気を付けているのは「つまらない曲にならないように」

──「魔法使いのショコラティエ」はクレモンティーヌとのコラボが原曲のフレンチボッサな曲ですけれど、これが作られた経緯は？

もともとイベント「サロン・デュ・ショコラ」のテーマソングとして使われるということで、それにふさわしいような楽曲にしようと思って作った結果、そういう感じになったんです。発注を受けて作るようなことも増えてきたので、その範囲の中でどうやって遊ぶかっていうのを、楽しみの1つとしてやっていたりしますね。

──クリエイターとしては、お題があって、そこから発想が広がるタイプ？

そうですね。やっぱりお題があると面白いんですよね。力試しというか、自分に挑戦するみたいな部分もあるし、そういうことも楽しみながら作ってますね。たとえば「サマーアイドル」も、最初セガさんから「水着にピッタリの曲を作ってくれ」っていう発注があったんです。でも「ただのアイドルチックな感じだとつまんないな」と思って悩んでいて。で、北海道に旅行に行ったときにホテルの夕食中にすごくビンテージな感じの演奏が始まったんですよ。「これだ！」と思って、ビンテージアメリカな雰囲気を織り交ぜたアイドルポップを作ったりして。

──お題やテーマを抜きにすると、OSTERさんが楽曲を作るときに一番の核になっている部分はどういうところだと思います？

つまらない曲にならないようにっていうのは、常に気を付けてます。平坦なコード進行の曲でも変わったことはしようと意識してますね。やっぱり何か変わったことしてないと聴いてる人も飽きちゃうだろうし、何より自分がつまんないんですよね。

まだ自分でやったことがなくて、自分が好きな音楽って何だろう

──「Attractive Museum」というタイトルはどういうところから？

1つのジャンルにこだわらずに、いろんなタイプの曲を作りたいという目標があるんです。で、常日頃そう思って作ってきて、いざアルバムとしてまとめたらやっぱりいろんなジャンルを作ってきたなという感じがあって。バリエーション豊かなアルバムというところから、音の博物館というイメージが湧いてきて。そこから「魅惑の博物館」という意味のタイトルを決めたんです。

──ジャンルは本当に多彩ですよね。それこそ「Music Wizard of OZ」ではヘヴィメタルもビッグバンドも1曲の中に盛り込んでミュージカルにしているわけですし。

そうですね。あの曲は、そういう点でも自分のスタイルを体現したような曲にしたいなと思って作った曲です。もっとやれるジャンルの幅を広げて、もっともっと「Attractive Museum」な存在に自分自身がなれればいいなと思います。

──そもそも、まずこういうボーカロイドミュージカルのスタイルで曲を作ろうというアイデアはどこから生まれたんでしょう？

これは以前に「Alice in Musicland」という曲でやったのが最初なんですね。

──2011年公開の曲ですね。

当時、新たな試みにチャレンジしたいと思ったときに、まだ自分でやったことがなくて好きな音楽ってなんだろうって考えて。「あ！ ミュージカルだ」と思ったんですよ。私はディズニー映画とかを観て育ってきて、そこでミュージカル音楽に興味はずっと持っていて。で、ボーカロイドでミュージカルをやるのはいいんじゃないかって思ったんです。ボーカロイド1人ひとりを役者として見立ててミュージカルを作ったら面白いんじゃないかって。

──それをやってみたら思った以上に反響があった。

そうですね。正直、あそこまで皆さんに観てもらえると思ってなかったんで。これはこのままにしておくのはもったいないなって思って、今回の「Music Wizard of OZ」の制作をしようという発想になりました。