時代の変化とローカルへの眼差し
──多くのロックミュージシャンが社会的な意識を持って動き出したのは震災以降で、最初は単純に被災地支援が目的でした。それが今、なぜそれぞれの街や暮らし、場所というテーマに向かっているんだと思いますか。
後藤 やっぱり震災をきっかけに人に会ったからだと思う。先週僕は岩手の奥州市に行ってきたんですよ。最初に大船渡に炊き出しに行ったとき、水沢江刺から現地まで送り届けてくれた方がライブハウスを作ったから、そこに弾き語りをしに行って。実際に行くと身をもって遠さを実感するし、「冬ってバンドが来ないんですよ」という話を聞いて、冬に山越えて大船渡に行く大変さを理解した。震災のときに目の当たりにしてきたことが多かったから、東京とは違うレイヤーの視点が生まれた気がしますね。あとは加藤くんや岳久の存在が1つの投げかけになってるところもある。東京に出てこない、なんで東京じゃなきゃいけないのか?っていう姿勢。
──加藤さんは、そこに自分なりの答えがあるんでしょうか。
加藤 僕はバンドを始めてすぐのタイミングで震災があって。NOT WONKがまだELLEGARDENのコピーバンドだった頃。
後藤 そんな歴史があるんだ(笑)。
加藤 そうなんです(笑)。高校1年生だったけど、通ってた高校の卒業ライブでも「震災があったからカンパして被災地に送ろう」という流れがすでにあったんですね。ちょうどみんなTwitter(現X)を始めた時期だったから、後藤さんや横山健さん、TOSHI-LOWさんたちの動きもなんとなく見えてたし。あと、当時地元に、ローカルでDIYスタイルのパンクに影響受けた先輩がたくさんいて、みんな「俺たちは働きながらここでやるんだ」と言ってたんです。だから、“東京に出ない”という選択肢に疑問を抱くことがむしろなかったかもしれない。大きなものに寄っていく感覚は最初からなくて、それより地元で音楽を続けられることが一番大事だと思ってた。
後藤 そうなんだ。時代によってローカルへの眼差しがどう変わっていったのか、確かに聞かれたら考えちゃうテーマですよね。ただ、世の中が便利になればなるほど、あっという間に自分がどこにいるのかわからなくなる。もうそういう時代になっちゃったから。「どこに立っているのか」について、特に音楽をやってる人たちは自覚的になっていった気もする。同時多発的な動きとして。
──ミュージシャンは全国を飛び回る仕事でもあるけど、それでも立っている場所がないと不安になりますか。
後藤 漠然とネットの中にコミュニティがあるだけじゃ不安定で。でも、そのコミュニティが土地とか場所と結び付いたときって、もっと強度が生まれるんですよね。ちゃんと場所に行って人に会ってハイタッチしたり、場合によってはハグしたり。その強さって、言葉と感覚にちゃんとボディが付いてきた喜びなんだと思う。思い出したけど、3.11のときに俺、けっこうな額を赤十字に振り込んだけど……まったく実感がなかったの。これはいいことなのか悪いことなのか、誰が喜んでいるのかもわかんなかった。
加藤 ああ、そうなんですね。
後藤 ただ俺の通帳からお金が移動しただけ。でもさ、みんなでヒートテックを集めて遠くの知らない人たちに送ったら、お礼の手紙が届いたりする。そのあと実際にその場所に行って、歌って地元の人たちとごはんを食べると、「ああ、ちゃんと体がある!」って実感できるんだよね。
かつて苫小牧であったライブの中でも最も美しいものに
加藤 それで言うと、今の僕は迎える立場にいることが圧倒的に多いんですよ。俺が苫小牧にいるからこの人はわざわざ来たんだな、だから今ここで知り合ってるんだなって。もう「自分のせい」みたいな話になってくる。
後藤 2019年の「YOUR NAME」なんて、片寄さん(片寄明人 / GREAT3)までいたもんね。
加藤 だからもう、最近はみんなの遠くの友達代表みたいな感覚で、どすっと座ってる役割でいようと思ってるんですよ。「俺はここで旗を振ってる!」とかじゃなくて、ただここにいる。それだけでふと誰かが「まあ、苫小牧に加藤いるしな」と思ってくれる。そういう役割があってもいいよなと思います。
──考えてみれば、今回アジカンが動くのは「苫小牧に加藤いるしな」以外の理由がないですよね。
後藤 そう、まったくない(笑)。みんなも「NOT WONKだからな」ってことで納得してる。「なぜやるの?」とか、まったく聞かれなかった。
加藤 ははは。アジカンが苫小牧でライブするの、昔音楽館ってライブハウスがあったけど、それ以来ですよね?
