「kidding」は完全に等身大の自分の歌
──そしてこのアルバムには、ナナヲさん作詞・作曲の「kidding」という新曲も収録されています。
キタニ まだ聴いたことなーい。
Neru・和田 俺もー。
──え、そうなんですか? ではお三方の感想は置いておいて、この曲では、ナナヲさんは声を張っていない。ウイスパーボイスに近いですよね?
ナナヲ まったく張ってないですね。このアルバムの中で唯一、弛緩してるみたいな曲なんですけど、自分としては、もう無理矢理ねじ込ませてもらったっていう感じの曲で。私はあまり自分に自信があるほうではないので、この「kidding」は「フライングベスト」に、つまり「ベスト」と豪語するアルバムの収録曲には値しないかもしれないって。でも、どうしても入れたかったんですよ、自分が作詞作曲した曲を。1stフルアルバムだからこそ、自分に自信を持たせる1つの手段として。あと、アルバムをつるっと聴いたときに、ナナヲの曲はずっと心をすり減らしてるじゃないですか。
一同 ははは(笑)。
ナナヲ しかも速いし。
和田 すいません。BPM220ですみません(笑)。
ナナヲ だから、ちょっと一休みできる曲がほしいなって。私自身もアルバムを聴くとき、いくら好きなアーティストさんでも1枚通して向き合うと疲れてしまうこともあるので、自分のアルバムでは真ん中に休憩所を作ろうっていう。そこから次の曲、デコ(DECO*27)さんが書き下ろしてくださった「妄想ハッピーエンド」につなげたらすごいカッコよかったんですよ。
──確かに「kidding」の抜いたボーカルとアコースティックなアレンジから、音圧もスピード感もハンパない「妄想ハッピーエンド」へのつなぎは、そのギャップも込みですごくいい流れですね。
ナナヲ ですよね。ありがとうございます。で、「kidding」っていう曲自体のテーマは「休日に死にたがってるナナヲアカリ」です。これはちょっと恥ずかしいぐらい、完全に等身大の自分の歌なんで。
──歌詞は基本的にネガティブなんですけど、最後にちょっとだけ前向きになっていますよね?
ナナヲ そう。これが唯一、「ナナヲアカリ」として活動し始めてから変わったことで。「ちょっと前を向かなきゃ」って思うようになったっていうのは、私の人生における大事件ですよ。それは、成長といってもいいのかもしれないです。
もっとナナヲアカリのことを知ってもらいたい
──そんなナナヲさんに対して、皆さんは今後どのような活躍を望みますか?
Neru アカリちゃんに限らず、僕は楽曲提供させていただく機会が年に何度かあるんですけど、そのたびに「自分は曲を提供することでそのアーティストさんに呪いをかけているんじゃないか」みたいな恐怖感を抱いているんですね。ある種、こちらが作ったイメージを背負わせることになるから、一歩間違えたら本人が望まない場所に誘導してしまうようなことが起こり得るんじゃないかって。もちろんそうならないように気を付けるんですけど、だからさっきアカリちゃんが自分で書いた曲を、本人が望んでアルバムに入れてくれてるって聞いて僕はすごく安心したんですよ。そういう欲をどんどん出して「自分の居場所を自分で獲得してほしい。僕たちの呪いに負けないでほしい」という気持ちが今は強いです。
ナナヲ いいこと言うなー。
和田 僕は最初、むしろ「呪いをかけてやんぞ」と思ってたんですけど、さっきも話に出た通り完全にアカリちゃんの曲になってるんですよね。いわゆる歌い手さんって既存の曲を、特にボカロ曲をカバーしたりするじゃないですか。それっていわば他人の世界を歌うことでもあって。もちろんアカリちゃんの場合は書き下ろしだからナナヲアカリに沿った曲ではあるんですけど、手法的には歌い手のそれと同じなんです。だからNeruさんが言う「呪い」の話もわかるんですけど、アカリちゃんはその呪いを食って取り込んでる感じがするんで、僕の場合は「俺の呪いを食えないようじゃ、もうどうしようもないぞ」くらいの気持ちですね。
キタニ 僕は、アカリさんと同じ劣等感を共有している部分があるので。
一同 ははは(笑)。
ナナヲ なぜか、そう(笑)。
キタニ 普段考えてることも似てるし、歌詞にしても、僕のありのままを書いてもたぶんナナヲアカリの歌として嘘偽りないものになると言うか、そこに齟齬は生じないと思うんです。だから僕の曲に関しては「呪い」になったりしないだろうなと、勝手に思ってます。
──ナナヲさんとしては、この1stフルアルバムリリース後の展望はありますか?
