デビューのタイミングですべて叶ってしまった
──念願だったデビューを飾る楽曲は、作曲家・澤野弘之さんが楽曲プロデュースを手がけた「pARTs」。放送中のテレビアニメ「境界戦機」第2部のエンディングテーマとして注目されている1曲ですね。
デビューが決まったことだけでもびっくりだったんですけど、それ以外の部分でもたくさんの夢を叶えさせていただくことができました。私はもともとアニメが好きなので、アニメのタイアップ曲を歌えたらいいなという思いがずっとあったんです。さらに、個人的に澤野弘之さんの大ファンで、ずっと楽曲を聴かせていただいていたんです。「いつか澤野さんに楽曲提供していただけるくらいのアーティストにならなきゃな」という夢もあって。それがデビューのタイミングですべて叶ってしまったことで、最高の喜びを味わいつつも、同時にプレッシャーと不安にも襲われることになっちゃいましたね(笑)。アーティストとしての初めの一歩として、改めて気持ちを引き締めて向き合わせていただきました。
──ちなみにアニメはどんな作品を好んで観ていたんですか?
子供の頃は「プリキュア」や「ケロロ軍曹」をよく観ていましたね。その後、中学1年生のときにどっぷりハマったのが「ギルティクラウン」でした。そこからいろんなアニメをより深く観るようになったし、アニソンにもハマるようになったんです。
──その流れで澤野さんの曲にも触れるようになったわけですか。
そうですね。「ギルティクラウン」の劇伴をやられていましたし、そのあとに好きになったアニメ「アルドノア・ゼロ」の楽曲も担当されていたので。最初はどなたが作っているのかを意識して聴いてはいなかったんですけど、祖父母の店のカラオケで好きな曲を歌っているとクレジットに澤野さんの名前がよく出てきていて。「あ、同じ方が作っているんだ!」と思い、澤野さんの曲をどんどん聴くようになっていったんです。
──澤野さんの楽曲のどんなところに惹かれますか?
どんな曲であっても、壮大で深みのある雰囲気を持っているところですね。聴いているだけでその世界にグッと引き込まれていく感覚になるし、自分が強くなったような気分にもなれるんですよ(笑)。そういったパワーを聴き手に与えてくれるところが、澤野さん楽曲の好きな部分です。幼い頃から聴いてきたJ-POPとはひと味違った雰囲気を持っているので、そこに引き込まれたところも大きかったと思います。
──澤野さんの曲は洋楽からの影響も大きいですからね。キャッチーさはありつつも、J-POPとはまた違った感触があるというか。
そうなんですよ! 私は洋楽をあまり深くは聴いてこなかったので、余計に澤野さんの楽曲にインパクトを受けたんだと思います。
聴いた瞬間、「あ、澤野さんだ!」
──Natumi.さんのデビュー曲「pARTs」も非常に澤野さんらしい仕上がりですよね。
聴いた瞬間、「あ、澤野さんだ!」って思いました(笑)。そのスケール感の大きなサウンドからは、アニメの映像がパッと浮かんでくる感覚もあって。「境界戦機」のエンディングにすごくふさわしい1曲だと思いました。ただ、いざ歌うという段階になると、すごく悩んだところもあって。私は今までカバー曲ばかりを歌ってきていて、自分のオリジナル曲を歌うのは今回が初めてだったんですよ。なので、どう歌うべきなのかをすごく迷ったんですよね。澤野さんが曲に込めてくださった思いに、どんな歌を乗せれば応えることができるんだろうって。自分らしさを大事にするべきだということはわかってはいるんですけど、表現に関してはすぐにイメージすることが難しかったんです。レコーディングまで何度も歌いながら、かなり試行錯誤を繰り返しました。
──結果としてたどり着いた表現はどんなものでしたか?
cAnON.さんが書いてくださった歌詞が抽象的で、私もいろいろな受け取り方をしていただけるような歌にしたいなと思いました。壮大な楽曲に合わせてきれいな歌声を乗せるのはもちろんですけど、単語ごとに異なる感情を込めてみたり、細かくテンション感を変えた声色を出すようにしてみました。落ちサビでふっと引き込まれるような歌い方を意識的にしてみたりもしましたね。
──レコーディングには澤野さんも立ち会ったそうですね。
はい。英語の発音を直してくれたり、「サビは強めのテンションで」みたいに細かい部分でのディレクションをしていただきました。自分にとって印象的だったのは低音の部分ですね。この曲には自分が出せるギリギリの低さのキーがあるんですよ。そこは自分にとってはなかなか大変なところではあったんですけど、「低音は息多めで歌ってみてください」と澤野さんがアドバイスしてくださって。今までそこまで歌声に息を乗せたことがなかったのでかなり新しい挑戦だったんですけど、仕上がったものを聴いたときにすごく素敵だなと自分でも思えましたね。
──Bメロではウィスパーっぽくなる箇所がありますよね。ディレクションされたのはそのあたりですか?