後藤 そうかもしれない。ひさびさだから楽しみですね。
加藤 あと「FAHDAY」で一緒に働いてる仲間は、それぞれの持ち場があるからNOT WONKのライブを観れてないんですよ。でもこの日は日曜で店も休みやすいし、みんな「行くわ」と言ってくれて。「FAHDAY」に関わるすべての人たちが、おそらく最後に足を踏み入れることになると思う。みんなで見届けたい気持ちもあるだろうし。
後藤 うん。僕も自分の街のホールではないけど、加藤くんたちの、もっと言えば地元で亡くなった人たちの思い出の場所だったかもしれない場所で、みんなで「いい日だったね!」って言いたい。あとは「ここなんで潰さなきゃいけなかったんだ?」ということも抱えて帰りたいし、「これをほかの街でも繰り返してもらいたくない」ということも伝えていきたい。
加藤 そうですよね。苫小牧以外でも同じような流れは起きているけど、まだ間に合うところはいっぱいあると思いますね。
後藤 そうね。あと演奏自体は、かつて苫小牧であったライブの中でも最も美しいものになればいいと思ってる。
──今のNOT WONK、新体制で完璧に仕上がってますから。
後藤 ね。俺の大好きな本村くん(本村拓磨 / B)まで正式加入しちゃって。「おいおい、それ卑怯だろ」みたいな(笑)。
加藤 「そのカードがあったか」って感じですよね(笑)。
後藤 もう無敵化してんじゃん。でもまあ、アジカンは自分のライブをきっちりやって、そのあとに加藤くんたちの演奏を見届けたいです。
加藤 うん。がっつりやりたいですね。
公演情報
NOT WONK presents "BEING THERE 9"
2026年3月15日(日)北海道 苫小牧市民会館 大ホール
<出演者>
NOT WONK / ASIAN KUNG-FU GENERATION
プロフィール
NOT WONK(ノットウォンク)
2010年に加藤修平(G, Vo)を中心に北海道・苫小牧で結成された3ピースバンド。2015年に1stアルバム「Laughing Nerds And A Wallflower」をKiliKiliVillaからリリースし、以降は「RISING SUN ROCK FESTIVAL」や「FUJI ROCK FESTIVAL」などの大型フェスへの出演を果たす。2021年1月に4thアルバム「dimen」、2025年2月に5thアルバム「Bout Foreverness」をリリースした。加藤は2023年にソロプロジェクト・SADFRANKを始動させ、同年3月に1stアルバム「gel」を発表。2024年からは地元・苫小牧の仲間たちと“表現の交換市”「FAHDAY」を行っている。
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ASIAN KUNG-FU GENERATION(アジアンカンフージェネレーション)
1996年に同じ大学に在籍していたメンバーで結成。2003年4月にミニアルバム「崩壊アンプリファー」でメジャーデビューし、2004年にリリースした「リライト」を機に人気バンドとしての地位を確立させる。2024年7月にデビュー20周年を記念してシングルコレクションをリリースし、8月に神奈川・横浜BUNTAIでアニバーサリーライブ「ファン感謝祭2024」を開催。2025年10月にはASHとのスプリットツアーを行なった。また後藤正文(Vo, G)は、バンド活動と並行してGotch名義でソロ活動も展開。the chef cooks me、Dr.DOWNER、日暮愛葉、yubioriらの作品にプロデューサーとして携わるなど多角的に活躍している。文筆家としても定評があり、これまでの著作に「ゴッチ語録」「凍った脳みそ」「何度でもオールライトと歌え」などがある。また自身が創設したNPO法人「アップルビネガー音楽支援機構」としては、2026年春に静岡県藤枝市に音楽スタジオ「MUSIC inn Fujieda」をオープンさせる。
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