オレンジスパイニクラブ×クボタカイ|あきらめや不安も抱えてステップを踏む、コラボ曲「Step!!!!!」インタビュー

オレンジスパイニクラブとクボタカイによるコラボシングル「Step!!!!!」が配信リリースされた。

ともにワーナーミュージック・ジャパンに所属するオレスパとクボタ。「Step!!!!!」はクボタからのオファーにオレスパが応える形で制作された1曲で、「パーティを抜け出す」をキーワードに大人の青春を歌ったポップなナンバーとなっている。

「Step!!!!!」の配信を記念して、音楽ナタリーではオレスパとクボタにインタビューを実施。「Step!!!!!」の制作秘話はもちろん、2組の出会いやお互いに共鳴するポイント、9月22日に大阪・Live House Anima、28日に東京・UNITで開催されるリリースパーティへの意気込みを語ってもらった。

取材・文 / 蜂須賀ちなみ撮影 / 後藤壮太郎

レーベルメイト・オレスパ×クボタカイの出会い

──オレンジスパイニクラブとクボタさんは同じワーナーミュージック・ジャパン所属ですが、初めて会ったのはいつ頃でしたか?

スズキユウスケ(Vo, G / オレンジスパイニクラブ) カイくんと俺は「OPEN MIC by JIM BEAM」というYouTube番組で会ったんですよ。

クボタカイ そうでしたね。

左からゆっきー(B, Cho)、スズキユウスケ(Vo, G)、クボタカイ、スズキナオト(G, Cho)、ゆりと(Dr)。

左からゆっきー(B, Cho)、スズキユウスケ(Vo, G)、クボタカイ、スズキナオト(G, Cho)、ゆりと(Dr)。

ユウスケ カイくんの「せいかつ」という曲を2人で弾き語りして。それがきっかけで仲よくなっていきました。動画はまだ残っていると思うから、ぜひみんなにも観てもらいたいです。あの日が初対面で、事前に一緒に練習することもできず、30~40分前にちょっと合わせてからすぐに本番、という感じだったんですよ。スタッフさんに「2人で自然に話しているような雰囲気で入ってきてください」と言われたんですけど、初対面だからすごく緊張して。

スズキナオト(G, Cho / オレンジスパイニクラブ) そうだったんだ。ユウスケが話してるときにカイくんが「『せいかつ』って曲を~」って遮るのがめちゃめちゃ面白かったんだよね(笑)。

クボタ そうでしたっけ? はじめましてだったから、会話がちょっとたどたどしかったのかも(笑)。

ユウスケ お互い探り探りだったからね。

クボタ だけど話しながら、ユウスケさんはすごく素敵な人柄をされているなと思って。自分の曲を一緒に歌ったときも歌い手によってこうも歌詞の表情が変わるんだと感銘を受けました。

ユウスケ 僕にとっても貴重な経験でしたね。当日までの間、「せいかつ」の音源を繰り返し聴いて1人で練習していたんですけど、俺に書けない歌詞だなと思って。キーもオレスパの曲に比べると低いので、「俺ってこういう歌も歌えるんだ」という新しい発見がありました。そこからカイくんのほかの曲もさかのぼって聴くようになって。

ナオト その時期、僕らはちょうどレコーディング期間で、合間にユウスケが練習しているのを聴きながら、メンバー間で「めっちゃいい曲じゃん」みたいな話をしていたんですよ。

クボタ へえ! うれしいです。

ナオト だから2人の弾き語りの動画を観たときは「いい曲だな」と改めて思いつつ……不思議な気持ちにもなりましたね。ユウスケが自分のバンドじゃないところで歌っている姿を見ていると、取られた感じがするというか。

ゆっきー(B, Cho / オレンジスパイニクラブ) 「俺のお兄ちゃんが」って?

ナオト そう。いい表情を引き出せられると、すごく悔しかったです。

クボタ それはすみません……。

ナオト いやいや! 悔しくなったのは、いいコラボだったからこそだと思うので。

ゆっきー 僕はあの映像を観て「クボタカイくんって、すごく歌がうまいんだな」と思いました。

クボタ えー、ありがとうございます!

自分にない色を持ったバンドとコラボしたい

ゆりと(Dr / オレンジスパイニクラブ) 僕はYouTubeでクボタくんのフリースタイルバトルの動画をよく観てたから、「すごい子なんだな」という印象をもともと持っていて。ラッパーだけどバンドも好きということで、僕らとそんなに遠くない感じがするんですよね。

クボタ プレイヤーとしての原点はヒップホップやラップですけど、高校時代からいち音楽リスナーとしてバンドが好きだったんです。なので、ステージに立ち始めた頃から「いずれはバンドを背負ってライブをしたい」という気持ちがあって。最近は自分でアコースティックギターを弾きつつ、バンドを背負いながらライブをするスタイルに移行しているところです。それで今回、自分にはない色を持ったバンドとコラボしたいなと思って、オレンジスパイニクラブさんにお声がけさせていただきました。

ゆりと なるほど、そうだったんですね。

クボタ オレスパの楽曲は前からよく聴かせていただいていたんですよ。地元の友達と「キンモクセイ」をカラオケで歌ったりもしてたし。男ばっかで、お酒も入りつつ、マイク持ってないヤツもみんな歌う、みたいな。

ゆっきー いいですねー。

ユウスケ 僕らは今までコラボやフィーチャリングを一切やってこなかった。だからカイくんから誘ってもらった時点では、どんな曲ができるのか全然想像つかなかったけど、何よりも「うれしい」「楽しみだな」という気持ちでしたね。

オレンジスパイニクラブとクボタカイ。

クボタカイ VS スズキ兄弟のフリースタイルバトル

──クボタさんの中には「オレンジスパイニクラブと一緒に作るならこんな曲」というイメージはあったんですか?