ナナヲ まだパッと明確な答えが出せないところではあるんですけど、とにかく今やってることの規模感をどんどん大きくしていきたいです。そうすることで「怠惰な自分を変えたいし、ちょっとはかんばりたい。でもやっぱりダメでした」みたいな劣等感を抱いているような子たちが救われるって言うか、その居場所がどんどん広がっていくかもしれないじゃないですか。私自身、特に中学生ブランディングをミスした時期はいろんな曲に救われたので……まあ、自分が助けられたから今度は自分が誰かを助ける側に回りたいってありがちな話なんですけど、それはもう音楽を始めたときから思ってて。その規模を大きくするためにも、もっとナナヲアカリのことをみんなに知ってもらいたいです。
- ダダダダ天使 ライブなどで“ナナヲアカリの自己紹介ソング”としている楽曲。この曲がきっかけで自身をダメ天使と名乗るようにもなり、多くの人からもまたそう呼ばれるようになりました。皆と私をまず始めに強く繋いでくれた曲だと思います。「やんないんじゃない、できないんだ!」を大声で言える世界があれば大変そうだけど素敵だよなぁ。
- ハッピーになりたい ナナヲアカリのインディーズデビュー曲となった楽曲。中学生の頃からいま現在までも大好きで止まないNeruさん書き下ろしの“ナナヲアカリのOP”。この曲によって自分の世界観の方向が決まったと言っても過言ではなく、ナナヲ自身の人生の命題としても「しあわせになりたい」を掲げています。
- マンネリライフ たくさん共感されたーい!! と思う感動恐怖症怠惰ガールのノリノリアッパーチューン。和田たけあき(くらげP)節が炸裂されています。ライブ内ではコールアンドレスポンスがとっても楽しい楽曲です。ナナヲのいちばんのお気に入りは「\たぶん午前か午後6時!/」という圧倒的に適当なフレーズ。
- ハノ この曲は私のとある忘れられない人とのとある冬の日の朝のお話をバルーンさんに一から十まで聴いてもらい書き下ろして頂いた曲です。どうしようもない距離感、心と空間が繊細に表現されていていつ歌ってもあの日のことを思い出してしまいます。笑 切なくて壊れそうな恋をしている人には是非聴いてもらいたいな。
- 眠らない街、眠りたい僕 上京してきて何もうまくいかずくすぶり散らかしていた時期に書いた詞。生きてれば誰しも時々なにも信じたくなくなって期待だってできなくなって強烈な疑心暗鬼に陥ることがあると思う。夜の街を歩きながら聞いてもらいたい。“かっこいいおしゃれなナナヲアカリが聴きたい”と曲を書いてくれたキタニタツヤに盛大にありがとう。
- お釈迦になる Neruさん曰くこれは“ナナヲアカリのEDテーマ”。攻め攻め不謹慎な歌詞にキャッチーすぎるメロが乗っているどう考えてもカオスなこの楽曲は聴けば聴くほど、歌えば歌うほどどハマりしていってしまいます。MVもこの世界観をどう表現したら的確に伝わるかなぁと制作陣と共にかなりこだわりを持って作ったので是非見ていただきたい。 もうみんな“お釈迦になる”をオーバードーズしてほしい。
- なんとかなるくない? 昨年のライブでショウさんとコウキさんと交流が生まれたことがきっかけで実現したこの楽曲。「私だけの脳内パーティー」ということをテーマにナナヲが小説の冒頭のようなメモをお渡ししたものをもとに書き下ろしていただきました。OKAMOTO'Sならではのパーティーロックと陰のある歌詞のコントラストが本当にお気に入り。たのしい。
- kidding 部屋から最初から最後まで出ない曲、でも最後の方でちょっと部屋の外に出そう。 ユラユラ、ふわふわ、部屋で漂いながらダメになってしまった自分とちょっと向き合えますように。このアルバムの中にあるからこそ発揮されているこの曲の特殊な感覚を味わってもらえればと思います。
