大橋トリオ コラボベストアルバム「off White」インタビュー|新たな才能から得たエッセンス (2/2)

すべてが完璧にいった「ミルクとシュガー duet with 上白石萌音」

──今回のアルバムは2022年2月発表の「ohashiTrio best Too」に続くベスト盤ですが、両方に入っている「恋するライダー feat. 斉藤和義」と「ミルクとシュガー」はそれだけ思い入れの強い曲ということですか?

もちろん全曲、思い入れはあるんですけど。これまでベストを何回か出してる中で、収録されてない曲から選んだ……いや、そうでもないかな。「Turn our world around feat. Emi Meyer」「Embark(guitar by 布袋寅泰)」「kite feat. Mona(Kitri)」「Be there feat. BONNIE PINK」の4曲は、「これ、今までのベストアルバムに入れてなかったんだ」みたいな感覚でしたけど。

大橋トリオ

──アルバムとしての流れも考慮したのかなと思いました。例えば「アーモンド feat. りりあ。」と「ミルクとシュガー」、「窓 feat. 矢野顕子」と「kite」とか、音像に少し共通点がある曲をセットにしたような感じ。

それはあるかもしれないですね。選曲はしましたけど、曲順はお任せというか、ディレクターに「これでどうですか?」って言われて「あ、いいじゃないですか」と。何かあれば言いますけど、問題なければ「じゃあそれで」になるので、提案されたのがいい曲順だったんだと思います。

──「ミルクとシュガー duet with 上白石萌音」は2021年発表のアルバム「NEW WORLD」と「ohashiTrio best Too」、そして本作という3作連続で収録されています。これだけ短期間に3枚のアルバムに入ったわけだから、相当な推し曲なんですね。

あらまあ、そんなに連続してました? まあ、これは入れないわけにいかなかったかな。僕の中ではもっと聴かれるべきというか、聴いてほしい曲なので。ひさびさに自分がやりたかったことを具体的に示せた曲なんですよ。そこまで強くそう思える曲ってそんなに多くはないから。すべてが完璧にいったなと思ってます。

──僕も異論ありません。素晴らしい曲だし、「NEW WORLD」のインタビューでも言いましたが(参照:大橋トリオ「NEW WORLD」特集)、非常に独自なものになっていると思います。

萌音ちゃんの名前を借りて、もっと派手に広がるかなという期待もあったんですけどね。僕としてはこういう曲がチャートを上がっていくJ-POP界であってほしいんですよ。アメリカだったらもっと違った結果になったかな、とも思います。

何も考えずに観て感動できるライブ

──コラボベストアルバムのリリース日から全国5劇場で「スペシャル映像上映会&トークショー」というのがありますが、どんな映像が観られるんですか?

僕は全然知らないんですけど、過去に2回、映画館でドキュメンタリー観賞会みたいなのをやってるんですよ。「勝手に情熱大陸」って呼んでるんですけど(笑)。その第3弾ですね。

──ベストアルバムは、2022年1月のBunkamuraオーチャードホール公演のライブ映像付きのバージョンも出ますよね。

ビッグバンド編成のTHE PRETAPORTERSでやったときですね。

──僕はこのとき初めて大橋さんのライブを拝見したんですが、すごくよかった記憶があります。僕個人は仕事柄ずっといろんなことを考えながら観ていましたが、観ている人が頭を空っぽにして、ただ身を委ねることができる音楽だなって。

おー。それ一番うれしい感想かも。僕が今までで一番よかったと思うライブは、前に話したことがあるかもしれませんけど、東京国際フォーラムのホールCで観たルーファス・ウェインライトなんですよ。「チケット1枚余ったから」って知り合いに誘われて、前情報ゼロで観に行って、大感動して帰ってきたという(参照:大橋トリオ「鳥のように」インタビュー)。

──その話は覚えています。すごいですね。1曲も知らない状態で観て……。

人生イチ感動したライブになったんですよ。楽器が多彩で、プレイヤーが持ち替え持ち替え、ギターの人がめちゃくちゃいいピアノを弾いたり、マイクを使わずに生声だけで歌ったり、もう本当にすごいエンタテインメントで、究極の形だなって。そのとき自分も何も考えずに観てめちゃくちゃ感動したので、それを目指したいと常々思っているんです。だからそういう感想を言ってもらえるのは、僕が狙ったようになってるということ……と今、解釈しました。

大橋トリオのライブでしか観られないものを届けたい

──Bunkamuraオーチャードホール公演のことは覚えていますか?

