ODDLORE「ONE BY ONE」特集|一歩ずつ歩んで自分らしい未来へ “心の隙間”寄せ合う6人の1stアルバム

ODDLOREが8月16日に1stアルバム「ONE BY ONE」をリリースした。

ODDLOREは、それぞれに異なるコンプレックスを抱えた6人のメンバーによる、EVIL LINE RECORDS初のボーイズグループ。音楽活動を通して、コンプレックスに代表される“心の隙間”を自分らしさとして受け入れ、リスナーに勇気を与えることを目標とし、2022年2月にデビューした。

デビューから1年半の時を経てリリースされる1stアルバムには、表題曲「ONE BY ONE」など全11曲が収められる。アルバムのリリースを記念して、音楽ナタリーではメンバーにインタビュー。それぞれのパーソナリティについて聞きながら、1年半の活動、そして初のアルバムの収録曲に込めた思いを語ってもらった。特集の最後には、収録曲「Embers」「Coming Dawn」の作詞をそれぞれ担当した弥之助(AFRO PARKER)、Pecori(ODD Foot Works)のコメントも掲載している。

取材・文 / 小松香里撮影 / 藤記美帆

「行くしかない」と思いました

──皆さんはODDLOREの総合プロデューサーである宮本純乃介氏が設定した「コンプレックスを抱えた6人組」というコンセプトに基づきスカウトされたそうですが、このグループのメンバーになろうと思った決め手は何だったんでしょう?

RION 僕は「やってみたい」という気持ちが一番でした。小学6年生くらいの頃、ジャスティン・ビーバーやOne Directionといったポップな男性アーティストが流行ったときに音楽にハマって、以降歌うことや踊ることに対しての憧れがずっとあったんです。その憧れを具現化するタイミングがないまま大学に行ったんですが、就職活動をしている最中に声をかけていただいて。僕はあまり神様を信じるタイプではないんですが、そのタイミングでチャンスが降ってきたことに対して「最後のチャンスだぞ」と言われている気がして、思い切ってこの世界に飛び込みました。

RION

RION

YUI 僕は小さい頃からジャニーズやK-POPのアイドルを見て「カッコいいな」と思っていたんですが、周りにそういう活動をしている人がいなかったし、自分がやるという発想はなかったんです。スカウトしてもらったタイミングがちょうど大学を卒業する時期で、就職することは決まっていたんですが、多数の人が歩む道から外れることに対してすごく魅力を感じて「やってみよう」と思いました。それと、スカウトされたことで舞い上がっていたところもあると思います(笑)。

JOSH 僕の場合はいろいろな要因が重なっていて。6歳ぐらいのときに芸能界にスカウトされたことがあったんですが、当時は親の意向もあって断ったんです。その後、年を重ねていく中で「モデルさんですか?」とか「芸能人ですか?」と言われる経験があって、芸能界に興味が湧いていきました。あと、僕は名前がカタカナで少し珍しいので、学校でみんなに存在を知られてはいたんですが、僕自身が輝いてるわけではなく、どちらかというと陰キャで地味な生活を送っていたので「みんなに注目してもらえるきらびやかな存在になってみたいな」という気持ちが生まれたんです。そんな思いがある中で運よくスカウトされる機会に恵まれまして。いろんなことが重なって「今ここで踏み込まなかったら、僕は芸能を知らない人生を送ることになる」と感じ、チャレンジしてみようと。

KOYA 僕はもともと芸能の仕事をしていたんですが、それを1回あきらめかけたんです。そのときにODDLOREのお話をいただいて、年齢的にもラストチャンスだなと思いました。親にも相談したんですけど、僕の母親は19歳のときに僕を産んだので、「私は若くして親になったからあまり外の世界を見れなかった。あなたは好きなことをしなさい」と言ってくれたことが決め手になりました。

KOYA

KOYA

RYUICHIRO 僕は身長が158cmなんですが、これまでは身長をネガティブに受け取られることしかない人生でした。でも、スカウトされたときに「コンプレックスを持った6人を集めた個性あふれるボーイズグループになる」とうかがって、「低身長だからこそ伝えられるものがある」と初めて感じたんです。だから「このグループに入るしかない」と思いました。

RIKITO 僕は学生時代にサッカー選手を目指していたんですが、その夢を叶えることはできなくて。関東の大学に通っていたので芸能人の方を見るような機会もあって、次第に「自分がきらびやかな芸能人になることで応援してくれた人に恩返しができるんじゃないか」と思うようになったんです。最初はモデルになりたくて「この事務所に入って勝負しよう」と決めた事務所があったんですが、結局そこに入れなくて。「どうしよう」と思ったタイミングでODDLOREのプロジェクトに声をかけてもらいました。歌とダンスには全然興味がなかったのですが、父親がマイケル・ジャクソンのバックダンサーとして活躍していた経歴があるなどダンスがすごくうまいので、縁を感じて「やるしかない」と思いました。

RIKITO

RIKITO

メンバーといると居心地がよくて

──歌とダンスが未経験だった方も多いようですが、デビュー当初と比べて一番成長したメンバーというとどなたでしょう?