- 妄想ハッピーエンド このアルバム内では1番激しいサウンドの楽曲。DECOさんのワードセンスが随所に光っておりセクションごとの緩急の激しさが歌っていてとても楽しくお気に入り。ギリギリのところで保たれているような、ヒリヒリとした感情が伝わればいいなと思いながらレコーディングに臨みました。
- ワンルームシュガーライフ メジャーデビューシングルでもあるこの曲は、主題歌を担当させていただいた“ハッピーシュガーライフ”の曲ではもちろんありながらも圧倒的に“ナナヲアカリ”の曲でありたいと強く思いながらナユタンさんと制作させていただきました。とにかく悩みに悩み抜いた、歌詞! 笑笑 聞くたびにたくさん発見がある、そんな歌だとおもいます。
- 一生奇跡に縋ってろ ナナヲアカリはポップに生きているけれども、突然シリアスになることがあります。Neruさんに書き下ろして頂いたこの曲を私はその内の“怒り”の曲だと思っています。綺麗事やぬるいことを抜かして誤魔化していきている人々、自分へのもどかしさetc... 3:25の中に詰めに詰め込まれた思考を受け取ってもらえますよう。
- ひとりごと なにもしたくない出来ない頑張りたくない、このまま学校や仕事を休んでしまいたい… そんな時のあなたにふんわりと寄り添って休ませてあげられてしまうような、そんな歌です。 はるまきくんのエモエモシューゲイザーが爆発しています。頑張ったあとの虚無の時間に聴くと泣いてしまうかもしれない…
- インスタントヘヴン feat. Eve ナユタン節がまたも強烈に炸裂してるこの曲は今話題の“Instagram”をテーマに、人と「『♡』(いいね)」の繋がりやその中に隠された本当のことを歌っていてキャッチーだけども密かに社会派(!?)なソングです。初のコラボ歌唱ということでどういった仕上がりになるのかなぁとドキドキだったのだけれど最高な感じになってしまいましたね。いいね!
- んなわけないけど 私の神様ことDECO*27さんに初めて書き下ろして頂いた楽曲。ナナヲアカリが普段絶対に歌わないようなことをあえてサビで歌い上げて“んなわけないけど”でなかったことにしてしまうという粋すぎる展開に、初めてデモを聴いた時には変な奇声を発したことを覚えています。ライブでも外せないナンバーになってます。BPMがすごい。
- メルヘル小惑星 この曲がアルバムの最後になった一番の理由は2018年3月5日の渋谷WWWでのアンコールです。自身のライブ史上あんなにみんなと一体になれた瞬間はない!と思えるような時間をこの曲で体感してから、ベストを作るときはもうこの曲を絶対最後に持ってこようと決めていました。だから私はこの曲で“あなた”のことを想って歌っているのです。
- ナナヲアカリ「フライングベスト~知らないの?巷で噂のダメ天使~」
- 2018年10月3日発売 / Sony Music Associated Records
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初回生産限定盤A [CD+DVD]
3780円 / AICL-3555~6 -
初回生産限定盤B [CD+DVD]
3456円 / AICL-3557~8 -
通常盤 [CD]
2970円 / AICL-3559
- CD収録曲
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- ダダダダ天使
- ハッピーになりたい(2018ver.)
- マンネリライフ
- ハノ
- 眠らない街、眠りたい僕
- お釈迦になる
- なんとかなるくない?