全然覚えてない(笑)。曲目を見ると思い出しますけどね。最初に「It Had to Be You」をやったなとか、「Love The Season」をめちゃくちゃひさびさにやったなとか。

──普段のバンドでのツアーと、THE PRETAPORTERSでのスペシャルな公演では、心構えに違いはありますか?

THE PRETAPORTERSだとせいぜい1、2回で終わっちゃうから「絶対ミスれない」みたいな。かといって通常のツアーがミスっていいって話ではないんですけど(笑)。まあ、ツアーは成長していくもの、ということもありますから。初日と最終日を両方観てくれるファンの人がいたりとか、ツアーならではの楽しみ方もあるようで、それに甘えちゃってる部分はありますよね。もちろん最初からちゃんと完成したものをお届けする意識はありますけど、とりあえずやってみて、違うとこは直していこう、みたいな感じにはなりますね、どうしても。

大橋トリオ

──それができないですもんね、1回きりだと。

逆に「すごくよかったな」って我々が感じていても、1回きりなんで虚しいんですよ。「あー、これ1回で終わっちゃうのか」みたいな。

──そういう意味では、映像作品として何回でも観られるのはいいことなのでは?

いやー、僕は本当にやめてほしいです(笑)。観ないんですよ、自分の映像。人がやってるのを観てもすごくいろいろ感じ取っちゃう人間なので、自分のことを客観的に観たらものすごく細かいことまで気になるのは間違いないし。だから観ないです、基本。観て反省しながら成長していくことも大事なんでしょうけど、精神的に無理ですね。

──粗探しをしちゃう?

粗しか見えないです。見た目も声もイヤだし、自分の思ってるのと全然違ったりするでしょ。いまだにそういうのがあるんですよ。

──録音では?

録音は大丈夫。ちゃんと細部まで気を付けながらやってるから。誰にも見られてないし、ちゃんと細かくモニターできてるし。それは慣れました。

──よかった。最後に6月からホールツアーが控えていますね。まだ時間がありますが、現時点で何か考えていることはありますか?

コラボアルバムが出たタイミングだから「ツアーでどんなことすんの?」と思いますけど、常々思っていることとしては、大橋トリオのライブでしか観られないオリジナルなもの、面白いもの、新しいものをお届けしたい、と。その気持ちはたぶん一生変わらないと思います。

公演情報

大橋トリオ コラボベストアルバム「ohashiTrio collaboration best -off White-」発売記念スペシャル映像上映会&トークショー

  • 2023年1月11日(水)東京都 ユナイテッド・シネマ豊洲
    18:30開映
  • 2023年1月14日(土)大阪府 なんばパークスシネマ
    18:30開映
  • 2023年1月15日(日)福岡県 ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13
    12:00開映
  • 2023年1月19日(木)愛知県 ミッドランドスクエア シネマ
    18:30開映
  • 2023年1月29日(日)北海道 ユナイテッド・シネマ札幌
    12:00開映

ohashiTrio HALL TOUR 2023

  • 2023年6月30日(金)福岡県 福岡市民会館
  • 2023年7月7日(金)愛知県 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
  • 2023年7月9日(日)東京都 昭和女子大学人見記念講堂
  • 2023年7月15日(土)大阪府 NHK 大阪ホール

プロフィール

大橋トリオ(オオハシトリオ)

2007年にアルバム「PRETAPORTER」でデビュー。シンガーソングライターとしての活動のほかテレビドラマ、CM、映画音楽の作家としても活躍しており、代表作には映画「余命1ヶ月の花嫁」「雷桜」「PとJK」の劇伴などがある。近年ではNHK Eテレの子供向け番組「にゃんぼー!」の音楽や、TBS系「世界遺産」のテーマ曲も担当している。2022年2月にデビュー15周年を記念したベストアルバム「ohashiTrio best Too」を発表し、2023年1月には新曲4曲を含むコラボベストアルバム「ohashiTrio collaboration best -off White-」をリリース。同年6月から7月にかけてホールツアーを開催する。

衣装提供:ROGGYKEI(0771-88-0022)
ヘアメイク:本條愛奈

2023年1月12日更新