そうです。あとは曲の歌い出しやDメロの最後とかです。自分にとって新しい表現の発見にもつながったので、すごく心に残るディレクションでしたね。
──そういった新しい表現に難しさを感じるところはなかったですか?
すごく難しいです!(笑) 「pARTs」だけで歌うときは大丈夫なんですよ。でも、最近リリースイベントでほかの曲と一緒に歌う機会があって。ハードな曲のあとに「pARTs」を歌うと、繊細な表現がうまくできなくなってしまうことがあったりして。改めてその難しさが身に染みています。ただ、そういった部分も含め、「pARTs」は私自身と一緒にここからどんどん進化させていける楽曲だと思うので、それがすごく楽しみにもなりました。曲のタイトルのように、この曲は私自身の1つの“パーツ”になって、いろんな課題とともに成長するきっかけを与えてくれてるなとヒシヒシと感じます。
──デビューのタイミングで試練の曲を与えてくれた澤野さんには感謝ですね(笑)。
本当にそう思います! 現場で私はすごく緊張していたんですけど、いろんな雑談をして気持ちをほぐしてくださったりもして。すごく優しい方でしたね。
──澤野さんは楽曲の雰囲気と普段の気さくで明るいキャラクターのギャップに驚く人が多かったりもしますよね。
そうですね(笑)。でも私はもともと澤野さんのファンだったので、ライブのMCやインタビューで早口でしゃべることも知っていたんです。なので緊張はしましたけど、「私が知ってるそのままの澤野さんだー」と思っていました(笑)。現場は本当にいい雰囲気でしたね。
私のことをイメージしたラブソング
──シングルにはもう1曲、「Activation」も収録されています。こちらも澤野さんが作曲とプロデュースを手がけられています。
「pARTs」は「境界戦機」の世界観に寄り添った楽曲でしたけど、この「Activation」は私のことをイメージして作ってくださったそうで、それが本当にうれしかったです。こちらも作詞はcAnON.さん。好きな人に夢中になって周りが見えなくなるという内容が個人的にはすごく好きで。リズムやメロディラインの流れと相まって、すごく中毒性のあるラブソングになっていますね。
──こちらのボーカルレコーディングはいかがでした?
初めてすぎてテンパっていた「pARTs」を録ったあとだったので、こちらはちょっと余裕を持って臨むことができたと思います。自分としては感情を込めすぎないテンションで、カッコいいリズムをしっかり意識した歌を心がけましたね。英語の発音とかアクセントをつける場所とかでちょっとディレクションしていただきましたが、基本的には私の思うように歌わせていただくことができました。
──コーラスやフェイクがけっこうたっぷり入っていますよね。
そうですね。澤野さんにリクエストをいただきながらオクターブ下のハモやフェイクを録るのはすごく楽しかったです。ただ、これまではキー的に上ハモをつけることが多かったので、下ハモはけっこう苦戦して、ちょっとご迷惑をおかけしたところもあって。そういった部分では、この曲でもまた新しい引き出しを開けてもらえた気がします。
次の目標は武道館ワンマン
──まだ自分探しをしているとおっしゃっていましたが、1人のシンガーとしてここからどんなふうに歩んでいきたいですか?
思いを伝えるということを何より大事に活動していけたらと思っています。たくさんの方に私の歌を聴いていただき、その方たちの心を動かしていきたいですね。
──思いをダイレクトに届けるという意味ではライブ活動も大事になりそうですね。
はい。私が歌手になりたいと明確に思うようになったきっかけは、アクターズスクール時代に経験したソロステージでしたからね。ある意味、自分にとっての原点でもあるライブを通してNatumi.という存在を見せていきたい思いはやっぱり強いです。一歩ずつ着実にライブを重ねていきながら、大きなステージも目指していきたいです。まず最初の目標は日本武道館でのワンマン! それをクリアすることができたら、その先にある大きな会場も目指していきたいと思っています。これまでは歌うことにしか興味がなかったですけど、アーティストとしてデビューしたわけなので、これからは作詞にもチャレンジできたらという思いもあります。恐れずにいろんな挑戦をしていきたいですね。
プロフィール
Natumi.(ナツミ)
広島出身の歌手。幼少期から地元を中心にテレビやイベントに出演し、2020年に上京。アニメ「境界戦機」第2部のエンディングテーマに採用された、澤野弘之楽曲プロデュースによる「pARTs」で2022年6月1日にデビューを果たした。
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