音楽ナタリー Power Push - オフコース「OFF COURSE BEST "ever"」特集
若旦那が語る、憧れのオフコースと小田和正
オフコースのデビュー45周年を記念して、ベストアルバム「OFF COURSE BEST "ever"」がリリースされる。ファンから「一番好きな曲」や「一番心に残る曲」をエピソードとともに募り、その上位18曲を収録した、まさにファンが選ぶベストアルバムとなった本作。「眠れぬ夜」「さよなら」「YES-YES-YES」などの代表曲が収録され、オフコースの入門盤としても最適な仕上がりとなっている。
音楽ナタリーでは、小田和正と交流があり、オフコースのファンであることを公言している若旦那にインタビューを実施。オフコースの楽曲の魅力、小田の人となりなどについて語ってもらった。また特集の後半ではオフコースおよび小田ゆかりのアーティストから寄せられたコメントも掲載する。
取材・文 / 森朋之 インタビュー撮影 / 横山マサト
チャラさが1つもない
──若旦那さんにオフコースの魅力について伺いたいと思います。最初の入り口は、やはり小田和正さんのソロの楽曲ですか?
そうですね、オフコース世代ではないので。たぶん小学校6年生か中学校1年生くらいのときだったと思うんですけど、「ラブ・ストーリーは突然に」で知るっていうパターンです。まず「東京ラブストーリー」(鈴木保奈美と織田裕二が主演を務めた1991年放送の月9ドラマ)にハマって、その主題歌がドーンと入ってきて。それが小田さんの曲だっていうのはわかってなかったけど、「チャラい歌ではないな」というのは感じてたんですよね。オフコースのときからずっとそうですけど、チャラさが1つもないじゃないですか、小田さんの曲って。
──オフコースの楽曲を聴くようになったのは、何かきっかけがあったんですか?
ずっと聴いていたんですけど、本格的にさかのぼって聴くようになったのはほかのアーティストのプロデュースをやるようになってからなんですよね。作詞作曲、トラックメークからボーカルディレクションまでをパッケージとして全部やるという仕事をやっているんですけど、声が高くて、しっかり声を張れる男性アーティストのボーカルを録るときは、エンジニアさんに小田さんの声の高い音と同じ音域がよく出るようにEQで設定してもらうんです。要は小田さんみたいなハイの倍音を演出するっていうことなんですけど、それが自分のプロデュースワークの1つの技になっていて。
──興味深い話ですね。若旦那さんにとって、小田さんの声の魅力とは?
まず、絶対的に引きがありますよね。「気持ちいい」なのか「好き」なのか、どういう感情が生まれてくるかは人によって違うと思うんですけど、あの声に対してはみんなが好感を持っていて。ハイトーンなのに柔らかいというか、そこはかなり研究しましたね。
──なるほど。今回のベストアルバム「OFF COURSE BEST "ever"」を聴いて、どんな印象を持ちました?
オフコースの曲も“小田さんの曲”みたいな感じで捉えていたところがあるんですが、今回改めて聴いてみて、まず単純に「オフコース時代の小田さんの曲って、めちゃくちゃいいんだな」って思いましたね。すごく切ないじゃないですか。男の人がフラれたり、恋がうまくいかない歌が多くて……そういう音楽が多い時代だったんですかね? それとも小田さんがフラれまくってたのかな。
──そんなことはないと思いますが(笑)、切ない歌詞と小田さんの20代の頃の声の相性は抜群ですよね。
そうですね。俺はもともと80'sのサウンドが大好きなんですけど、「これ、ニューウェイブじゃない?」と思うようなアレンジもあってめちゃくちゃアガりましたね。個人的にも最近は「フォークとニューウェイブを合わせたような音楽をやりたい」と思ってたんですけど、オフコースの曲を聴き直してみて「まさにコレじゃん!」って。曲の世界観というか、歌詞とメロディはフォークだと思うんですよ。でもサウンドはかなりアーバンで。そのバランスがいいんですよね。
ベストのためにリアレンジしたのかと思った
──ベストアルバムの曲で特に好きな曲は?
