ODDLORE デビュー記念特集|ももクロやヒプマイを擁するEVIL LINE RECORDS初のボーイズグループに宮本純乃介氏が抱く展望

特撮、ももいろクローバーZ、音楽原作キャラクターラッププロジェクト「ヒプノシスマイク –Division Rap Battle-」などを擁するキングレコードのレーベル・EVIL LINE RECORDSから、レーベル初のボーイズグループ・ODDLORE(オッドロア)がデビュー。2月18日に1stシングル「Hazed Reality」、25日に2ndシングル「Lucid Dream」を配信リリースした。

“コンプレックスを抱えた6人組”という特異な肩書きとともに、群雄割拠のボーイズグループシーンに名乗りを上げたODDLORE。それぞれに悩みを抱えたメンバーが自らに向き合い、ありのままの自分でいられる場所を探していく姿が、今後のグループ活動を通じて描かれていくという。

メンバーのプロフィールやグループの全体像など、まだまだ謎に満ちているこのグループが生み出された理由とは? 音楽ナタリーではEVIL LINE RECORDSのレーベルヘッドでグループの総合プロデューサーである宮本純乃介氏にインタビュー。レーベル初のボーイズグループが生まれた経緯、そしてODDLOREの展望について聞いた。

取材・文 / 三橋あずみ

闇鍋レーベル・EVIL LINE RECORDS

──まず、ODDLOREが所属しているEVIL LINE RECORDSとはどのようなレーベルか、教えていただけますでしょうか。

EVIL LINE RECORDSは2014年にスタートした、キングレコード内のレーベルです。スターチャイルドというアニメに特化したレーベルから分裂する形で立ち上げたんですが、経緯としては、スターチャイルド内に所属していたグループがアニメ以外の仕事を多く抱え始めていたので、そこをちゃんと分類しようと。特撮やももいろクローバーZといったバンドやアイドルを新しいレーベルに動かしつつ、メディアミックスに特化したアーティストやコンテンツを自分たちでプロデュースすることを目標にしていました。

EVIL LINE RECORDSに所属する(左上から時計回りに)ももいろクローバーZ、特撮、「ヒプノシスマイク」。

EVIL LINE RECORDSに所属する(左上から時計回りに)ももいろクローバーZ、特撮、「ヒプノシスマイク」。

──そうなんですね。

これは自分含むディレクター陣の趣向の問題でもあるんですけど、エッジの効いたアーティストやコンテンツを多く内包していると思います。5周年のときに初めてレーベルフェスを開催したのですが、そのときにオーケン(大槻ケンヂ / 特撮)がEVIL LINE RECORDSのことを「闇鍋レーベル」と……(笑)。言い得て妙といいますか、そういうことなのかと納得はしました。なので、一貫性がないレーベルなんですよね。

──あえて所属アーティストをひとくくりにするなら、ひと癖あるところが特徴だと。

そうですね。カウンターカルチャーというか、メインストリームから外れたところのカルチャーを育てて、太くしていくようなイメージは立ち上げ当時からありました。

──レーベルとしての特色や、各アーティストが楽曲制作を行ううえでのポリシーなどはあるのでしょうか?

なるべく自分たちの手で原盤を制作するということは、1つポリシーとしてあります。スターチャイルドから派生したことも影響しているんだと思いますが、当時のアニソン制作の現場ではそのときどきのお題に対してディレクターやプロデューサーが楽曲を設計して、曲にふさわしい作詞者、作曲者、アレンジャーをアサインして、すべての工程を自分でディレクションして理想に近付けていく……ということを常々やっていたんです。なのでコンセプトを打ち立てて、その中で原盤制作を行う文化はEVIL LINEにも色濃く残っていると思います。

──立ち上げ当時からメディアミックスに特化したコンテンツの展開を目論んでいたとのことですが、その点では「ヒプノシスマイク」の存在が代表的かと思います。

ほかにない切り口ではあったので、スピードが命だと思って着想を得てから約半年くらいのスピード感でリリースしました。当初は見向きもされなくて、CDも初週はわずかしか売れなかった。ただ、その後想定以上に火が点くのが早かったので、需要に対する供給が追いつかず、ディレクター陣を結集して必死に制作していました。

凸凹していてリアルな肌触りのあるグループを

立ち行かないことばかりの人生に鬱屈とした想いが募っていく。
世界中のどこにも、本当の自分を理解してくれている人はいない。
終わりのない悪い夢のような、この日常から抜け出せたのなら、
どんなに素晴らしい景色が見られるのだろうか。
それぞれの孤独を抱いて6人は目を瞑った。

(ODDLORE 始まりのストーリー)

