大原ゆい子「星に名前をつけるとき」 PR

大原ゆい子|星に名前を付けることと曲を書くことは似ている

大原ゆい子初のアルバム「星に名前をつけるとき」が9月25日にリリースされた。

この作品にはメジャーデビューシングル「Magic Parade」から最新シングル「ゼロセンチメートル」までのシングル曲を含む既発曲8曲に、リード曲「夢の途中で」など初の音源化となる8曲を加えた全16曲を収録。10月にデビュー5年目を迎える大原の軌跡と現在を感じられる1stアルバムとなっている。

音楽ナタリーが大原にインタビューを行うのは約4年ぶり。2015年のデビューから今に至るまでの活動の変化や、星が大好きだという彼女がアルバムタイトルに込めた思い、この作品を携えて実施する自身初のツアー「星集め」への意気込みを語ってもらった。

取材・文 / 須藤輝 撮影 / 塚原孝顕

星に名前を付けることは、曲を書くことに似ている

──大原さんは2015年10月にアニメ映画「リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード」の主題歌「Magic Parade」でメジャーデビューされて以降、さまざまなアニメ作品の主題歌を歌われてきました。その過程で、シンガーソングライターとして曲作りにおいて変わったことなどはありますか?

デビュー前に1人で活動していたときは当然、自由に、自分の作りたいように作っていたんです。でも、やっぱりアニメの主題歌はその作品のテーマに沿って曲を書いていくので、以前とは全然違う方向性で曲を書くようになりましたね。

──その方向転換は大変でした?

いや、楽しかったし、今も楽しんでますね。与えられたテーマから自分がどんな世界を派生させられるのか、逆にテーマというある種の縛りがある中で自分がどんな世界を表現できるのか。そこにチャレンジするのにやりがいを感じるし、作家として燃えるものもあります。

──アルバムを通して聴いたときに、声色の使い分けが巧みだなと思ったんです。例えて言うなら声優アーティストのようで。

ありがとうございます。無理やり声色を変えているわけではないんですけど、例えば「ゼロセンチメートル」(2019年7月発売の8thシングル表題曲。テレビアニメ「からかい上手の高木さん2」オープニングテーマ)だったらかわいらしく、「ハイステッパー」(2018年8月発売の6thシングル表題曲。テレビアニメ「はねバド!」エンディングテーマ)だったらカッコよくみたいな。やっぱり作品にふさわしい歌声というのを意識していますね。

──それもデビュー以降の、ボーカル面における変化ですか?

大原ゆい子

というより、デビュー前はあんまり明るい曲を歌うことがなくて。このアルバムに「205号室」という、歌とピアノだけの曲が入っているんですけど、そういうわりとしんみりしたテイストの曲をずっと歌っていたんです。なので、デビューしてから「ああ、自分はこういう歌い方もできるんだな」とか「このほうが歌いやすいな」というのを発見したというか。タイアップのたびにいろんな色を付けてもらった感じです。

──そのアルバムタイトルは「星に名前をつけるとき」。大原さんは、例えば2ndシングルの表題曲が「星を辿れば」(2017年2月発売。テレビアニメ「リトルウィッチアカデミア」エンディングテーマ)だったり、曲名や歌詞に「星」ないしは天体にまつわるワードをしばしば使われていますから……。

はい、もともと星が大好きで。例えば新しい惑星が発見されたとき、発見した人にはその惑星の名前を提案する権利が与えられるじゃないですか。そうやって誰かが星に名前を付けることと、自分が曲を書くことは似てるなって。

──どういうことですか?

一度名前を付けられたら、その星は地球上ではずっとその名前で呼ばれるわけですよね。だから、名前を付ける人は相応の責任感を抱くんじゃないかと思うんですよ。例えば「大原星」という名前を付けて、しばらくして「なんでこんな名前にしちゃったんだろう?」と後悔するかもしれない。私も曲を書くときは、あとで「なんでこんな曲書いちゃったんだろう?」とは思いたくないです。どこに出しても恥ずかしくない曲を書きたいし、自分の曲を嫌いになることは絶対に許せないんです。つまり、星に名前を付けるときと同じくらい、私も1曲1曲に対して気持ちを込めているという思いから、このタイトルにさせてもらいました。

──ジャケットも素敵ですよね。収録曲をモチーフにした星座が描かれていて。

そうなんです。デザイナーはquiaさんというデザイン会社の方なんですけど、私はデビューする前からquiaさんが手がけたCDジャケットが大好きだったので、自分のアルバムもデザインしてもらいたいと思っていたんです。そしたら、盤も含めて宝物のようにかわいく作ってくださって。最近は音源をダウンロードされる方も多いんですけど、CDを買っていただいた方もきっと満足してもらえると思っています。

