ナタリー PowerPush - ねごと

待望1stフルアルバムで見せた バンドの成長と自由な精神

ねごとの初めてのフルアルバム「ex Negoto」が登場する。この作品は、バンドのチャーミングな要素があらゆる形で表現された良作だ。ポップに突き抜ける楽曲もあれば、サイケデリックな広がりを見せる瞬間も、ひらめきにあふれたアレンジも、デリケートな心情を描いた歌もある。いずれも定型に捉われることのない4人の発想力が導き出したものに間違いない。彼女たちの精神は、本当に自由奔放なのである。

そして去年の初音源リリース以来、大学に通いながらスタジオに詰めたりライブを行うなどをしてきたこのバンドにとって、アルバム1枚を作り上げること自体も結構なハードスケジュールでのことだったはずだ。しかしそんな制作過程すらもなごやかに、気取らず、明るい雰囲気で話してくれた今回のインタビュー。やり取りのはしばしから、ねごとの4人の魅力を改めて感じてほしい。

取材・文/青木優

ほんとの意味でねごとを知ってもらえるアルバム

──とてもいいアルバムだと思います。まずはおひとりずつ、できあがった手応えから話してもらいたいのですが。

蒼山幸子(Vo, Key) 今回のアルバムの曲は、「ループ」とかは17歳のときに録っているもので、それから、このアルバムを録り終えたときに全員20歳になったってのがあって……(沙田)瑞紀が3月が誕生日で、そこで20歳になったんですね。そういう意味では3年間がすごく詰まっているアルバムだと思ってます。初期の頃の曲も入っているし、でも「Hello! "Z"」のときとはまた違う、今の自分たちらしくブラッシュアップした曲もあって。「今だったらどうやって作りたいかな?」って思って作った曲もあるし……そういう意味では、ねごとというバンドがギュッと詰まっていますね。ほんとの意味でねごとを知ってもらえるアルバムだと思ってます。

沙田瑞紀(G) すごく作りたかった曲が今回形にできたので、1曲1曲に対する満足感はすごくあります。自分たちでも「いいな」って思えるアルバムに仕上がったと思います(笑)。

藤咲佑(B) 今までのねごとの成長過程が見せられるアルバムだと思ってます。「ループ」とか聴いてると、やっぱり昔に比べて幸子の声が違ったり、私たちのリズムも以前はズレがあったりもしたし……だから、どんどん成長していってるなとも思うし。作ってる過程でも、いろいろ思いつくことがあったり、新しい発見があって、楽しかったですね。

澤村小夜子(Dr) 結構ライブで映えそうな曲がいっぱいあって……いつもライブで一番初めにやってる「インストゥルメンタル」を最後に収録してるのもちょっと味があっていいんじゃないかと(笑)。ライブに来たくなるんじゃないかなと思います。でもこのCDだけでは、まだねごとを出し切れてない感があるので。次にまた新しいねごとを見せられると思うので……。次が楽しみですね。

──もう次の話ですか(笑)。その前にこのアルバムについて訊きたいんですけど、全体の方向性はどんなものだったんですか?

蒼山 「AO」とか、初期の頃に作ってたけど音源化されてなかった曲を1stフルアルバムに入れたいという思いは前からありましたね。あとは「七夕」「ビーサイド」「インスト」あたりはずっとライブでやってて、人気があった曲だし。で……曲自体の番号みたいなイメージもあって(笑)。

──曲に番号のイメージ?

蒼山 「七夕」は7曲目、みたいな(笑)。「week…end」は8って感じがするし、「季節」は9月とか10月とか11月ぐらいのカラッとした感じっていうのがあったりして……なんとなくですけどね。でもそういうものも一致してるので、並べたときにすごいバランスが良かったですね。

あぐらをかいて自然体でのレコーディング

──レコーディングは皆さん楽しかったですか?

澤村 結構笑いながら(笑)。私が一番面白いなって思ったのは、瑞紀の……。

沙田 座布団?

澤村 そうそう。“ストリートライブバージョン”の弾き方?(笑)

沙田 スタジオに座布団敷いてもらって。その上でちょっとストリートライブ的な空気を出しながら、あぐらかいてレコーディングしました(笑)。

澤村 横にお金が供えてあるのが、ほんとに面白くて(笑)。1万円とか置いてあったね?

──へえー(笑)。それはどの曲で?

蒼山 「メルシールー」とか「week…end」とか……曲のイメージ変わっちゃうかな(笑)。

沙田 レコーディングのときに「自分がどういう過ごし方をすれば一番うまく表現できるか」がわかってきた感じがあって。「イスに座って演奏する」みたいなのも考えてたんですけど、そこで「一番自然体の形で弾きたい」と思ったときに、あぐらが一番だと(笑)。そういうレコーディングの進め方が楽しかったですね。曲自体は一生懸命弾きました(笑)。

ニューアルバム「ex Negoto」 / 2011年7月13日発売 / 3059円(税込) / Ki/oon Records / KSCL-1789

  • 初回仕様限定盤 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. サイダーの海
  2. ループ
  3. カロン
  4. ビーサイド
  5. メルシールー
  6. ふわりのこと
  7. 七夕
  8. week...end
  9. 季節
  10. AO
  11. 揺れる
  12. インストゥルメンタル

アーティスト写真

ねごと

蒼山幸子(Vo, Key)、沙田瑞紀(G)、藤咲佑(B)、澤村小夜子(Dr)からなる4人組バンド。高校2年生だった2008年1月に結成し、春に開催された「閃光ライオット2008」に応募。予選を順当に通過し、8月に行われた決勝大会に進出。審査員特別賞を受賞する。同年11月に発売された「閃光ライオット2008」コンピレーションアルバムにも、大会で披露した楽曲「ループ」で参加する。その後勉強に専念するため一時ライブ活動を休止するも、2009年9月に本格活動開始。2010年2月より行っている自主企画「お口ポカーンフェス?!」も毎回好評を博している。2010年9月29日、1stミニアルバム「Hello! "Z"」をKi/oon Recordsよりリリース。2011年3月発表の1stシングル「カロン」はau「LISMO!」のCMソングとしてオンエアされ、幅広い層から注目を集めた。同年7月、初のフルアルバム「ex Negoto」を発売する。