)
Twoth
2006年にPowershovel Audioからデビュー。GoogleやSONYなどのテレビCMや、アーティストとのコラボレーション作品などで数多くの楽曲を制作。2012年にはアヌシー国際アニメーション映画祭にて日本人初の音楽賞を受賞した。ISSEY MIYAKE、FINAL HOMEのデザイナーという異色の経歴を持ち、プロダクトブランドTALKY・PEOPLEAPのデザインディレクターとしても活動中。
寺村京子(テラムラキョウコ)
寺村京子
1997年に都内サウンドデザイン会社に入社し、テレビCMをはじめとする映像や音声作品の効果音制作、選曲、キャスティング、録音など幅広く音の仕事に携わる。2010年に仲間とサウンドデザイン会社を設立。2014年からは子育てをしながらフリーランスの音効として主に子供向けアニメーションやCMの効果音制作を行う。民族楽器や生音、声を加工した音作りが得意。NHK Eテレ「プチプチ・アニメ」の「リヴ&ベル」では効果音とキャラクターの声を担当している。