ナタリー PowerPush - NICO Touches the Walls

暗闇を照らす深い輝き 2ndアルバム「オーロラ」完成

野音を自分達のサウンドや空気で埋め尽くしたかった

──6月に野音でやったときのように、初めて大きい会場でやるときは、プレッシャーとワクワクする気持ちとどちらが大きいですか?

インタビュー写真

光村 ワクワク感のほうが強いですね。

坂倉 どっちもありながらね(笑)。

光村 ただ、野音でやったときも、自分達が果たしてここをいっぱいにできるのか? という不安はもちろんあったんです。でも、ここをきちんと自分達のサウンドや空気で埋め尽くせたら、どんだけいいものができるだろう? っていう思いのほうが大きかったんで。

──野音ではお客さんのウェーブをボーリングのピンに見立ててストライクをとったりもしてましたよね(笑)。

光村 あれは誰もやらないだろうと思ったんで、意地でやりました(笑)。やってみて思ったんですけれど、お客さんからは実際に何が起こってるかよくわからないんですよね。お客さんがウェーブする景色を僕らから観ると、ボーリングのストライクに見えるという。だから楽しかったのは僕らだけで。かなりぜいたくな遊びでしたね(笑)。DVDの映像でそういうところも楽しんでもらえればいいと思いますけど。

曲が形になった後、レコーディングでぶっ壊していく

──アルバムには「レオ」のような、実験的なブレイクビーツ主体の曲も収録されていますよね。今までのバンドのイメージからすると意外ではあったんですけれど。

光村 でも、あの曲の構想自体は2年くらい前からあって、前のアルバムを作っているときにも候補には上がってたんです。ただ、そのときは出し惜しみしておこうかなって(笑)。あと、今回のアルバムで突飛なところと言えば、4曲目の「Lonesome Ghost」ですよね。以前から対馬くんのドラムにラテンなフレーバーを感じていて、ずっとああいう曲をやりたいなと思ってたんです。ツアーが終わった次の日くらいからやり始めましたね。そういう意味では、まだまだいろんな方向に行きたいなという思いが1stをやり終えた瞬間から炸裂していて。1年間くらいずっと前のめりでした。

──「Lonesome Ghost」のような曲はどういう風にして作っていくんですか?

光村 他の曲と作り方は変わらないですけれどね。フェラ・クティとかを聴いて、俺らは決してああなれないけど、その気持ちでやったらどういう風になるか? っていうのをひたすら4人でやってみたりする。もともと歌のメロディがしっかりある中で作り始めてるんで、バンドでは4人でひたすら音を出す。それが一旦形になるところまでいったあと、レコーディングの作業でそれをぶっ壊していく。そういう作業でしたね。とはいえ、その裏で「ホログラム」とか「ビッグフット」のような曲も生まれてきていたし。どちらもなきゃやれなかったことなのかと思います。

アルバムの収録曲を決めるときは、バラードが一番最初に揃う

──シングルの「かけら ~総べての想いたちへ~」も大きな意味を持った曲ですよね。こういった思いを切々と歌うようなバラードって、バンドにとっても大事な要素だったと思うんです。それを初めてシングルという形で見せたわけで。アルバムにおいても「かけら」や「トマト」のようなバラードの曲が“重し”になってる感じがしますよね。核の部分にこういうものがあるのがわかるという。

光村 そうですね。アルバムでもちょうど真ん中に「かけら」、最後に「トマト」という曲が置いてある。これまでアップテンポなものをシングルにしてきたイメージはあると思うんですけれども、こういうところは自分達の中の大事な一部分なんですよね。音楽をやるうえでも一番自信をもってやれるところで。アルバムを聴き終わったときにそういう風に感じてもらえるといいなあという思いは強くありますね。

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──ただ、メロディと歌の良さが核の部分にありながら、そればかりに頼ってるわけでもないというのがNICOというバンドの面白いところなんですよね。

光村 しょっぱいもの食べたら甘いもの食べたりとか、そういう繰り返しはスタジオの中でもありますからね。ライブもあるし、自分達が好きな音楽の要素を愛情表現として曲にしたいなという思いもあるんで。でもまあ、不思議なんですけど、アルバムの収録曲を決めようとすると、たいていバラードが一番最初に揃うんですよ。だから、今回も入れられなかったバラードはたくさんあって。ただ、バラードばっかり入れるとどこを聴かせたらいいのかバラけちゃう感じもして。今回は「かけら」や「トマト」というもうこれで充分だというくらい心地のいいバラードができたんで、そこにきちんとフォーカスを当てることができました。

坂倉 どの曲もいい形で響くようにというバランスは意識してましたね。

──曲順もかなり練ったんじゃないですか?

光村 そうですね。どう並べようかというところは毎度悩むところではあるんですけれど。今回は特に、気分によって曲や聴くゾーンを選んだりできるように考えてあるんです。何度も聴き続けたいアルバムって、聴くたびに「いいなあ」と思うところが変わっていったり、発見があるアルバムなんですよね。そういうものを目指したし、結果としてすごく陰と陽がハッキリしたアルバムになったと思います。このアルバムを聴いたらなかなか他に行けないような感じにしたいというのはありましたね。

ニューアルバム『オーロラ』 / 2009年11月25日発売 / Ki/oon Records

  • 初回限定盤[CD+DVD] 3200円(税込) / KSCL-1525~6 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤[CD] 2800円(税込) / KSCL-1527 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. Aurora
  2. ホログラム
  3. Lonesome Ghost
  4. ビッグフット
  5. かけら ~総べての想いたちへ~
  6. 錆びてきた
  7. レオ
  8. N極とN極
  9. 風人
  10. トマト
NICO Touches the Walls
(にこたっちずざうぉーるず)

2004年4月に光村龍哉(Vo,G)、古村大介(G)、坂倉心悟(B)の3人で結成。同年7月に対馬祥太郎(Dr)が加入し、現在の編成となる。同年ヤマハのバンドコンテストに出場し、優勝に準ずる賞を獲得。翌2005年から渋谷と千葉・柏を中心にライブ活動をスタートさせる。2006年2月に初のミニアルバム「Walls Is Beginning」をインディーズレーベルから発表。その後「SUMMER SONIC」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」などの夏フェスやライブイベントへの出演を経て、2007年11月にミニアルバム「How Are You?」でメジャーデビューを果たす。メンバー全員が1985年生まれと若手ながら、楽曲のクオリティの高さと演奏力に定評がある。また、エネルギッシュなライブパフォーマンスも多くのロックファンを魅了している。