思い切り自分をさらけ出した「夢の途中で」

──ここからはアルバムの新録曲について伺います。まずリード曲の「夢の途中で」はプレーンなギターポップで、大原さんの力強いボーカルが印象的ですね。

「夢の途中で」は、メジャーデビューが懸かったオーディションのために書き下ろした曲なんですよ。なので、そのオーディションに向けての意気込みはもちろん、オーディションに受かれば映画「リトルウィッチアカデミア」の曲を歌うことは決まっていたので、作品に対する自分の気持ちだったり、そういうものがギュッと込められていますね。そんな曲だから、レコーディングではその思いがたぎって自然と歌声も力強くなっていったし、トラックダウン後の音源を聴き返して「あ、やっぱり思いがすごく込もっているな」というのを実感しました。

──その歌詞はものすごく素直に、飾らない言葉でご自身のことを歌ってらっしゃいますよね。あるいは大原さんの人生観ないしは哲学と言ってもいいと思うんです。

はい、そうですね。それまでいろんなオーディションを受け続けていたものの結果が出なくて、音楽を続けるべきかどうか悩んでいたんですよね。でも、自分の気持ちを伝えられるのはやっぱり音楽しかないと思ったので。例えばデビュー後に書いたアニメの主題歌も、自分で書いている以上、なんらかの形で自分らしさは出ていると思うんですけど、やっぱりストレートに自分らしさを表現しづらくもあるんです。それと比べると、「夢の途中で」は思い切り自分をさらけ出した感じですね。

──歌詞もオーディションのときから変えていないのでしょうか?

そのままですね。映画「リトルウィッチアカデミア」主題歌のオーディションがあると聞いて、課題曲と自由曲があったので、自由曲では自分の曲を歌おうと決めたときにバッと作ったんです。私はけっこう長い時間をかけて曲を作ることが多いんですけど、「夢の途中で」はテーマも「これ!」とすぐ決まったし、集中して一気に書いたのは覚えています。

──ボーカルに関しても、素の大原さんの歌声?

そうですね。さっきも言ったようにアニメの主題歌の場合は作品のカラーを意識するんですけど、「夢の途中で」は何かに意識を囚われることなく没頭して歌っていました。

──ちなみに「夢の途中で」をリード曲にした理由は?

やっぱり思い入れも強いし、ずっと音源化したかった曲ではあったんですけど、なかなか出しどころがなくて。デビュー当初からライブでは歌っていたので、「ずいぶん引っ張るな」と感じているファンの方もいると思うんです。でもようやくアルバムを出せることになって、しかも1stということで「ここしかない!」という気持ちでリード曲にしました。

寝ている家族を起こさないように歌った

──曲順に沿うと、次の新録曲は5曲目の「星が眠るまで踊ろうよ」です。この曲、個人的にものすごく好みです。

ありがとうございます。私もすごい気に入ってます。

──「星が眠るまで」とは、つまり夜が明けるまでということですか?

そうかもしれないです。

──で、「踊ろうよ」といってもEDMのフェスとかではなく、ダンスホールやディスコのチークタイムミュージックのような。

大原ゆい子

うんうん、「ウエーイ!」というノリではまったくないですね。レーベルが日比谷にある関係で、私は銀座に来ることも多いんですけど、まさに銀座のマダムが集うようなダンスホールをイメージして。いや、実際に行ったことはないので文字通りイメージなんですけど(笑)。

──この曲は新規で書き下ろした曲ですか?

はい。アルバムにちょっとシティポップっぽい雰囲気の曲が欲しくて。あと私は松任谷由実さんが好きなので、どうしてもそういうのがやりたかったんです。私の曲はサビで声が高くなりがちなんですけど、そこまで上がりきらないような、ややステイ気味なメロディというか、1曲を通してテンションがあまり変わらない曲を作りたくて。それを松本良善さんがすごくキャッチーに編曲してくださいました。

──ウィスパー気味の気だるげなボーカルも、ムーディなトラックに非常にマッチしています。

この曲の仮歌を歌った場所が実家で、しかも夜中だったんですよ。だから寝ている家族を起こさないように、囁くように歌っていて。それが自分の中でしっくりきたので、レコーディングでもそのイメージを崩さないように歌いました。

──外的な要因でそうなったというか、ある意味ウィスパーボイスを強いられたんですね。

ホントにそう。「あ、静かにしなきゃ」と思って声を張らなかったので(笑)。