ナタリー PowerPush - ねごと
闇を抜けた4人が目指す“光”を歌う最新シングル
言い切っていかないと見えてこない光
──幸子さんはそのとき、言葉の断片とかアイデアは浮かびました?
蒼山 いや、そのときは、音の壁っていうか、熱の壁みたいなものが、すごいな!って思って(笑)。でもほんとに聴いてるだけでこみ上げてくるものがあるというか。キラキラしてるというのとはまた違う、生々しくて熱がある感じがすごかった。だからキレイな歌詞にはしたくないなって思いました。すごくリアルなものを書きたいなって。それでまっさらな気持ちで歌詞を書き始めたんですけど、そのとき「愛じゃない 触れない ただ儚い願いでした」という最初の2行が出てきて。これがその当時の自分の状態をすごく表してる気がしたんですよ。
──あ、そうなんですか?
蒼山 はい。いや、もしかしたらそのときだけじゃなくて、いつもなのかもしれないけど。優しくしたかったり、「誰かにこうしてあげたかった」とか、そういうものって、愛じゃないかもしれない、ひとりよがりの感情かもしれない、というか。それはただ自分の望みであって、その人にとっては別に愛じゃないこともあるというか……そういうことを考えることが多かったんですね。でもこの曲では、自分の枠もはみだして、光がある場所に向かっていくこと? 恥ずかしい自分でもいいから進むんだ、みたいな感じを書きたいなと思って、その2行から書いていきました。その途中で、「ガンダム」のお話をいただいたんですよ(※この曲はテレビアニメ「機動戦士ガンダムAGE」アセム編のオープニング曲としてオンエア中)。それで銀河っぽい感じとか宇宙っぽい感じは、ねごとが元々得意とするジャンルではあるので、そこにとらわれないで、自分の書きたいやり方でできるなと思ったんですね。「カロン」とかにも強くて宇宙っぽい感じはあったんですけど、今回は曲がすごく強かったから、言い切らなきゃカッコ悪い、みたいな気持ちがありました。言い切る勇気も大事だな、と。物事に対して。
──はい。断定するということですね。
蒼山 それには責任も生じるけど、でも言い切っていかないと見えてこない光もある気がしたんです。それも曲を聴いて、こみ上げてくるものがあったし。だから今までよりも強い言葉を使いたかった。ただキラキラしてるだけの曲じゃないんだよって。それはすごく泥臭かったりするし、恥ずかしかったりするけど、でもそういう生々しさみたいなものを全部書きたいなと思いました。そういう面ではすごく苦労したというか、「この気持ち、どうやって言えばいいんだろう?」というところはありましたね。「もっと的確に言いたいんだけどな」みたいな。
去年の後半はライブへの自信が欠けていた
──そうですか。今お話を聞いていて、その「言い切りたい」という気持ちの裏には、バンドとして次の段階に行かなければという気持ちがあるのかな?と、ちょっと思ったんですが。
蒼山 うん……振り返ってみて、この「sharp ♯」を作っていた去年の夏から年末にかけてというのは、ねごとにとっても、すごい挑戦の半年間だったんですね。いろんなところでライブに出させてもらって、自分たちのツアーもあって、ライブをする機会がすごく多かった。その分、毎回、見せ方とか挑戦してたんですよ。「こういうふうに手を叩いて」とか、毎回みんな、すごくがんばって臨んでるのに、終わったあとにやりきった感じがない、みたいな。
──ほんとに? そうだったんですか?
蒼山 うん、それぞれがそれぞれにがんばっちゃってて、4人でひとつになれてない感じというか。「みんながんばってるんだけど、結果に残ってないよね」みたいな時期が続いてたし、私も「なんでできないんだろう、自分」みたいなものがあったし。多分それぞれ葛藤があったと思うし、ライブについての反省会をするんだけど、その「今どう思ってるか」ということの話し合いができてなかったんですね。心の歯車を合わせられてなかったというか。ほんとはみんなそういうことを思ってたんだけど、でも「とにかく今は前に進まなきゃ」みたいなのがあったから……。
──そのもどかしさは、主にライブに関して感じてたんですか?
蒼山 ライブとか、自分のあり方とか、ですね。すごく考えてました。
沙田 去年夏にアルバムを出して、夏フェスにもほんとにたくさん出させていただいたし、そのあとには学園祭のライブもあって、初めて観てくれる方が多いところに突入することが多かったんですよ。そこで「なんとか結果を残したい」「お客さんに印象づけたい」って、すごく考えてたから「ノってもらわなきゃ!」みたいなのがありましたね。その使命感があったから、自分たちがどういうバンドなのかを置いといて、とにかくその1回のライブでお客さんに楽しかった記憶を持ってもらおうと、結構挑戦したんです。MCをなんとかしたり、「ここで前に出てお客さんを煽ったら手を挙げてくれるかな?」とか。そういう意味では、それに対して迷うヒマがなかった。だから自分たちがどういうふうに考えてて、ほんとはどういう演奏がしたいか?という話ができなかったのかなって思ってます。
──つまり目の前のライブでいっぱいいっぱいになってたから?
沙田 そうですね。だから、見せ方がうまいバンドさんもたくさんいる中で、ねごとをどう印象づけるかで、けっこう悩みました。その……今までは恥ずかしくてできなかったことをやってみたりして。
──何ですか? それは。
沙田 前に出るとかね。
藤咲 多分若干の恥ずかしさとかが残ったまま、その「前で煽ってみる」というのを試したんですよ。お客さんを煽るとか、手拍子してもらうとか、楽曲に合わせてやってみて。対バンのお客さんにも、ねごとというものを知ってほしかったんです。だけど結果、自分たちに恥じらいが残ってたら、お客さんにはそれが伝わっちゃうじゃないですか。対バンさんは自信持ってステージに立ってるし、自信持ってステージングに臨んでるはずだし、だからカッコよかったんです。だけど、ねごとは違った。自信が欠けていました。
通常盤収録曲
- sharp ♯
- drop
- Tonight(The Cribsカヴァー)
期間生産限定盤収録曲
- sharp ♯
- カロン
- sharp ♯ -tofubeats remix-
- sharp ♯ -tv size-
- sharp ♯ -instrumental-
ねごと
蒼山幸子(Vo, Key)、沙田瑞紀(G)、藤咲佑(B)、澤村小夜子(Dr)からなる4人組バンド。高校2年生だった2008年1月に結成し、春に開催された「閃光ライオット2008」に応募。予選を順当に通過し、8月に行われた決勝大会に進出。審査員特別賞を受賞する。同年11月に発売された「閃光ライオット2008」コンピレーションアルバムにも、大会で披露した楽曲「ループ」で参加する。その後勉強に専念するため一時ライブ活動を休止するも、2009年9月に本格活動開始。2010年2月より行っている自主企画「お口ポカーンフェス?!」も毎回好評を博している。2010年9月29日、1stミニアルバム「Hello! “Z”」をKi/oon Records(現Ki/oon Music)よりリリース。2011年3月発表の1stシングル「カロン」はau「LISMO!」のCMソングとしてオンエアされ、幅広い層から注目を集めた。同年7月、初のフルアルバム「ex Negoto」を発売し、オリコンウィークリーチャート6位を記録する。夏には全国各地の野外フェスに出演し、多くのロックファンから賞賛を浴びた。2012年4月、アニメ「機動戦士ガンダムAGE」アセム編のオープニングテーマに起用されたニューシングル「sharp ♯」をリリース。