ネクライトーキー|トリッキーな新曲「ふざけてないぜ」“弾いてみた”大歓迎のこだわり収録内容を語る

ネクライトーキーが9月8日にバンド初のCDシングル「ふざけてないぜ」をリリースする。

今作の表題曲はMBS、TBS、BS-TBSの“アニメイズム”枠でオンエア中のテレビアニメ「カノジョも彼女」のオープニングテーマとして書き下ろされた楽曲。頭に残るキャッチーなメロディと、トリッキーな要素を含むバンドの折り重なるようなアンサンブルが心地よく響く、ネクライトーキー節満載の内容に仕上がっている。

音楽ナタリーではシングルのリリースを記念して、もっさ(Vo)と朝日(G)にインタビュー。9月30日の東京・チームスマイル・豊洲PITでファイナルを迎えるバンド史上最大規模のワンマンツアー「ゴーゴートーキーズ! 2021」の手応えや、新曲の出来栄え、“弾いてみた”を歓迎するこだわりの収録内容について話を聞いた。

取材・文 / 田中和宏撮影 / 阪東美音

はじめましてのお客さん

──ネクライトーキーは半年ぶりにしてバンド史上最大規模のワンマンツアー「ゴーゴートーキーズ! 2021」の真っ最中ですが、手応えはいかがですか?

もっさ(Vo, G)

もっさ(Vo, G) ツアーは「ああ、回れているなー」って実感しながら各地でライブをしていて、行く先々で新しいお客さんが多い印象です。特に初めての場所に行くと8、9割のお客さんがはじめましてという感じ。これまでライブを観てもらえなかった人たちにもちゃんと届いているという感触があります。

──もっささんは地元・兵庫でのライブは楽しめましたか?

もっさ めちゃくちゃ楽しみました(笑)。

朝日(G) もっさは神戸で特にワクワクしてる感じがした(笑)。

もっさ 神戸のART HOUSEは親しみのあるライブハウスだからなんだか安心感があるというか。最近は全然行けてなかったこともあって、テンションが上がりました!

朝日 実はネクライトーキーの結成前、俺が当時もっさがやってたバンドのライブを初めて観たのがART HOUSEだったんですよ。今回のツアーで行ったときはちょっと懐かしさを感じつつ、当時のバンドのドラムが遊びに来てくれたりしてよかったです。

「ただの浮気クソ野郎じゃない」

「カノジョも彼女」キービジュアル ©︎ヒロユキ・講談社/カノジョも彼女製作委員会2021

──9月8日発売のシングル「ふざけてないぜ」の表題曲は、「カノジョも彼女」のオープニングテーマです。「カノジョも彼女」はマンガ家・ヒロユキさんによるコミックをアニメ化した作品ですが、“ネオスタンダードラブコメ”という独特なアニメの世界観を、この新曲にどうやって落とし込んだんですか?

朝日 お話が決まってから、まずはすでに出ている単行本を全部読みました。ジャンルはコメディなんですけど、時折、主人公の直也が本当に女の子に対して真剣なんだって部分が見えるんですよ。ただの浮気クソ野郎じゃないという彼の思いをすくって曲にできたらなと。そう思いつつも、歌詞は直也そのものというわけではないです。

──作詞にあたって別のことも思い浮かべたり?

朝日 そうですね。結局はネクライトーキーの曲ですし、テレビサイズで使われている歌詞とそれ以降の歌詞とで印象が変わると思います。自分としても共感ができて、マンガの登場人物の気持ちにも寄り添った歌詞にできたらいいなと思いながら歌詞を書きました。

もっさ アニメのタイアップは「誰が為にCHAKAPOCOは鳴る」(テレビアニメ「秘密結社鷹の爪~ゴールデン・スペル~」オープニングテーマ)に続いて2回目で、「カノジョも彼女」の原作を見てどんな曲にするのかすごく気にはなっていました。「ふざけてるやろ!」って内容になると思ったんですけど、逆にそうじゃない部分に朝日さんがフォーカスしたことにびっくりしました。

──朝日さんの着眼点が意外だった?

もっさ 意外でした! このアニメって、タブーとまでは言わないけど、恋愛関係において、よしとはされない内容を扱ってますよね。そこを全面的に取り上げるんじゃなくて、「この主人公、めっちゃ真面目だよな」というところにフォーカスしてたから(笑)。曲を作るうえでアニメの内容と自分の共感できる部分?をうまく見つけ出して、歌詞に嘘がなくていいなって思いました。

2番で“変なことする”アニメタイアップ曲

──この曲のデモはDTMで作ったんですか?

