ぼっちじゃなくなり、モテだしたら歌えなくなる

──替え歌の歌詞の着想ってどういうところから得るんですか？

たいていは実体験ですね。だから以前はぼっちネタも歌えたんですけど、最近はなかなか……。

──それはなぜ？

ほかの歌い手さんとコラボさせていただく機会が増えていて、しかも「ミューマス」（「NicoNico Music Master」）みたいな、いろんなイベントに呼んでいただくようにもなったし、同人CDなんかに参加させていただくようになったりしているので。

──確かに活発にコラボをなさってますよね。

ほかの替え歌系の歌い手さんの曲を聴いていると「面白いんだけど、なんでこの歌詞はこうなるんだろう」って謎に思うことがあるんですけど、チャットで話をさせてもらったり、一緒に動画を作ったりしているうちに思考回路がわかってきて「じゃあそれはパクろうかな」と（笑）。いろんな人のアイデアを参考にして、自分の曲にも取り入れられるっていう意味では、コラボはすごい勉強になるんですよ。ただ、そうやってコラボをやらせてもらっている人間はやっぱりぼっちをネタにしちゃいけない気がするんです。今、ガチでぼっちの人に申し訳ないというか。

──そこは誠実なんですね（笑）。

いくら替え歌とはいえ、やっぱり嘘はつきたくないですから。だから逆にいうと、ぼっちネタはマズい気はするんだけど、非モテネタはまだ使えるんです（笑）。

──あはははは（笑）。人気の歌い手になってもモテませんか！

残念ながら（笑）。なので非モテネタはアリ。あと「パズドラ」廃人になりかけたネタとかはアリなんですよ。

──recogさんにとってリアルだから（笑）。ただ今後、彼女ができたりしようものなら……。

そうなんですよ。僕の場合、幸せになればなるほど歌えるネタが減っていくっていう（笑）。

「ピッチの外れた声を聴かされるとイラっとする」

──ただ、そうやってぼっちネタ、非モテネタなんかを歌うから、recogさんの動画には「美声の無駄遣い」とか「きもやか」といったタグが付きがちですよね。

あ、それでいいんです。褒め言葉ですから（笑）。

──自分が美声であることは意識されてます？

いや、自分の声は嫌いっスね。だからいまだに試行錯誤してます。もうちょいうまく聴かせられるようになりたいです。

──それは歌のテクニック的なことですか、それとも発声法とか？

いや、どちらでもなくて。動画を投稿し始めた頃は声のバリエーションを増やそうと躍起になってたんですけど、さすがにそれは声帯を変えなきゃムリなんであきらめました（笑）。もうダメなものはダメだと。だから今気にしているのは、どちらかといえばミックスについてですね。最初の失敗でさすがに懲りて、それなりに勉強したんですよ。オケと声のバランスをとりつつ、声にコンプかけてリバーブかけて、最後にディレイをちょっと飛ばすか、飛ばさないかくらいかける。いわゆるカラオケミックスまでは覚えましたね。

──レコーディングはご自宅で？

最初は自宅でやってたんですけど、母親が「うるせえ、出てけ！」と（笑）。それからはスタジオでやってます。街の貸しスタジオって個人練習なら1時間500円みたいなコースがあるじゃないですか。そのコースで2時間くらいスタジオに入って、まずはメインボーカルを録って、次の日に1時間スタジオを借りてハモを録るみたいな感じで。1曲録るのにかかる時間はだいたい3時間ですね。

──そのあと、さっき言っていたミックス作業ですか。

はい。ミックスにはけっこう時間かけてますけど、正直一番嫌いな作業なんです。

──なぜ？

自分のピッチの外れた声を聴かされるとイラっとするんですよ（笑）。今まで「補正は敵だ！」と思ってたんですけど、あまりにイラっとしたんで最近とうとう「MELODYNE」（ピッチ補正ソフト）を買っちゃいました。一応「できるかぎり自然な範囲の補正に留めよう」とはしてますけどね。

「思い付いたら替え歌にする。付かなかったらしない」

──そういえば基本的なことを聞くのを忘れてました。最近だとアニメ「進撃の巨人」のオープニング曲「紅蓮の弓矢」の替え歌動画をアップされていましたけど、選曲の基準って？

あんまり考えてなくて「いいなと思ったら歌う」みたいな感じですね。ニコ動で流行ってる曲はどうしても耳に入ってくるから、そこで替え歌が1フレーズでも思い浮かべば、歌ってみたくなっちゃうんですけど、逆にどんな人気曲であってもフレーズが思い浮かばなかったら歌わないですね。例えばじん（自然の敵P）さんの曲とかを歌えば絶対再生数が伸びるってわかってますけど、手を出さないのにはそういう理由があるんです。じんさんの曲は連作の物語になっていて、世界観がしっかり確立されているので、なかなか壊しづらいというか、新しい解釈が思い付かないんですよ。だから自分の中に禁じ手っていうのはなくて「歌詞を思い付いたら替え歌にする。思い付かなかったらしない」というだけ。何か選曲の基準があるとしたら、それだけのことなんです。

──モノマネしながら歌っている動画もけっこうありますけど、モノマネのネタの基準も似たようなもの？

ただ、僕のはモノマネのモノマネですから。「松岡修造のモノマネをする誰かのモノマネ」みたいな（笑）。ニコ動で流行ったモノマネ系の動画はだいたい観ているから、その中でもモノマネできそうなものがあったらやってみるというだけです。で、今は「ふなっしー」のモノマネをがんばってみてます。「なぜー」っていう、あのふなっしーの半泣き声あるじゃないですか。ああいう感じのに挑戦中です（笑）。