ハルカミライの芋っぽさも悪くない

──長いキャリアと高い人気を誇りながらも、パワープレイでお客さんを巻き込もうとするcoldrainの姿が後輩たちに刺さっているんでしょうね。

橋本　本当にその通りです！

Masato　そうすることで、自分たちが飽きないでいられるんですよ。楽曲やライブのスタンスはずっと一緒だけど、何かは変えていきたいと思っていて。それを進化と呼ぶのか変化と呼ぶのかはわからないけど。フェスやイベントだと、特に1曲目や最後の曲を固定するバンドも多いと思うんですけど、俺たちはなるべく変えるようにしてます。

Masato（coldrain）

──それと近い話かもしれませんが、coldrainは昨年のライブツアー「coldrain presents FDXV+ TOUR」のオープニングアクトをオーディションで決めていましたよね。あれにはどういった意図があったのでしょうか？

Masato　さっきの学の話じゃないけど、最近「若い頃にカラオケでcoldrainを歌っていました」っていうバンドマンにめちゃくちゃ会うんです。「コピーしていました」とか「バンドを始めるきっかけがcoldrainです」とか。だけど、みんな今やっているバンドはラウド系ではなくて。じゃあ自分たちと近い音楽をやっているやつらってどこにいるんだろうと思ったときに、あまり知らないことに気付いた。そういうバンドと距離ができてしまっていたんです。だったら自分たちで探してみようと。というのも、俺らくらいのキャリアのバンドが下の世代の面倒を見られないと、シーンが続かないだろうなと思い始めて。それまで、「年下のバンド」と言ったらハルカミライとかだったから、そこに負けないようにという考えで活動していたんだけど、やっとシーン全体に目を向けられるようになってきた。それも、ハルカミライをはじめとする次世代のバンドと戦わせてもらえたおかげだと思います。

橋本　「新しい世代につなげていかないといけない」という考えは、いつ頃から持つようになったんですか？

Masato　去年。

橋本　去年!? それですぐオーディションか……すごいですね。先輩たちを見ていると、みんな自分のいるシーンを背負って、フェスもやってすげえなと思うんですけど、俺はまだそんなことまで考えられていないから、いつか俺もそういう気持ちになれるんだろうかという思いがあって。

Masato　学は自然となるタイプなんじゃないかと思うけどね。ハルカミライは「バンドっていいな」という気持ちにさせてくれるライブをしているから。だから「俺らもそっち側の人間になりたい」と思う後輩バンドが出てくるんじゃないかな。

橋本　なるほど。そう考えると、俺らのイモっぽさも悪くはないっすね（笑）。

左からMasato（coldrain）、橋本学（ハルカミライ）。

Masato困惑「俺はどうやって戦えばいいの？」

──橋本さんは、coldrainに対して「ここは敵わないな」と思うところはありますか？

橋本　まず……単純にサウンド感が全然違うし、音圧は敵わないですね。最初にバーン！と一発鳴らしたときの重たさ、華やかさみたいなものは勝てない。あとは歌。俺も歌えるほうだとは思うんですけど、Masatoさんは圧倒的な歌心があるので。

Masato　うれしいこと言ってくれるね！ 本当は下手なんですけど（笑）。

橋本　いやいや、何言ってんすか！（笑） Masatoさんの歌って、聴きながら思わず顔がぐわっと歪んでしまうような、衝撃的な歌なんですよ。俺もそこを目指しているので、聴くたびにいいなあって思います。対バン当日はMasatoさんの歌の力で、ハルカミライのお客さんが取られるだろうなという不安もあります。俺らのお客さんは歌が好きな人が多いので。

Masato　そもそもハルカミライのような音楽って、歴史的には歌がうまくなくてもいいんですよ。なのに学はうまい。それがまた腹立つんですよ（笑）。しかも客席で歌ったり、ステージを自由に動き回ったりする野獣タイプのボーカルで。「もう俺はどうやって戦えばいいの？」って思う。だから俺、イベントでハルカミライが自分たちの出番の前のときはあえて観ないようにしてます（笑）。

橋本　「引っ張られるから観ない」って言ってますよね（笑）。何よりの褒め言葉です。

橋本学（ハルカミライ）

「好きなものを好きでいいんだよ」と伝えられる日に

──最後に今年の「音楽と行こう」は「未来へつなぐ、2マンライブ！」というテーマを掲げていて、例えばハルカミライのライブを見て「音楽最高！ 俺、ミュージシャンになる！」と思ったり、coldrainのライブを見て「小さなことだけど英語をがんばってみよう」と思ったり、音楽とともに前に進む、その力になれたらという思いが込められています。このイベントの意味も踏まえて、当日への意気込みを聞かせてください。

橋本　俺は普段から、特に弱い子たち、音楽を心の支えにしている子たちが、ハルカミライの音楽やライブでがんばるパワーを手に入れてくれたらいいなと思っていて。どんな仕事をしているか、どんな生活をしているかは人によって違うけど、みんながそれぞれのステージに立っていると思っているので、そこで輝けるようになるライブができればと思っています。

Masato　俺は「主催：au（KDDI株式会社）」と聞いたときに、「着うた」の存在を思い出して。俺、昔自分の着うたをSlipknotにしていたんです。周りがどんな音楽を聴いていようが、自分が好きなものは好きという気持ちで設定して、それこそ“音楽とともに”生活していた。そうやって好きなものを突き詰めていった結果、今の自分になったわけで。バンドを始めた頃も「そんなジャンルをやっていても売れるわけない」って笑われていました。だけど実際は日本武道館でライブができるまでになった。それって自分の“好き”をあきらめなかったから。みんながみんな自分の夢を叶えられるわけではないけど、「好きなものを好きでいいんだよ」ということを伝えられる日にしたいですね。だから俺らのことを好きじゃなくても安心してハルカミライを観に来てほしいし、安心してcoldrainだけでも観に来てほしい。そこで何かを感じてくれたらうれしいです。

左からMasato（coldrain）、橋本学（ハルカミライ）。