「Neighbors Con」特集|古家正亨さんと行く!Kアリーナ横浜視察レポート&インタビュー (2/2)

「はじめまして」の4組

──11月25日に開催される「Neighbors Con」。古家さんにはMCとして参加していただきます。NCT DREAM、WayV、NiziU、BOYNEXTDOOR、POWが出演しますが、それぞれのアーティストと、これまで一緒にお仕事をされたことはありますか?

実は、NiziU以外は初めてなんです。だからとても新鮮ですし、初めての方とご一緒するときは特別な緊張感があって、楽しみなんですよね。こういう合同コンサートだと、ファンの方は自分の推しのグループを目当てに来ると思うんですが、それ以外のグループへの関心も高められるようにサポートできたらいいなと思います。

──リスナーとしては、今回の出演者の楽曲は聴いていましたか?

Block B(BOYNEXTDOORのプロデューサー・ZICOが所属するグループ)とはずっと仕事をしてきましたし、ボイネク(BOYNEXTDOOR)の楽曲制作に携わっているプロデューサー・Pop Timeの曲も個人的に好きだったんです。だからボイネクのことは、デビュー当時から注目していました。

──BOYNEXTDOORは、現時点では日本でのライブ出演がまだ3回だけですから、パフォーマンスを観れる機会も貴重ですよね。ZICOさんとは今も交流があるんですか?

2020年の入隊前に会ったのが最後ですね。彼がプロデュースするグループはどんな感じになるんだろうと思っていたら、既存の枠にとらわれない印象が強くて、「ああ、第5世代だなあ」と思いました。見た目は清涼感があるのに、音楽はけっこうゴリゴリしているバランスが面白いですよね。デビュー作と9月にリリースされた1st EP「WHY..」はまた印象が違って、方向性を見定めるためにいろいろ試している時期なのかなと。これからどんな色が付いていくのか楽しみです。

SMアーティストとの仕事は久しぶり

──NCT DREAM、WayVは共にSMエンタテインメントのアーティストですが、どのような印象がありますか?

実はSMのアーティストとは、あまり一緒に仕事をしたことがないんです。KANGTA(ex. H.O.T)さんのようなベテランアーティストとは、最近もご一緒させてもらいましたが、グループの単独イベントでいえば、SHINeeの日本デビュー前、彼らのファンミーティングの司会をやって以来だと思います。NCTは、音楽的に本当にすごいと思っていて。いろんなユニットがありますが、その中でNCT DREAMはキャッチーでかわいらしくて、ファン層の裾野を広げている存在だなと。彼らのキラキラ感を生で体感できるのがとても楽しみです。

──WayVは、NCTの中華圏出身のメンバーで構成されたユニットです。

僕は中華圏の俳優さんのファンミーティングでMCを担当することもあるんですけど、WayVみたいな立ち位置のグループは珍しいなと感じますね。韓国発信のスターという枠にいながらも、活動拠点、その中心は中国ですよね。彼らのパフォーマンスを、直接見ることができるのも待ち遠しいです。

──NiziUとはこれまでに何度も一緒にお仕事をしていると思いますが、どのような印象をお持ちでしょうか。また、このラインナップの中で彼女たちに期待することは?

ファンの方以外にとっては、オーディション番組「Nizi Project」での印象が強いと思いますが、デビュー以降、そのパフォーマンス力はどんどん洗練されていて、僕も単独コンサートに行くたびに驚かされています。お会いするたびに、歌、ダンスともに「どこまで成長するんだろう」という期待を抱かされるグループです。しかも、韓国でのデビューも決まって、いよいよグローバルグループとしての彼女たちの歩みを再確認できるチャンスだと思います。MCも、デビュー初期は緊張されている様子でしたが、最近はいきいきと楽しそうにお話しをしてくださるので、そんな彼女たちのトークの面白さを今回のイベントでも引き出せたらと思っています。

──POWは10月にデビューしたばかりのフレッシュなグループですが、ご存じでしたか?

存じ上げてはいました。タイミングによっては、このイベントが初来日ということになりますよね。僕は普段、新人さんのショーケースを担当することが多いんです。やっぱりステージに慣れていない方が多いので、「うまく回してください」と依頼をいただくことが多いんですね。でも最近の新人さんたちは、すでにデビューのときからトークの面においてもある程度出来上がっているグループも多いので、楽にお話できる雰囲気を作ってあげたいなと思っています。

──初見のお客さんが大多数ですから、どんなグループなのかをきちんと紹介してあげたいですよね。

僕は新人さんのショーケースを担当させてもらうとき、もちろんミュージックビデオやYouTubeに上がっている映像、ファンの方々のコメントをひと通りチェックして、しっかりとリサーチしてから臨むんです。でも正直に言うと、これがあまり参考にはならないんです。

──事前にリモートでミーティングしたりもしないんですか?