「眠れぬ夜」が一番好きです。まさに小田さん節だなって思うし、まず、歌詞がいいですよね。1番と2番で愛する人を忘れようとする主人公の気持ちをうまく対比させて、最後には愛の大事さに気付くっていう。こういう歌を書きたいなって思います、自分も。アレンジもすごいですよ。イントロのシンセの音がまさにニューウェイブなんですよね。今はなかなか出せない音だし、みんなが目指してる音でもあると思うんですよ、これは。こういうアナログシンセの音色って、今の機材でやろうと思っても難しくて。当時のアナログシンセを買えればいんだけど、ビンテージとなると値段もめちゃくちゃ高いですからね。あと、この曲のリズムって四つ打ちなんです。一瞬、このベストのためにリアレンジしたのかと思いましたよ。
──それくらい古びていないということですよね。
そうですよね。1曲目の「水曜日の午後」もいいですね。歌い出しから、ずっとコーラスを重ねてあるんですよ。そのコーラスワークがまたよくて。日曜日の教会みたいな雰囲気もあるし、ちょっとロックオペラ的なところもあって。個人的には「Queenに似てるな」って思いましたね。
──「水曜日の午後」は1973年のリリースなので、ちょうどQueenがデビューした年ですね。
「生まれ来る子供たちのために」もいいですね。以前、ユニットを組んでカバーさせてもらったこともあるし(2007年に開催されたエイズの予防啓発を呼びかけるイベント「RED RIBBON LIVE2007」のチャリティーソング「RED RIBBON Spiritual Song ~生まれ来る子供たちのために~」)、思い入れもあるので。そのときのメンバーもすごく豪華だったんですよ。GLAYのTERUくん、絢香、あとはケツメイシのRYOとか。オリジナルのバージョンも素晴らしいですね。透明感がめちゃくちゃあって、コーラスもきれいで。あと「一億の夜を越えて」にも驚きました。これは鈴木康博さんが作曲を手がけられていますけど、シンセとギターの感じが完全に80'sのアメリカンロックなんですよ。Van Halenが出てきそうな力強さがあるというか。
──ライブでの盛り上がり曲ですよね。オフコースは武道館10DAYS公演を成功させたり、ライブバンドとしても一流だったので。
俺も前から「日比谷野外音楽堂で10日間ライブがやりたい」って言ってるんですけど、スタッフにずっと却下されてるんです(笑)。考えてみたらオフコースはずっと前に武道館で10日間連続ライブを実現させてるんですよね。
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- ベストアルバム「OFF COURSE BEST "ever"」 / 2015年12月16日発売 / 2484円 / UPCY-7071 / UNIVERSAL MUSIC
- ベストアルバム「OFF COURSE BEST "ever"」
収録曲
- 水曜日の午後
- でももう花はいらない
- 眠れぬ夜
- 雨の降る日に
- 愛の唄
- 秋の気配
- 夏の終り
- 愛を止めないで
- 思いのままに
- 生まれ来る子供たちのために
- さよなら
- Yes-No
- 一億の夜を越えて
- I LOVE YOU
- 愛の中へ
- 言葉にできない
- YES-YES-YES
- 君住む街へ
- DVD「“若い広場”オフコースの世界1981 Aug.16~Oct.30」 / 2015年12月16日発売 / 4104円 / TOBH-7038 / UNIVERSAL MUSIC
- DVD「“若い広場”オフコースの世界1981 Aug.16~Oct.30」
※2002年にリリースされた同名タイトルの再発です。
オフコース
小田和正(Vo, Key G)、鈴木康博(Vo, G)ら4名で1964年に結成されたグループ。1983年に鈴木が脱退するなど、幾度かのメンバーチェンジを経て1989年に解散した。解散時のメンバーは小田、清水仁(B, Cho, Syn)、大間ジロー(Dr)、松尾一彦(G, Cho, Key)の4名。「さよなら」「愛を止めないで」「言葉にできない」など数々の名曲を残した。2015年12月には、デビュー45周年を記念したベストアルバム「OFF COURSE BEST "ever"」とドキュメンタリーDVD「“若い広場”オフコースの世界1981 Aug.16~Oct.30」の再発盤がリリースされる。
若旦那(ワカダンナ)
1976年生まれ、東京出身。加藤ミリヤやJAMOSAの楽曲のプロデュースを手がけ、自身もこれらの楽曲に客演として参加。2010年3月にはハイチ震災のチャリティソング「いのち~LOVE FOR HAITI~」を配信リリースし、2011年11月にはエイベックスから1stソロアルバム「あなたの笑顔は世界で一番美しい」を発売した。2014年には主催イベント「バカヤロ」をスタートさせ、バンドセットのライブも積極的に展開する。そして11月には徳間ジャパンの移籍第1弾作品となる3rdアルバム「WAKADANNA 3 ~絶対に諦めないよ、オレは!!~」を、2015年8月には4thソロアルバム「WAKADANNA 4 ~男はつらいぜ、泣いてたまるか~」をリリース。11月に最新シングル「負けるな小さきものよ」を発売した。