- kidding
- 妄想ハッピーエンド
- ワンルームシュガーライフ
- 一生奇跡に縋ってろ
- ひとりごと
- インスタントヘヴン feat. Eve
- んなわけないけど
- メルヘル小惑星
- 初回生産限定盤A DVD収録内容
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ナナヲアカリはじめてのとうめいはん「♡(いいね)」収穫ツアー@渋谷WWW 2018.3.5
- ドッペルアリー
- んなわけないけど
- ハッピーになりたい
- 一生奇跡に縋ってろ
- 東京秒針
- ハノ
- Yunomi×ナナヲアカリ Special Mix(キラキラキライ / マンネリライフ / 事象と空想 / オバケのウケねらい)
- プラネタリー・メッセージ
- ギヴミー「♡(いいね)」!!ドル活☆DAYS
- 私の中の痛い子さん
- ダダダダ天使
- インスタントヘヴン feat. Eve
- メルヘル小惑星
- ビビっちゃいない
- 初回限定盤B DVD収録内容
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MUSIC VIDEO
- ハッピーになりたい
- ビビっちゃいない
- ディスコミュ星人
- マンネリライフ
- 私の中の痛い子さん
- 一生奇跡に縋ってろ
- ダダダダ天使
- んなわけないけど
- メルヘル小惑星
- ドッペルアリー
- インスタントヘヴン feat. Eve
- ワンルームシュガーライフ
- ツアー情報
ナナヲアカリフライングツアー ~こんにちは!巷で噂のダメ天使~ -
- 2018年10月26日(金) 広島県 HIROSHIMA 4.14
- 2018年10月28日(日) 福岡県 INSA
- 2018年11月4日(日) 大阪府 心斎橋FANJ
- 2018年11月8日(木) 東京都 WWW
- 2018年11月23日(金・祝) 愛知県 ell.SIZE
- ナナヲアカリ
- 2016年にニコニコ動画でNeruの作詞作曲による「ハッピーになりたい」を発表し、現在の名義での音楽活動をスタート。同年9月には東京・原宿の古着店「Business As Usual」にて通販限定、CD付きの“1stTシャツ”「しあわせになりたい」を発売した。2018年8月にテレビアニメ「ハッピーシュガーライフ」のオープニングテーマを含むシングル「ワンルームシュガーライフ / なんとかなるくない? / 愛の歌なんて」でメジャーデビュー。同年10月に1stフルアルバム「フライングベスト~知らないの?巷で噂のダメ天使~」をリリースした。これまでに動画投稿サイトで公開した映像の再生回数は累計3000万再生を突破している。また2016年1月からはテレビ東京系「ロック兄弟」のMCを務め、2017年上演の舞台「Fate/Grand Order THE STAGE -神聖円卓領域 キャメロット-」ではマシュ・キリエライト役を演じるなど、音楽活動以外にも活躍の場を広げている。
- Neru「CYNICISM」
- 2018年3月28日発売 / NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
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初回限定盤 [CD2枚組+DVD]
3240円 / GNCL-1277 -
通常盤 [CD]
2160円 / GNCL-1278
- Neru(ネル)
- Vocaloidプロデューサー。2009年に作曲活動を開始し、2011年、18歳のときにニコニコ動画に投稿した「アブストラクト・ナンセンス」「東京テディベア」が瞬く間に人気を集める。主に鏡音リン・レンを用いて楽曲制作をしており、「ロストワンの号哭」「命のユースティティア」など100万回以上の再生数を誇る楽曲を多数投稿してきた。2013年3月には初の全国流通アルバム「世界征服」を、2015年9月にはフルアルバム「マイネームイズラヴソング」を発表。2018年3月には「脱法ロック」「病名は愛だった」といった人気曲を収録したフルアルバム「CYNICISM」をリリースした。
- 和田たけあき「かおなしスタンプ」
- 2018年9月26日発売 / U&R records
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[CD]
1620円 / DUED-1253
- 和田たけあき(ワダタケアキ)
- 初音ミクを使用したVocaloid楽曲「くらげ」を2010年4月にニコニコ動画に投稿して以降、「くらげP」「和田たけあき(くらげP)」といった名義でオリジナル曲を発表し続ける。またギタリストとして古川本舗やこゑだなど、さまざまなアーティストのライブやレコーディングに参加。2016年2月に公開した楽曲「チュルリラ・チュルリラ・ダッダッダ!」はYouTubeで1千万再生を突破している。2018年3月にはVocaloid曲で構成されたオリジナルアルバム「わたしの未成年観測」を、9月にはセルフボーカルアルバム「かおなしスタンプ」をリリースした。
- キタニタツヤ「I DO (NOT) LOVE YOU.」
- 2018年9月26日発売 / Emo, Alternative & Cool.
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[CD]
2300円 / EAC-0004
- キタニタツヤ
- 2014年5月に「こんにちは谷田さん」名義でニコニコ動画にVocaloid楽曲「鯨と水星」を投稿し、音楽活動を開始。以降多数の楽曲を発表して注目を集めている。キタニタツヤ名義でもベーシストや作曲家、編曲家として活躍しており、2018年からはバンド形式でのライブ活動も開始。同年9月に初の全国流通盤となる1stアルバム「I DO (NOT) LOVE YOU.」をリリースした。