ないですね。当日挨拶する間もなく、一緒にリハーサルもできず、本番のステージで初めてご対面、なんてケースもあります。

──それはかなり不安ですね。人数が多いグループだと、名前を間違えないかも心配になりそうです。

写真や映像をしっかりチェックして臨んでも、当日の髪型やメイクで全然印象が変わってしまうことも多いですしね(笑)。あと、事前に韓国の番組などでトークがうまいメンバーをチェックしておいても、それがステージ上で発揮されないことも多いんです。逆に、外国に来て花開くメンバーも絶対にいて。リハーサルのときに「今日はこのメンバーを中心に回すと、このグループが映えそうだ」となんとなく察知して、その人を中心に回すようにしています。トークリハはほとんどないですが、少し話して「この子は絶対面白いな」と勘でつかんでいます。

──ファンミーティングなどではトークテーマが決まっていることも多いですが、ざっくりとリハーサルしているのかと思っていました。

いやいや、ぶっつけですね。練習はできなくて(笑)。ゲームの段取りを確認するくらいじゃないですかね。

──昼夜2回公演のときは、やはり夜公演のほうがアーティストも小慣れてくるものでしょうか。

洗練されているのはもちろん夜公演だと思います。でも不思議なんですが、昼は緊張感があったけど夜はリラックスしすぎていたから、「逆に昼がよかった」とおっしゃる方もいるんですよね。どちらも違うよさがあります。僕自身は同じ台本でも、昼と夜で絶対に質問を変えるようにしています。やはり同じ話を2回すると、お客さんはもちろん、アーティスト本人にとっても答えるときの新鮮さが失われてしまいますよね。

通訳で生じるディレイへの配慮

──お仕事をするときに、K-POPアーティストを相手にするからこそ気を付けていることはありますか?

“K-POPアーティスト”だから、という考え方はしないかな。あくまでもファンの方々とアーティストがどうやったらお互いの存在を近く感じられるか、ということだけを考えています。外国のアーティストだと言語の壁があるわけですが、僕はその壁をなくして、彼らと笑ったり感動したりする時間を共有できるように意識しています。「僕はあなたの話を聞いているからね」と安心させる。通訳さんが入るタイミングで、お客さんの反応を待ってから盛り上げようとすると、イベント全体に大きなディレイが起きるんです。このディレイには最大限の配慮をしていますね。メンバーが韓国でトークしているときと同じ感覚で日本でも過ごしてもらいたい、と常々考えています。

──なるほど。古家さんがMCをされているイベントはいつもトークのテンポが心地いいと感じていたんですが、その理由がわかった気がします。

最近はご自身で勉強して、韓国語を理解できるファンの方も増えてるんですけどね。でも全員が同じように時間を共有するのは難しいので、そのギャップを埋めていくのが僕の仕事だと思っています。

古家正亨

古家正亨

「日本でこんな表情見たことない」を目指して

──コロナ禍が落ち着いて、今年はK-POPアーティストの来日公演が盛んに行われています。古家さんもさまざまなイベントに引っ張りだこですよね。

本当に最近は公演が多いですよね。ファンの皆さんのお財布が悲鳴を上げているんじゃないでしょうか(笑)。でもチケット代って、満足できれば高くてもいいと思うんですよね。満足できないから、値段が高いと思うわけじゃないですか。なので、少しでも多くの人に「安くないチケット代を払ったけど、これだけいい時間を過ごせたから満足」と言ってもらえるよう、サポートしたいと思っています。

──頼もしいお言葉です。今回「Neighbors Con」のトークパートがどういう形式になるかはまだ決まっていないですが、当日アーティストに聞いてみたいことはありますか?

ファンは、それまでに見たことがない推しの姿を見たいはずなんです。ありきたりな質問じゃなくて、ちょっといじってみたりして、その瞬間にこそ出る表情を引き出したいですね。トークの内容はもちろん大事ですが、単純にゲームやトークがあったから楽しかった、とはならないと思うんです。それ以上に「日本でこんな表情見せてくれたことないよね」と言われるような、その場でしか見れないものを引き出したいですね。

プロフィール

古家正亨(フルヤマサユキ)

1974年生まれ。北海道出身。上智大学大学院文学研究科新聞学専攻博士前期課程修了。数多くのK-POPイベントのMCを務めるほか、ラジオDJとしても活躍しニッポン放送「古家正亨 K TRACKS」、NHKラジオ第一「古家正亨のPOP★A」、northwave「Colors Of Korea」にレギュラー出演中。2009年には日本におけるK-POPの普及に貢献したとして、韓国政府褒章文化体育観光部長官褒章を受賞した。2022年に初のエッセイ本「K-POPバックステージパス」を出版。K-POPスターのみならずK-POPファンからの信頼も厚く、「古家さん」の愛称で親しまれている。