押尾コータロー「Encounter」 PR

押尾コータロー|出会いが描き出す14の景色

サイボーグっぽく無機質に

──アナログ盤でいうとA面ラストにあたる7曲目の「Cyborg」は、押尾さんのテクニックが全開になったパワーチューン。こちらはスリリングな16ビートですね。MVを観ましたが、鋭いカッティング、力強いタッピング、合間に入れたアルペジオのフレーズなどが渾然一体になって大きなグルーヴを作り出していて圧倒されました。

ありがとうございます。今回のアルバムではわりと例外的に、メロディの印象が薄い曲ですね。実は当初、自分ではちょっと無機質すぎるかなと思っていたんです。でもこれも「FLOWER」と同じく担当ディレクターが「絶対カッコいいから、完成させましょう」と言ってくれて。その言葉に後押しされて、振り切ることができました。それこそサイボーグっぽく無機質になっても構わないから、徹底的にリズム重視のアレンジを追究してみようと。

──テクニカルな部分ではどこがポイントなんですか?

専門的な話ですが、カッティングをブレイクするときのミュートです。低音弦をビシッと止め、高音だけ「♪チャッチャッ、チャチャ」と素早くかき鳴らす。すると、分厚く鳴ってた音が一瞬でパッと止まる気持ちよさが生まれます。そのギャップをいかに鮮やかに作れるかがポイントです。

この曲を避けて通るわけにはいかない

──ちなみに本作「Encounter」全体を通じて一番難しかったり、難産だった曲はなんですか?

断然、10曲目の「Harmonia」ですね。もともとこれは、世界的なクラシックギタリストの朴葵姫(パクキュヒ)さんに依頼されて書き下ろした曲なんです。歌姫ならぬ“ギター姫”の形容がぴったりな彼女が演奏している姿を想像ながら作りました。とにかくすごいテクニックの持ち主なので。難しいハーモニクス奏法(弦を強く押さえず、軽く触れることで倍音を得る技法)を多用して。曲のタイトルは「調和の女神」を意味する「Harmonia」にしたんです。

──朴さんが2018年リリースしたアルバム「Harmonia -ハルモニア-」に収録されていますが、そういう由来があったんですね。

その時点では正直、セルフカバーすることは完全に想定外でした。でも今回、“出会い”をテーマにしたアルバムを作るにあたって、この曲を避けて通るわけにはいかず……改めて練習してみたら、これが予想以上に難しかったと(笑)。

──とびきりの難曲がブーメランのように自分に戻ってきた。

押尾コータロー

彼女の持ち味を引き出すために、ギターを弾きながらではなく譜面上で曲を書いたのも大きかったですね。それでついつい難しい技法をふんだんに入れてしまった。

──どのへんが大変だったんですか?

ハーモニクスと実音を交互に鳴らすところかな。これが曲の中に次々に出てくるんでする。そういえば楽曲を受け取った朴さん、こんなことをおっしゃってました。「かわいらしい曲を作ってくださってありがとうございました。でも、奏法はちっともかわいらしくないです」って。その言葉を思い出しましたね(笑)。もちろん彼女は難なく弾きこなしていたんです。セルフカバーしてみて、改めて朴さんのすごさも実感できました。あとはナイロンの弦を想定して作った曲をスチール弦で弾き直す面白さも。

──「Encounter」の押尾さんバージョンと朴葵姫さんバージョンを聴き比べてみるのも楽しそうですね。12曲目の「teardrop」はいかがですか?

これはですね。去年の秋にDEPAPEKOとして、「PICK POP!」というJ-POPカバーアルバムを作った際に、SEKAI NO OWARIの「Dragon Night」を演奏したんですね。その際に考案したチューニングを使って作曲しました。

──おお! ここにも“出会い”のフィードバックが。

DEPAPEKOの活動はすごく楽しくて。僕もDEPAPEPEの2人もそれぞれのスタイルを崩すことなく、それでいて3人の誰が抜けても成り立たないサウンドが作れました。Perfumeの「チョコレイト・ディスコ」のカバーなんて、僕1人の演奏ではとても再現しようと思えなかった。でもDEPAPEKOのバージョンでは、三浦(拓也)くんが弾いてくれた反復フレーズが絶妙に効いていて……ある種の“中田ヤスタカ感”も出せたと思う。ぜひ「PICK POP!」は第2弾もやりたいし、今回のアルバムにもいい刺激をもらえましたね。

50代を迎えた押尾コータローの展望

──そして、今回の“出会い”のアルバムを締めくくるのが「ナユタ」。ゆったりしたリズムと心地よいリバーブが心に残る美しいバラードです。この曲には押尾さんにとって憧れのギタリストで、有名なウィンダム・ヒル・レコードの創始者でもあるウィリアム・アッカーマンさんがゲスト参加しています。

感無量でした。もちろんアッカーマンさん自身が素晴らしいギタリストですし、実は、先ほどもお話しした僕が最初に衝撃を受けたギタリストのマイケル・ヘッジスを見出した人でもあるんです。ドイツ生まれのアメリカ人の方ですが、ちょっと和のテイストが入った「ナユタ」のメロディを気に入ってくださって。曲を褒めてもらえたのもうれしかった。

──アッカーマンさんとは、どういうご縁で?

