ナタリー PowerPush - OSTER project

ディズニー映画とボーカロイドの出会い

曲を作る段階で「ここはこういう映像にしよう」

──ちなみに、OSTERさんは動画の制作にはどれくらいタッチしているんでしょう。

「Music Wizard of OZ」の動画に関しては、ほぼプログラミングは自分でやってます。イラストはYおじさんに描いてもらって、照明プランはうさぎさんにお願いして手伝ってもらったんですけれども。

──動画を作ってみて、手応えはどうでしたか?

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今回初めて3Dソフトを買っていじってみたんです。やっぱり新しい分野なんで苦戦する部分も多かったんですけど、やっぱり完成したものを観たときに、「これは自分で作ったんだ!」って思ってものすごい感動が湧き上がってきて。やってよかったなっていう充実感がありましたね。

──自分で動画を作るということが曲作りにも影響を与えたりします?

曲を作る段階で「ここはこういう映像にしよう」というアイデアはありましたね。例えば目からレーザービームを出そうとか、豆腐屋が出てくるとか。それは動画にしたらすごく面白くなりそうという、それありきで作った部分はありますね。

──先ほど「つまらない曲にならないように」って言っていたわけですけれど、そのためのアイデアをより盛り込めるようになった感じですね。

特に「Music Wizard of OZ」は20分ある曲なので、いかに飽きさせないかについては、細心の注意を払いました。ストーリーも破綻なく充実していて、音楽的にも飽きさせないようにいろんなジャンルの音楽を詰め込んで、面白おかしい部分も入れながら最後はきれいにまとめられるようにっていう。そういうバランスを考えて作りましたね。

──メロディとリズムだけじゃなくて、いろんな起承転結やネタやストーリーを考える必要があったという。

ちゃんと1つの作品として成立させるために、ものすごく時間をかけましたね。1年以上は頭の中で構想を練りまくって、考えてました。

ボーカロイドはシンガーでありながら役者になり得る存在

──OSTERさんから見たボーカロイドのシーンについても話を聞ければと思うんですけれども。ボカロのシーン自体から何か影響を受けるということはありますか?

ぶっちゃけ、あんまりないですね。昔は聴いてたんですけど、最近はあんまり聴く機会が少ないので、ボーカロイドシーンから影響を受けるのは少ないかな。

──ボカロPの中でも女性の方って本当に少ないですし、やってることも、立ち位置もすごく独特だなと思いました。

そうですね。ほかにはあんまり知らないです。私自身、ほかの人との交流が少ないのもあるんですけれど。

──ボカロシーンの過去と現在についてはどうでしょう。最近の状況を見て、どういう変化が一番大きいという風に思いますか?

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やっぱり聴いてる層がどんどん低年齢化しているのは一番感じますね。今は小中学生のリスナーが多いんですよ。去年の夏の「マジカルミライ」はU-18公演に行ったんですけれど、トイレに行こうと思ったら小さい女の子たちがズラーっと並んでて、「えっ……」みたいな(笑)。

──それくらいの年頃のときにOSTERさんの好きだったものと、今のボーカロイド好きな女子が好きなものと、どこかでつながりがあったりするんじゃないでしょうか。

いや、私、本当におっさん趣味だったんで(笑)。ビッグバンドとかミュージカルとかディキシーランドジャズとか、ビンテージな音楽が好きだったんです。だから、普通の女の子が好きになるものとちょっとずれてるのかなと思います。

──小学生、中学生の頃の自分が憧れていたものって、どういうところがきっかけになったんでしょう?

やっぱりディズニーですね。「美女と野獣」とか「眠れる森の美女」とか、ディズニー映画をよく家で観ていて。そこに衝撃を受けた感じです。思ってること全部を歌で表現してしまうような、ミュージカル独特のほかにない感じがあって。そこに惹かれたんだと思います。

──ボーカロイドでミュージカルをやるにあたって「不思議の国のアリス」や「オズの魔法使い」を下敷きにしたものを作ろうというのも、そういう影響が大きい?

そうですね。やっぱり、ディズニー映画の影響っていうのは大きいと思います。

──ミュージカルを作ってみて、ボーカロイドと物語音楽の親和性の高さも実感するところでした?

それはありましたね。ボーカロイドって、シンガーという立ち位置にありながら役者になり得る存在だと思うんです。だから物語音楽の語り部として適役だったんじゃないかなって思います。

原点に立ち戻ってカッコいい系のインストを作りたい

──最後に、どういう存在になっていきたいかを聞かせてください。いかがでしょう? クリエイターとしての未来像について、どんなイメージがありますか?

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今はそろそろインストゥルメンタルの方にもまた力を入れてやっていきたいなと思っていますね。去年、一昨年のビーマニシリーズでお話をいただいて、今そちらでも数曲書かせていただいているんですけど、そういうのもあって、もう一度原点に立ち戻って、カッコいい系のインストゥルメンタル楽曲を今後作っていこうかなと思っていて。

──基本的には音楽を作る人っていうのは変わらない?

そうですね。そこが自分にとって一番大事な部分なので。いろんなアーティストにも楽曲を提供して、なんでもできる人になれればいいなと思っています。

ニューアルバム「Attractive Museum」/ 2014年4月23日発売 / Subcul-rise Record
初回限定盤 [CD+DVD+ブックレット] 3024円/ SCGA-00001
通常盤 [CD] 2484円 / SCGA-00002
収録曲
  1. MARSHMALLOW HOLIC
  2. POMPADOUR
  3. サマーアイドル
  4. ドロッセルの剣
  5. レツェルの騎士
  6. 魔法使いのショコラティエ
  7. tete-a-tete
  8. ガンガンがんばリンク!!
  9. flower of sorrow
  10. 狐ノ嫁入リ
  11. on the rocks
  12. マスマティガール
  13. おおかみなんかこわくないッ!
  14. Music Wizard of OZ
初回限定盤仕様
  • 「Music Wizard of OZ」のスペシャルエディション映像を収録したDVD付属
  • 「Music Wizard of OZ」「Alice In Musicland」の楽譜が掲載されたブックレット「VOCALOIDミュージカル Selection」を同梱したボックス仕様
OSTER project(おすたーぷろじぇくと)

2003年からインターネットを中心に活動している女性クリエイター、OSTERによるソロユニット。2007年の「初音ミク」発売直後にオリジナル曲「恋スルVOC@LOID」を動画サイトに投稿し、これをきっかけにボカロPとしてのキャリアをスタートさせる。楽曲の特徴はファンタジックでかわいらしい世界観。ボーカロイドを使った大作ミュージカル「Alice in Musicland」などでボカロシーンにインパクトを与える。2011年にはボカロPによるインターネット発のレーベル・BALLOOMの設立メンバーとなり、ビッグバンド編成の「OSTER "BIG BAND" project」としてアルバム「GOSSIP CATS」を発表。その後もクレモンティーヌとのコラボ作「魔法使いのショコラティエ -Le Chocolatier Enchante-」、フルオーケストラで制作された「Story Teller」、サンリオとのキャラクターであるシナモロールとコラボレートした「Cinnamon Trip!!」などさまざまな取り組みによるアルバムを発表した。2014年4月には、2010年代のボカロ曲を中心に収録したアルバム「Attractive Museum」をリリースする。