KOYA うちの“長男”のRYUICHIROは、最初「歌が苦手だ」と自分でも言ってたんですが、最近はボイトレの先生からよく褒められていますね。RYUの歌を最初に聴いた日のことを昨日のことのように覚えているんですが、すごく怖い顔をして歌っていたんですよ(笑)。今はふざけて歌うこともあるし、楽しそうです。自分に対してもそう思うんですが、「人ってやり続けてたらできるようになるんだな」って。

RYUICHIRO 僕、今年28歳になるんですが、中学生以降、カラオケに行ったことがなかったんですよ。それぐらい歌に対する苦手意識がありました。でも、ODDLOREは最初からメジャーデビューすることが決まっていたので、短期間で歌をプロのレベルに持っていかなきゃいけなくて。不安はすごくありましたが、歌えても歌えなくても世に出てしまうので「やるしかない」と吹っ切れたところはありました。あと、下手でも伝わるものがあるんだということを実感して、その時々の自分の最高の歌を届けようとずっと意識しています。実際に歌がうまくなったかというと微妙なんですが(笑)、最初と比べると、歌うことがすごく楽しくなってきました。

RYUICHIRO

RYUICHIRO

──RYUICHIROさんは、歌は苦手だけど低身長というコンプレックスを持ち味に変えられる場所ができたことで変化したということだと思うんですが、同じような変化はほかの方にもあると思うんですよね。例えばJOSHさんは対人コミュニケーションが不得意なのがコンプレックスだということですが、そこはODDLOREの活動を通して解消されましたか?

JOSH そうですね。グループに入ったときは、人との関わり方が下手でメンバーによくツッコまれていたんですが、メンバーに社会の常識を教えてもらう中で、一般人に成長している段階といいますか。

RYUICHIRO JOSHは人と接する機会がなさすぎたんだよね。

JOSH なかったね。

JOSH

JOSH

KOYA それと「知りたい」という気持ちが強すぎて、わからないことは後回しにせずすぐに聞いたりするから、最初のうちはレッスン中とかに「それ聞くの、今じゃないでしょう」みたいなタイミングで質問して“空気読めないヤツ”になってました。それも最近変わってきたよね。

──自分自身が変わっていくことで楽になったところはあるんですか?

JOSH 僕はメンバー以外の人と基本的に関わらないんですが(笑)、メンバーといると居心地がよくて、以前感じていた「こういうときはどうしたらいいんだろう?」というモヤモヤが減ってきました。この6人でいるとまったく気を張らなくていいし、お互いのことが理解できているので過ごしやすいです。

ODDLORE

ODDLORE

聴き手によって解釈の余白がある曲に

──YUIさんは男性らしさを求められることに対する違和感があったそうですが、ボーイズグループで活動していると、中性的な面は魅力として捉えられることもありますよね。

YUI そうですね。僕は地方出身なんですが、地元には亭主関白なタイプの男性が多くて、性格的にはそれを引きずっている部分はあります。見た目がまったく男らしくないし、力がなさすぎて男らしい役割を果たすことがないままだったんですが、上京して解放された感覚があったんです。実家に住んでいた頃は、お風呂上がりの僕を見て家族に「体型があまり男らしくない」とか「最近あなたみたいに顔の大きさを気にしてる男子が増えてきたよね」と言われたりすることがけっこうありました。でも、東京では今までコンプレックスに感じていた中性的なルックスを長所として捉えてくれる人がいるので、「場所が変わるだけでこんなに反応が変わるんだ」と思いましたね。

YUI

YUI

──ODDLOREの歌詞には、今YUIさんが言ったようなことが表現されています。そういう曲を自身で歌うことに対してどんな感覚を覚えますか?

YUI 感謝の気持ちになります。最初「自分が表現するものは自分主導で作りたい。ほかの人が作って自分のイメージと違ったら嫌だな」という気持ちが少しあったんです。ODDLOREはメンバーそれぞれをメインにした曲があるんですが「僕がメインの曲は、ほかのODDLOREの曲と違った強いメッセージや具体性がある曲じゃないほうがいいな」と思って。その気持ちをプロデューサーに伝えていないのに、僕の曲「ORTUS」は音も歌詞も抽象的で、聴き手によって解釈の余白がある曲になっていたので驚きましたし、ありがたかったですね。

──「ORTUS」はチル系のヒップホップからドラムンベースになる展開が面白くて、全体的に浮遊感がありますよね。

YUI そうですね。静かな浮遊感があって、強い主張がなく広がりのある感じがすごく好みです。聴く人のテンションを問わないところがいいなと思います。