最初にお目にかかったのは、2016年ですね。アッカーマンさんをもう一度日本に呼びたいという、レコード会社やプロモーターの人たちの熱意があって。「誰か日本でコラボできるミュージシャンはいないか?」という話になったとき、僕の名前を出してくださった方がいたんです。本当に感謝のひと言ですね。それでまず、奈良県・春日大社の「特別奉納演奏」で共演させていただいて。2018年にBillboard Liveでの僕のライブにゲスト出演していただきました。その時に一緒にレコーディングもしようということになり「ナユタ」のコラボレーションが実現したんです。それこそどこか関西人ノリもある、すごくフランクな方で。大阪と東京のライブの間にもプライベートで一緒にお食事したりしていたので、今回はリラックスして演奏できた気がします。

──ギタリストとしての聴きどころはいかがでしょう?

実はアッカーマンさんは建築士の免許も持っていて。自らトンカチをふるって、ゼロから家を建てちゃったりするんですね。実際にご自身のスタジオは自分で作ったとおっしゃってました。手もめちゃめちゃゴッツイ。でも、トンカチを握るということは、爪を伸ばせないわけ。だから指先にバンジョー奏者がしているような鉄製のフィンガーピックをはめている。それでスチール弦に触れたときのカチッという硬い音が、アッカーマンの真骨頂なんです。そうやって奏でられるアルペジオを、ぜひ聴いてもらいたい!

──最後に50代を迎えて今後の展望のようなものはありますか?

これからもやっぱり出会いを大切にしていきたいですね。誰かとコラボをしたり、ゲストに呼んでいただいたりすると、すごくポジティブな刺激を受けられる。歌手の方と共演するのも勉強になりますし、それこそDEPAPEKOみたいな小人数のギターアンサンブルも楽しい。あと昨今はオーケストラやビッグバンドと共演させていただく機会もあって……1本のギターで大編成の楽団と向き合う面白さを実感しました。

──なるほど。それもまた新たな出会いですね。

そういう場合、僕のオリジナルからオーケストラやビッグバンドとの共演に向いてそうな曲を選んでアレンジしていただくケースが多かったんです。でも今後は自分でも、大編成との共演ありきの“ギター協奏曲”的なものも作ってみたい。ギター1本の演奏にこだわってきたからこそ、そういうアレンジの幅も楽しめる自分がいる。そうやって新たな出会いを重ねていくことで、ソロとしての演奏をもっともっと充実させていければいいなと思っています。

押尾コータロー
押尾コータロー「Encounter」
2019年2月20日発売 / SME Records
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CD収録曲
  1. 大航海
  2. FLOWER
  3. Horizon
  4. 久音 -KUON- feat. 梁 邦彦 ~ジョンソンアリラン変奏曲~
  5. ガール・フレンド
  6. Pushing Tail
  7. Cyborg
  8. 碧い夢
  9. シネマ
  10. Harmonia
  11. 夕凪
  12. teardrop
  13. Message
  14. ナユタ feat. William Ackerman
初回生産限定盤 Blu-ray / DVD収録内容
  • Cyborg(Music Video)
  • FLOWER(Music Video)
  • Making Movie

ツアー情報

押尾コータローコンサートツアー2019“Encounter”
  • 2019年3月8日(金)大阪府 NHK大阪ホール
  • 2019年3月17日(日)東京都 東京国際フォーラム ホールC
  • 2019年3月23日(土)福岡県 ももちパレス
  • 2019年3月28日(木)千葉県 KASHIWA PALOOZA
  • 2019年3月30日(土)宮城県 チームスマイル・仙台PIT
  • 2019年3月31日(日)福島県 郡山HIP SHOT JAPAN
  • 2019年4月5日(金)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2019年4月13日(土)愛知県 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
  • 2019年4月21日(日)北海道 道新ホール
  • 2019年4月27日(土)京都府 ロームシアター京都 サウスホール
  • 2019年5月12日(日)兵庫県 神戸文化ホール 中ホール
  • 2019年5月18日(土)神奈川県 横浜関内ホール 大ホール
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押尾コータロー(オシオコータロー)
押尾コータロー
1968年生まれ、大阪在住のアコースティックギタリスト。オープンチューニングやタッピング奏法を駆使した独自のギターサウンドで、国内外から高い評価を集めている。中学2年からギターを弾き始め、1999年にアルバム「押尾コータロー」でインディーズデビュー。卓越したプレイやメロディアスな楽曲が評判を集め、2002年にアルバム「STARTING POINT」でメジャー進出する。同年にアメリカでもデビューを果たし、2002年から2005年まで3年連続でスイスの「モントルージャズフェスティバル」に出演するなどワールドワイドに活躍している。ギタリストとしての活動を中心に、映画音楽、テレビ番組のテーマ曲、CM音楽なども手がける。世代やジャンルを超えたコラボレーションも展開しており、2018年にはDEPAPEPEとのコラボユニット・DEPAPEKOとしてアルバムを発表。2019年2月に通算15枚目となるオリジナルアルバム「Encounter」をリリースした。