イメージは「ええじゃないか」

──先ほども言われてましたが、今作はメンバーそれぞれが持ち寄った楽曲が収められているのも特徴です。これは自然な流れですか？ それとも意図的に？

HIROKI　意図的ですね。メンバーだけじゃなく、チーム全体で会議したときに、幅広くネタを集めたほうがいいんじゃないかって。

NAOTO　作品全体の大きなテーマとしては、富士急ハイランドの「ええじゃないか」（現時点で総回転数世界一のローラーコースター）みたいなイメージなんですよね。縦にも動くし、回転もするし、スピードも速いし、高低差も激しいし。乗ってると何が起こってるのかわからなさすぎて、逆に怖くないみたいな。あっち行って、こっち行って、みたいなめちゃくちゃな感じにしたかった。

──なぜそうしようと？

NAOTO　取り留めのないものを作りたくて。いつもは曲順も流れを考えるけど、今回は振り回すようなイメージでした。

──とにかく自由にやろうと？

NAOTO　自由というか、ハチャメチャにしたかった。

HIROKI　逆に「流れを組みましょう」と言っても、今回の曲ではそれも難しい気がする。「安全な暗闇」だけは最初から最後に入れるって決まっていたから、そのほかの曲が“ピース埋め”みたいなところはありましたけど。

NAOTO　あと、前々作の「NEO POP STANDARD」と前作「spark」は縛りがありましたからね。「NEO POP STANDARD」は全部打ち込みで、逆に「spark」は打ち込みなしでやったから、今回はそういう縛りをなくして作りたかった。僕的にはホップ、ステップ、ジャンプじゃないけど、この3つの流れの中でジャンプにあたる「TEN」はカオスな作品にしたくて。ちょっと原点回帰みたいなニュアンスもありますね。初期のアルバムはいろんなことをやっていたから、改めてそれもいいなと。

──自分たちの過去作は聴き返します？

NAOTO　新作を作る前は聴きますね。しんどいですけど、アルバム9枚も聴くのは。

──全部聴くんですか？

NAOTO　はい。ツアー中に暇潰しで聴くこともあるし。で、聴いた上で「何やってるんだろうな」って（笑）。やっぱり恥ずかしいのと、当時何を考えていたんだろって。なぜこんな曲を作ったんだろって、理解できないことが多くて。それが新鮮だったし、自分でも面白かった。

「バカだなあ」「アホだなあ」

──ここから楽曲単位で話を聞きたいんですが、アルバムの1、2曲目（「リアル・バーチャル・混沌」「We got the Power」）はエレクトロ色の強い、踊れる曲が並んでますね。これはNAOTOさん、YAMATOさんが一緒に作ったものだそうで。

YAMATO　はい。今回は1曲目はビートの強いダンスミュージックにして、リスナーの耳をつかみたいと思ったんです。続いて3、4曲目（「SUSHI食べたい」「ラーメン食べたい feat.ペチュニアロックス」）は“食べ物シリーズ”ですね。

YAMATO　NAOTOが2曲も食べ物の曲を書いてきて、ほんとは外す予定もあったけど、2曲並べば統一感もあるし、いいじゃんって。

──先ほどNAOTOさんは取り留めのない作風を目指したと言ってましたが、今作はそれに加えてシュールな雰囲気もありますね。

YAMATO　だいぶシュールだと思います。

──「SUSHI食べたい」のメランコリックなトラックに寿司ネタの歌詞が乗るパートはギャップがありすぎて、頭が混乱しますし（笑）。

HIROKI　もともとORANGE RANGEの音楽ってシュールなところはあるけど、今回はそれがより上手に発揮できたかもしれない。プリプロの段階で「SUSHI食べたい」をみんなで聴いたときに「やっぱりバカだなあ」って思っちゃいました。

──はははは（笑）。

HIROKI　「アホだなあ」と思えるほうが、俺らは気持ちいいんですよ。そういう基準で評価した曲もあります。シュールかどうかってギリギリのラインなんですよね。カッコいい、ダサイ、本気、本気じゃない……本気でやってるけど、クスッとしてしまう。絶妙なラインですけど、そこを目指しました。

アルバム中盤に作った“ズッコケポイント”

──それから中盤の5～7曲目（「Theme of Rainbow」「セプテンバー」「弾丸ブギウギ♂♀」）の流れは、特にカオスですね。

YAMATO　僕も「セプテンバー」のあとに「弾丸ブギウギ♂♀」のイントロが始まった瞬間、笑いました。それも「SUSHI食べたい」と「ラーメン食べたい」の流れに似てて気に入ってるポイントです。“ズッコケポイント”と言うか。

──「セプテンバー」はNAOTOさんが書いた歌謡テイストの強い曲で。

NAOTO　「セプテンバー」はアルバムの中でも最初のほうにできた曲で。まあ、タイトルは去年の9月にできた曲だからという単純な理由なんですけど。

──RYOさんのセリフっぽい歌い回しもポイントですね。

NAOTO　あれはハイライトですね。

RYO　一度自分で書いたけどダメで。HIROKI先生に書いてもらいました。

HIROKI　はははは（笑）。

RYO　最初ふざけて書いたほうが面白いかなと思ったけど、歌詞にメッセージ性のある曲だから、ふざけた自分を反省しちゃって。

──あのセリフっぽい歌い回しのアイデアはどこから？

NAOTO　去年ツアーやってるときに、移動が多いから暇なときに「ダウンタウンのごっつええ感じ」のコント「ミラクルエース」を観てたんですよ。あれに「あんた、酒飲みなはれ」というセリフが出てくるんですけど、あれがめっちゃ好きで、俺らの曲にもセリフが必要だ！と思って。それをあくまでマジメにやろうと。変に面白くしたら、シュール感がなくなるから。マジメなんだけど、なんかおかしい……。「ギャグなのかな？ いや、内容はマジメだし」っていうようなところを狙いたくて。つかみどころがないものが好きなんですよね。

──そこはNAOTOさんの嗜好だったんですね。

RYO　そうですね。自分は恥ずかしいから、逆にふざけようとしてたのかなって。ちゃんと心をタフにして、NAOTOの領域まで持っていかないといけないなって。

HIROKI　でもほかの現場では生かせないよ？

RYO　はははは（笑）。