──そんなEVIL LINE RECORDSの初のボーイズグループとして、2月18日にODDLOREがデビューしました。グループ誕生に至るまでの経緯や宮本さんの思惑は、どういったものだったのでしょうか。

ボーイズグループは、ずいぶん前から手がけてみたいと思っていたんです。まだ隙間があるというか……着想した当時、チャートインするようなグループは大手事務所が抱えるグループしかいない印象があったので、そこにカウンターを放てるようなグループをEVIL LINE RECORDSだから生み出せるのではないかなと。いろいろあって仕込みにけっこう時間がかかっちゃったので、その間にいろいろなグループが出てきていてすでに状況は変わっているんですけど、当時のボーイズグループ市場はももクロを担当し始めたときの“AKB48がいて、ハロプロがいて……”という状況に近い気がしていました。大きなグループが太陽だとすると、その光を浴びながら少し違う何かを表現する人たちがいてもいいのかな、と。

──構想はいつ頃から練っていたのでしょうか?

今回のようなコンセプトでやろうと思いついたのが2年半くらい前だったと思います。

KOYA

KOYA

KOYA

KOYA

──じっくりと準備を進めてこられたんですね。

そうですね。統制の取れたものではなく、凸凹していてリアルな肌触りのあるグループを作りたいなと思っていたので「どういうメンバー編成にしようか」というところから構想しました。それを実現するにはオーディションでメンバーを集める手法は違うのかなと。必要なメンバーのキャラ設定をそれぞれ起こしていき、まずはその設定書をもとに、スカウトマンたちに全国を走り回ってもらいました。設定書は外見と内面について項目が分かれていて、外見は身長が何cm以上とか。「この通りにはいかないだろう」とは思いつつ、アベンジャーズのように外見的にも内面的にも凸凹したグループにしたかったので、思い切った設定を起こしました。というのもあって、現メンバーの6人が決まるまでにけっこう時間がかかって……自分はなんだかんだ100人くらいと面接しているんですけど、スカウトマンはその10倍くらいの人数に接触しているはずです。

──スカウトマンの皆さんは、設定に合ったメンバーを探すためにどういった場所にアプローチしていったんですか?

最初は外見が設定書にフィットするか審査する作業を、SNSなどを通じてやっていました。個人アカウントなどを通じて顔出ししている人の中から判断して、パッと見の身体的特徴がクリアできた段階で1回会ってみる。本人が表現活動をしたいかどうか、芸能活動に興味があるかどうかということは大前提になるんですけど、スカウトマンの皆さんの努力の結果、会って話すと「やりたいです」と言ってくれる子がそれなりに多かった印象です。ただ、それだけではすべてを見極めることはできないので、候補メンバーとは何回か会ってみて……それぞれのポテンシャルや真意をつかむのには、時間がかかりました。

RION

RION

RION

RION

──すでに設定されているキャラクターに合う人材をスカウトで探す、という方法はすごく珍しいですよね。キャラ設定を「コンプレックスと向き合う6人」と据えた理由についても教えてください。

2次元IPの制作と通じるやり方なのですが、伝えたいメッセージから逆算する形でキャラクターを設計していきました。歌詞に内包されるメッセージにはそれなりのバリエーションが必要だったので、「この人はこういう理想を持っている」とか「この人はこういうことで悩んでいる」とか、一度メンバー全員分の性格を設定してみました。悩みの質や内容って人それぞれで、複合的ではあるんですけど、うまくキャラクターに分けて設定してバリエーションを付けることでキャッチーに捉えられて、多くの人が共感してくれたらいいなと。

──「ヒプノシスマイク」での経験も生かされているんですね。

そうかもしれないです。ただ、ODDLOREはリアルな人間に対する設定なので、ほぼその通りには行きませんでした。実際に対面してみてあまりにもイメージと乖離していたから成立しなかったケースもあったけど、逆に本人のキャラクターが面白かったから、設定を無視してグループに入ってもらったというケースもあります。

RYUICHIRO

RYUICHIRO

RYUICHIRO

RYUICHIRO

──コンプレックスや悩みって、普通であれば表に立つ人が見せない、見せたくない部分だと思うんです。そこをあえて打ち出して、グループを作り上げようと思った理由は?

共感性を上げたかったという思いはありますね。アイドルって憧れの対象で、キラキラした世界の中の完成された存在というイメージがあるとは思うんですけど、そういうものが万遍なく今の若い子には響くのかな?と少し疑問はありました。パーソナルで深い悩みの部分で共感するというか、「自分と同じ悩みを持っているこの人がこんなにがんばっているんだから、自分もがんばろう」と思ってもらえるようなアイコンがアイドルとして存在していてもいい気がしています。