音楽ナタリー Power Push - 大島はるな

音楽的“ワガママ”を貫く彼女の“ハイスペック”なメジャーデビュー

また違った自分になれるかもしれない

──大島さんはさまざまなタイプの曲を歌われていますが、今言っていたように曲によっては「このオケに私の声を乗せるの?」みたいに戸惑うことも?

ありますね。でも、そういう楽曲に携われるのは楽しいです。

──あ、そこは楽しいんですね。

大島はるな

確かに最初はちょっとマイナスから入るというか、「これは……うーん、いいものにできるのかな?」って悩んじゃうパターンも多いんです。でも、今まで歌ったことのないような曲を歌うことで経験値も上がりますし、最終的に納得のいく形でレコーディグできれば達成感も得られますし。

──なるほど。

私はもともとお芝居をやっていたんですけど、それを始めた理由が「いろんな自分になれるから」だったんです。昔の私は、例えばお姫様とか魔法使いとか特殊な人に憧れていたから「それに引き換え自分は平凡だなあ」といっつも感じていて。

──魔法使いと比べたらたいていの人は凡人のような気もしますけど(笑)。

でも「どうして私は魔法が使えないんだろう?」ってちょっと悩んだりして(笑)。だから役者としていろんなキャラクターを演じるのは楽しかったし、歌に関しても歌ったことのないジャンルに巡り会うと「自分に歌えるかな?」って不安に思ったりもするんですけど、同時に「また違った自分になれるかもしれない」っていうワクワク感もあるんです。

女の子のかわいさを詰め込んだ歌詞

──今回のシングルはタイプAとタイプBの2種類あって、それぞれカップリング曲が異なります。まずタイプA収録の「Miracle heart!」は、アニメの原作であるPCゲーム版「ワガハイ」のオープニング。こちらは表題曲の延長というか、よりパンキッシュな仕上がりですね。

大島はるな

だから「Miracle heart!」も、「ハイスペックDays」と同じ。チャレンジングな曲でした。

──「Miracle heart!」は大島さんご自身で作詞をなさっていて、その歌詞には「これから始まる予感がもう 止まらない」「未来なんて未定で 不確かなものよ」「ビビってる私 さよならしちゃうわ すぐに…」といった一節も見られます。なのでこの曲は、メジャーデビューへの意気込みみたいなものを歌っているのかなって。

なるほど。でもこの曲の歌詞はメジャーデビューのお話をいただく前、最初にデモをいただいた時点で、私の中でイメージができあがっていたんです。それはガンガン前に出て行くような、それこそ「止まらない」感じのイメージで、ゲームの「ワガハイ」とは切り離されたものだったんですね。そしてこの曲もタイアップ曲なので、そこに「ワガハイ」に出てくるワガママな女の子たちがかわいらしくにぎやかにしているイメージもぎゅっと詰め込んで、作詞させていただきました。

──では、特に決意表明的な曲ではなかった?

はい。「メジャーデビューだからあえて」みたいな気持ちはなくて、「いつも通り、とにかくいいものを作ろう」ということしか考えてなかったですね。

誰も歌詞を書いてくれなくて……

──大島さんはインディーズ時代からご自身で歌詞を書かれていますが、きっかけはなんだったんですか?

きっかけは……誰も歌詞を書いてくれなかったから(笑)。

──ははは!(笑)

大島はるな

あの、駆け出しの頃はそんなにCDも売れてないし、作詞家の方に依頼する予算もないしで……。経費削減だと思って自分で歌詞を書いてみたらわりと楽しくて。やっぱり歌うのが自分なので、言葉の乗せ方とかも自分専用になるというか、例えば自分が発声しやすかったり、自分の声で歌うと映える言葉を自分で選べるんですね。そうやって歌詞をコントロールできるのは、よりよい音楽を作るために実は有効なんじゃないかって気付いて、もっと作詞が面白くなりました。

──なるほど。確かに「Miracle heart!」を聴いて、大島さんは「私がこのキーでこの母音を歌うと気持ちよく響く」みたいなことを知っている気がしました。要は、とても歌いやすそうだし、歌っていて楽しそう。

おっしゃる通りですし、ほかのアーティストさんに歌詞を提供させていただくときも、歌いやすさや言葉の乗せやすさは意識してますね。歌詞って自分も含めて歌い手の潜在能力を引き出せるものだと思っているので。

──では、内容的にはどのような歌詞を書いていきたいですか?

あまり難しい表現はできないんですけど、そのぶん人の心にまっすぐ届くような歌詞を書いていきたいです。あと、お芝居をやっていたこともあって、キャラクターになりきって詞を書くのも好きなので、いわゆるキャラソンにもチャレンジしていきたいです。

──そしてタイプB収録の「放課後アメージンッKiss」は、ほかの2曲と比べるとかなりポップな仕上がりになっています。

ロック色は控えめで、よりかわいくて、さわやかな感じですね。

──明らかにボーカルスタイルも違いますよね?

大島はるな

そうですね。自分の声質的には「放課後アメージンッKiss」のほうがフィットするんですけど、この曲はこの曲で、どれくらい“かわいさ”を入れるかで試行錯誤していて。つまり、「放課後アメージンッKiss」はすごくさわやかな曲調だけど、かわいくも歌いたい。でも、かわいすぎるとあざとくなってしまって、曲のよさが伝わらないなと。“さわやかさ”と“かわいさ”のちょうどいい配分を研究した結果、ああいう歌い方になりました。

──あくまで楽曲本位なんですね。「私の声に合う曲を持ってこい」「私の声を引き立てるアレンジにしろ」ではなくて、楽曲を引き立てるための歌い方を探っている。

「曲も歌もアレンジも含めてトータルでいい作品にしたい」っていうのは、いつも考えてることですね。

メジャーデビューシングル「ハイスペックDays」/ 2016年6月22日発売 / IMPERIAL RECORDS
タイプA / 1200円 / TECI-506
タイプB / 1200円 / TECI-507
タイプA収録曲
  1. ハイスペックDays
  2. Miracle heart!
  3. ハイスペックDays -Instrumental-
  4. Miracle heart! -Instrumental-
タイプB収録曲
  1. ハイスペックDays
  2. 放課後アメージンッKiss
  3. ハイスペックDays -Instrumental-
  4. 放課後アメージンッKiss -Instrumental-
大島はるな(オオシマハルナ)
大島はるな

4月5日生まれの女性シンガー。「私の歌でみんなの心を動かしたい」をキャッチフレーズに、月15本以上のライブを展開。また2013年より、さまざまなアイドルに楽曲提供をしている斎藤悠弥を総合プロデューサーに迎え、美少女ゲームなど数多くのゲームのテーマソングを手がけ、“美少女ゲームの歌姫”の名をほしいままにすると同時に、「Rising Soul / 運命の扉」「Zillion Zest / I miss you」などのシングルや、2014年3月の1stフルアルバム「自分革命」などオリジナル音源も発表する。そして2016年6月、テレビアニメ「ワガママハイスペック」の主題歌「ハイスペックDays」でメジャーデビューを果たす。