WayVが醸す“ポストいにしえ”の雰囲気
──ボネクドとNCTの音楽はタイプが全然違いますね。
ですです。NCTの音楽はアイドル本人をカッコよく見せる音楽だと思うんです。一方、ボネクドは音楽単体のよさにフォーカスしてる印象です。K-POPの新しい方向性の1つというか。
──僕は先日「NCT NATION」(9月に東阪で計4日間開催された、NCTメンバーが一同に会するスタジアム公演)に行ってきたこともあって、POWやボネクドを聴くと隔世の感があるんですよ。BTSやBLACKPINKを経て、本当の意味で“新しいK-POP”が出てきたって。
ボネクドもPOWもRIIZEもNewJeansも洗練されてますよね。NCTも洗練されてるんだけど、昔のめちゃくちゃなK-POPの感じが残ってる。「NCT NATION」どうでした?
──くそヤバかったです……。
ライターなんだからもうちょっとわかるように言ってくださいよ!(笑)
──ちょっと長くなってもいいですか? 今回は「Neighbors Con」にちなんでWayVとNCT DREAMに絞って話しますね。
溜めてくる(笑)。さっさと話してくださいよー。
──WayVにとってはけっこう大変な時期を経てのスタジアムライブだったんですよ。WayVはNCT 127やNCT DREAMと同じように“NCT”に属するグループではあるけど、この2組と比べると、ちょっとだけ切り離されたイメージがあるじゃないですか。
ですね。俺もWayVは「Nector」とかNCTのアルバムに入ってる曲を知ってる程度ですし。
──それには理由があって。WayVがデビューする以前から中国には、韓国のコンテンツを制限する限韓令というのがあったんです。でも去年、韓国の大統領が変わって、秋に韓中首脳会談が開催されて、ようやく中国でも韓国のコンテンツが視聴できるようになったんだとか。
ってことはWayVは2019年にデビューしてるけど、デビュー後しばらくは「韓国発のNCTの一員です」と大々的に公言できなかったってことですか? それは大変だなあ。
──しかも中国には箱推し文化がなくて基本、単推しだそう。だから中国にはアイドルグループそのものが少ないらしいです。
K-POPのグループがあまり中国で活躍できないのってそんな理由があったんだ。
──あと聞くところによると、中国には音楽番組が全然ないみたいで。パフォーマンスを披露するタイミングも、バラエティ番組に出たときに自己紹介ついでに軽く歌える程度っていう。おまけにコロナもあったから。
四面楚歌すぎ……。
──そういう事情を経ての「NCT NATION」だったんですよ。本人たちもスタジアムライブは待望だったと思うし、WayZenNi(WayVファンの呼称)たちの声援と掛け声も本当にすさまじくて、ただただ“ヤバい”雰囲気だったんですよ。
しかも6人そろってのライブだったと。
──そうですね。5月に日本で開催されたファンミーティングにはメンバーの中でウィンウィンだけが来られなかったから……。中国の芸能界だと誰か1人にだけ仕事のオファーが来ることが多いので、全員そろうのが難しい。「NCT NATION」のWayVのパフォーマンスは本当に素晴らしかったので、新しくWayZenNiになった人も多いと思う。「Neighbors Con」は最高のタイミングでの来日です。
夜公演にはNCT DREAMも来ますしね。
──ネガティブな意味じゃなく、彼らが所属するSMエンターテインメントは根本が変わらないのが魅力です。POWとBOYNEXTDOORみたいな新しいグループと、NCT DREAM、WayVが一緒に観られるライブはK-POP史的にも貴重な気がします。
わかります。あと思ったのが、WayVって今のK-POPではコンサバなグループだと思う。
──というと?
WayVには2016、17年のK-POPの雰囲気があるじゃないですか。俺、あの感じも好きなんですよ。ブロビやモネク(MONSTA X)の感じ。ポストいにしえ時代。
──(笑)。
そこをベースにNewJeansがゲームチェンジャーになって、ボネクドやPOWがあると思ってて。そうなると今、リアルいにしえのH.O.T.「Candy」のカバーをやってるNCT DREAMはこのラインナップだと一番攻めてるグループなんですよね(笑)。H.O.T.なんてOG(Original Gangsta / 「元祖」を意味するスラング)中のOGじゃないですか。
──あの「Candy」の感じがNCT DREAMの本質だと思います。独創的なNCTの世界観もありつつ、同時にアイドル的なエンタメ性が高い。SM印の歌唱力もあって、メンバーのキャラクターも魅力的。誰が観ても楽しいと思う。あとMCでいっぱい日本語をしゃべってくれるのもうれしい。
海外の数万人の観客の前で、母国語じゃない言語でMCするってマジで尋常じゃないことですからね。ちなみにPOWの楽曲プロデュースに参加してるハンビンがもともといたiKONもめっちゃ日本語うまいんですよね(笑)。いにしえからポストいにしえを通過してきたBIGBANG譲りの日本語力。
──あの時代のK-POPアイドルはめっちゃ日本ツアーしてくれましたもんね。
ですね。あと思ったんですけど、「Neighbors Con」的にはハンビンがプロデュースに関わってるPOWがいるのはデカいと思うんですよ。だってYGがK-POPに及ぼした功績ってとてつもないじゃないですか。サバイバル番組とかティーザーの元祖で。
──K-POPの歴史の流れを感じられるというと大仰だけど、少なくともこういうイベントは日本じゃないと成立しないかも。
このイベントって続いていくんですか?
──そう聞いています。もし来年OKAMOTO'Sにオファーが来たら誰と競演したいですか?
えー。誰だろう。
──レイジさんが好きなRed Velvetとか?
それは気まずいっす(笑)。僕らの少し下の世代ですが、SE SO NEONとSilica Gelと一緒にライブしたいです。
──それは面白そう。めちゃどうでもいい情報ですが、NCT DREAMのマンネ(最年少)・チソンとPOWの最年長・ヨチは2002年生まれで同い年みたいです。
芸歴エピソードは合同イベントならではですよね。俺らもフェスでそういうのけっこうあって。実はネバヤン(never young beach)とかヨギー(Yogee New Waves)、同世代なんですよ。
──OKAMOTO'SというとTHE BAWDIESや毛皮のマリーズとかと同じ時期に出てきたイメージがあります。
ですよね。でもTHE BAWDIESのROYくんは7、8個くらい上だし、志磨遼平(ex. 毛皮のマリーズ / 現・ドレスコーズ)さんも10個上です。デビューが早いとそういう現象起こりがち。「Neighbors Con」はそういう出演者の世代についても注目していただければ。
プロフィール
オカモトレイジ(OKAMOTO'S)
1991年東京都生まれ。中学校からの同級生4人で結成されたロックバンド・OKAMOTO'Sのドラマー。DJとしても活動するほか、「YAGI EXHIBITION」を主宰しエキシビションのキュレーションも行うなど、幅広い活躍を見せている。OKAMOTO'Sとしては、2022年7月に東京・NHKホールでライブイベント「90'S TOKYO BOYS IN HALL SPECIAL ~アフタースクール~」を実施。2023年5月にテレビアニメ「Dr.STONE」のエンディングテーマ「Where Do We Go?」を収録したシングルをリリースし、11月からは「出張!オカモトーク Acoustic/Talk Tour 2023-2024」を開催する。
Neighbors Con特集
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