朝日 鼻歌からですね。ネクライトーキーはバンドですけど、その中でもよりバンドらしい曲にしたくて。俺はアニソンがけっこう好きで、バンドがもしアニメの曲をやるとしたら、すごくバンドらしいと思える曲が好きなんです。バンド以外で俺の好きなアニソンは、そのアニメのために作られた、商業作家の方がアニメのために書いた曲。じゃあバンドがアニメの曲を作るときの正しさってなんなんだろうと思ったとき、俺のすごく好きなバンドの中でアニメのタイアップを担当したのは、the pillowsとキャプテンストライダムなんです。the pillowsは言わずもがな「フリクリ」っていうアニメのタイアップをしていたんですが、アニメの映像がthe pillowsのミュージックビデオなんじゃないかくらいと思うくらいぴったりで。しかもテレビアニメであのロックなバンドサウンドが流れてきたときにすごくびっくりして。王道アニソンは別にして、バンドがバンド然とした音でタイアップソングを担当することも、すごく正しいアニメソングの役割だと思ったんですよね。

──「ふざけてないぜ」は、バスドラで始まり、続けてギターが入ってくるという、いかにもバンドであるとわかりやすいイントロですね。

朝日 そのあとのドラムのフレーズも、派手にシンバルを叩くのではなくて、低めの音をドンドンと鳴らすっていうのは、バンドがアニメの曲をやるときに俺が感じたドキドキを表現したものでもあって。鍵盤のメンバーもいるので、シンセがモリモリ鳴ってるアレンジももちろんやろうと思えばできたのかもしれないです。でも今回はこういうのを一番やりたかった。

──フルサイズだと2番以降、クセが強いですね。

朝日 いろいろありますけど、一番わかりやすいところは、2Aでもっさが「ここちょっと変なことしよう」って(笑)。

もっさ それはだいぶざっくりした説明(笑)。

朝日(G)

朝日 本当は「歌がない、演奏だけに集中できるパートでトリックをかけよう」みたいな構想があり。そのトリックも入ってるんですけど、思い切って歌の途中でもトリッキーなことをやろうと。ギターの自分がたぶん一番大変だろうに(笑)。

もっさ アニメタイアップの曲は当然アニメきっかけに聴く人が多いから、歌の1番、つまりアニメサイズばっかり聴きますよね。「アニメで曲を聴いて、めっちゃカッコいいと思ったのに、フルで聴いたときに後半が全然違うじゃん!みたいな体験をさせたくない?」って話さなかったっけ? それもあってのアレンジなので、ライブで演奏してもこの曲は2番になると空気感が変わるんやけど(笑)。

朝日 実は1番と2番以降で拍の表を変えてるんです。ライブで手拍子しながら聴いているといつのまにかひっくり返っちゃうという(笑)。

もっさ 実際、ライブだと「ふざけてないで 隣で聴いて 今はそんな流行り廃りのことなんて」という歌詞のあたりで拍が裏返るので、お客さんが「お?」って反応する(笑)。ギターリフがいいから、そこからなんかしたいねってレコーディング中に話した気がする。

朝日 ギターリフがシンプルな分、イタズラをしやすいリフだったからね。俺はその拍が裏返るところが一番好きなポイントかもしれない(笑)。

もっさ 私も気に入ってる(笑)。7/8拍子が急に入るっていう。

──意識せず聴いて自然に覚えたら違和感を感じないであろう絶妙なアレンジですね。

朝日 きっとそうなんだと思います。例えば聴いてくれた人がのちにバンドをやったりとかちょっと音楽に詳しくなったりして、そのとき「そういえばあれ変だったな」と思い返して聴くと「こういうことやってたのか!」みたいなことになるかもしれませんな。

もっさ 楽器に興味があるなら、コピーしてくれたらわかるかもね。

──そのリズムのトリックはデモ段階からあったんですか?

もっさ スタジオに入ってバンドでアレンジを固めているときですね。2番からやりたい放題になってる(笑)。

朝日 1コーラスのアニメサイズがすでにあって、それをフル尺にするときのプリプロをやっているときにみんなでアレンジしました。「ふざけてないぜ」なのにやりたい放題のアレンジでふざけてるという(笑)。

──朝日さんが作った楽曲をバンドでアレンジしていく中で「ここは変えたくない」ということもあるんですか?

朝日 そうですね。でもこの曲に関しては好きにしようと。サビのメロディをギターソロにしようって誰が言いだしたんだっけ?

もっさ 朝日さんがいろいろ弾いてるうちにサビのメロディを弾き出して、私はそれを聴いてなんだかテンションが上がっちゃって(笑)。そういうソロをこれまでやってなさすぎて、ちょっと恥ずかしいくらいに正統派なギターソロになるなって。

朝日 やっぱりWeezerを聴いて育ったんで、たまにはそういうソロもやろうかと。「どうせならツインリードにするか」という流れでクサいギターソロになりました(笑)。

──ツインリードは珍しいですよね?

もっさ ここまでコテコテのツインは初めてかもしれない。

朝日 でもほかのバンドよりはツインで弾いてる気がするんですよね。実はギターボーカルのもっさがいっぱいギターを弾いているので。

もっさ 「音楽が嫌いな女の子」も一応ツインだけど、「ふざけてないぜ」は“ザ・ギターソロ!”って感じが出ているからいい。

──「ふざけてないぜ」はギターソロも曲自体もキャッチーですが、プログレ感があるように思いました。

朝日 プログレですか? 俺は普段から聴く音楽に迷ったらYesのライブ盤かELP(Emerson, Lake and Palmer)のライブ盤を聴いてるんで、その片鱗が漏れ出てるのかもしれないですね(笑)。