クボタ 「アコギの音が聴こえていたらいいな」とざっくり思っていたけど、あんまりイメージは固めていなかったですね。

ユウスケ どんな曲を書くか、最初は何も決まってなかったよね?

ナオト うん。初めに「軽くごはんを食べながら話そうか」という感じで、ゆるく打ち合わせをしたんですよ。ユウスケ以外のメンバーはその日初めてカイくんに会ったんですけど、「こんな曲がいいかな」と話しているときに「パーティを抜け出す」というワードが出てきて。そこから僕が曲を書き始めました。

クボタ その日、スズキ兄弟と僕の2対1でフリースタイルバトルをしたんですよ。

ナオト 僕も一時期、MCバトルをやろうとしてた時期があったから、クボタくんにお願いして(笑)。

ユウスケ MCネーム、なんだったっけ?

ナオト リンダという名前で、渋谷でやってるとあるMCバトルの予選に応募して。

クボタ ガチじゃないですか(笑)。

ナオト だから少しは自信があったんです。でもやっぱりちょっとハンデが欲しいから、「俺たち兄弟と2対1でやってくれよ」とお願いして。結果は……まあ、ボッコボコにされました(笑)。

ユウスケ 完膚なきまでにやられて深く傷付いた(笑)。

クボタ でも、あのバトルはお互いにちょっと優しかったですよね。これからコラボするから相手をディスりづらいっていう(笑)。

ユウスケ 確かに(笑)。

クボタ よかったですよね、あの日の空気感。僕、音楽的にもパーソナル的にも“お兄さん”みたいな人があんまりいないんですよ。一人っ子だし、音楽的に近い先輩とかもいなかったし。だけどオレスパの皆さんと話しているときは、地元でずっと一緒に過ごしてきたような安心感がある。男同士だからこそのノリみたいなものを曲にしたいなと、初めて5人で集まった日を経て思いました。

5人でいるときの雰囲気を楽曲に

ナオト 僕も「この5人でいるときの雰囲気を曲にできたら」という気持ちはありました。「Step!!!!!」のビックリマークが5個なのも、この5人を表していて。ビックリマークはどうしても5個付けたかったし、5人でわちゃわちゃやっている感じを曲にしたかった。最近の僕らの曲では同期を入れることも多いんですけど、今回はあえて入れずに自分たちだけの音で完結させていて。程よいチープさというか、この5人でのパーティ感を大事にしました。さっきも言った通り、最初は「パーティを抜け出す」というイメージがあったんですけど、制作を進めるうちに「僕たち5人のマドンナ的存在が結婚してしまう」というストーリーが浮かんできて。作詞はカイくんとユウスケなので、プリプロ中に2人にそのイメージを伝えて歌詞を書いてもらうという流れでした。

ゆっきー 演奏に関しては、コラボだからこうするみたいなことは特になくて。曲ができあがった時点では歌詞はなかったし、いつも通り、オレスパでやっているようにやりました。

ゆりと こないだフジロック(「FUJI ROCK FESTIVAL」)があったじゃないですか。レコーディングのときにエンジニアさんと「キング・クルールのバックでドラムを叩いている人の空気感いいよね」と盛り上がって、「あのドラムを目指そう」という話になったことは覚えてます。その結果、派手さはないけどサウンド全体を支えるようなプレイができたんじゃないかと。あとさっき「僕たち5人のマドンナが」と言ってましたけど、メンバー同士でマドンナを取り合うとなると、ドラマーの場合、手ぐらいしかつなげないんだろうなって思うんですよ。あんまり目立つ立ち位置ではないので。

ナオト 何その考え方(笑)。

ゆりと できあがった音源を聴いてみたら、本当にそういう立ち位置にいるなと思って。自分のカラーも出ていると思うし、「手ぐらいはつながせてもらいますよ」みたいな(笑)。そういう意味でもいいアプローチができた手応えがあります。

オレンジスパイニクラブとクボタカイ。

オレスパとクボタカイ、それぞれの音

──クボタさんが最初にイメージしていたというアコギの音色も効いていますね。

クボタ 僕がライブでいつも弾いているアコギなんですけど、レコーディングで使ったのは今回が初めてでした。

ナオト 僕が弾いちゃったんですけどね。なんかごめん(笑)。

クボタ いやいや。

ナオト 音がめちゃくちゃよかったんですよ。売ってほしいと思ったくらい。

クボタ でも僕からすると、普段弾いているギターから自分の知らない音が出るなんて悔しいですよ。ナオトさんのように、僕よりギターのうまい人の手にかかればめっちゃいい音が出るなんて……恋人に嫉妬するような感覚ですよね。「幼馴染といるときはそんな表情するんだ。恋人は僕なのに」みたいな。

ユウスケ さっきの逆だ(笑)。僕は今回のレコーディングで、カイくんがいつも使っているマイクを使わせてもらいました。

クボタ ユウスケさんが普段使っているマイクと2つ並べて、どっちがいいか、お互いに歌って決めて。

ユウスケ 最終的に僕がカイくんのマイクで歌うことになったんですけど、そしたら声が柔らかい雰囲気になって。カイくんになれた気分でうれしかったです。

クボタ 僕も同じこと思いましたよ。ユウスケさんのマイクだと、やっぱりオレスパの音がする。ザラッとした、心が落ち着くような音ですよね。

ユウスケ そういう違いがわかったのが新鮮で楽しかったです。