音楽ナタリー Power Push - ななみ×吉田尚記

対談&ソロインタビューで浮き彫りになる“歌うたい”の本質

ななみ ソロインタビュー

“愛よりも恋”が悔しい

──10月でななみさんはメジャーデビュー1周年を迎えました。CDリリースもライブも盛りだくさんな濃い1年だったのではないですか?

ななみ

ものすごく濃かったです。なんか、気持ちが自衛隊でした。人生においての訓練をしてるような。

──つらかったということですか?

つらかったけど楽しいこともあって。悔しいこともあったし。いろんな思いが人生で一番なだれ込んできた1年でした。

──悔しさを感じることもあったんですね。

思い通りにならないことも多いですから。曲ができなかったり、思い通りに歌えないこともありますし。それと自分より活躍してる仲間たちを見ると、いろいろ思うところがあって。例えば「恋」について歌ってる子の気持ちもすごくわかるけど、私は「愛」を歌ってるから、そこにいけないのが悔しかったり。正直、若い子は愛よりも恋だと思うから、私の歌う愛に共感を得てもらえないところで悔しい思いをすることはありますね。

壮大なテーマに合ったアレンジに

──資料には今作「Lovin' you あなたと繋がる6つの方法」は、ななみさんの“第2章の幕開け”と書かれています。音源を聴かせていただいて、自分の経験や感情がベースにあったこれまでの楽曲と違い、今作の曲は聴き手をより意識した曲が並んでいる印象でした。作品のタイトルにも「あなたと繋がる6つの方法」とありますし。

大当たりです(笑)。1年前は「自分が救われたい」っていう感情がすごくあったけど、今はそれよりも「救いたい」って思っているので。それが曲にも表れてるのかなって。でも「Lovin' you」は中学3年のときに作った曲なんです。

──中学生が作る曲にしては大人びた曲だと思います。

「I Love You」って気持ちはそれこそ中学生から大人までたぶん誰でも持ってると思うんです。だから「Lovin' you」はいい意味でわかりやすい曲。私がいつも言っている「愛」を解釈するのは大変かもしれないけど、「I Love You」って言うと理解してもらえる。そのわかりやすさもあってリード曲になっています。

──大人っぽいと感じたのはアレンジが豪華だったことにも理由があって。ストリングスやホーンの音も盛り込まれて音数が増えましたよね?

アルバムで1回お世話になった寺嶋(民哉)さんにアレンジをお願いしていたりもしていたので、「ああしたい、こうしたい」っていうのがどんどん言えて、私の理想の作り方ができたと思います。私の曲は壮大なことを歌うことが多いから、それを表現するために音数をどうするかっていうのはすごく考えましたね。

──サウンド面で言えば、ピアノの音を全面に押し出した曲が多いことも印象的でした。これまでのななみさんはギターがメインという印象が強かったので。

私のしたいことに寄り添った結果のアレンジだったり、音数だったりするんですけど、弾き語りで演奏するときとコードが全然違うのが困りもので(笑)。アレンジャーさんがおしゃれなコードを付けてくれるんですけど、それがいいときもあれば悪いときもあって。私が弾けないコードとかが出てきたら、「できません!」って言うようにしてますね。

──デビュー時のインタビュー(参照:ななみ「愛が叫んでる」インタビュー)で「ギターが大嫌い」「ホントに苦手」とおっしゃってましたが、それは1年経っても変わってない?

もう「別に下手だし」っていうくらいの気持ちでやってます(笑)。多分たぶんこの先もギターが苦手なのは変わらないけど、50歳くらいになって「ようやく好きになった」みたいに言えたらいいなと思っています。

時代に勝てるやり方を

──吉田アナとの対談ではストリートライブについての話をいろいろされていましたが、ミニアルバムリリース後には各地でワンマンツアー「あなたが、生きますように。」の開催も決定しています。東京公演では品川にあるキリスト品川教会グローリア・チャペルでライブをするんですよね?

教会って無宗教の人が多い日本人にとっては身近ではないと思うんです。だからその分ちょっと緊張してくる人が多いんじゃないかなって思っていて。それを和らげてあげたいと思う一方で、そういう緊張感があるほうがじっくり私の曲に耳を傾けてもらえて、私の歌う「愛」が伝わりやすいんじゃないかなって期待もあるんです。いつも以上に歌が届くライブになる気がしているので楽しみですね。

──メジャーでのアーティスト活動も2年目に突入しましたが、今後どういう展開を考えていますか?

やっぱり前に進んでいきたいっていうのと、より多くの人に歌を届けたいっていう思いは変わらず持ち続けていきたいですね。「前に進む」といってもアーティストとしてだけじゃなくて、人間として前に進んでいきたい、そのためにストリートもワンマンも1回1回のライブを大事にしていきたいですね。

──一番大事にしたいものはライブですか?

そうですね。今は楽曲が簡単にダウンロードできちゃうし、YouTubeですぐ再生もできる。でもライブはコピーできないものだし、映像で観るものでもないと思うから。実際に会場に来てもらって、リアルな私の歌を聴いてほしいって思いは強いですね。

──過去3回のインタビューでは、目標を聞くと「世界を変えたい」と毎回おっしゃってましたが……。

それは変わってないです! もう当たり前すぎて言わなかっただけですよ(笑)。

──それはよかった(笑)。1年経ってみて変わったもの、変わらなかったものが実感としてあると思うんです。それらを踏まえてこれからななみさんが変えたい世界ってどういうものですか?

1年前は「世界を変えたい」っていう言葉が大きすぎて、たぶん何をするかってことまではわかってなかったんです。だけど今は、世界を変えるためにまず何をするかを考えられるようになってきました。世界ってどれぐらい広いものなのか、自分が変えたい世界はなんなのかっていうことも考えてるし。とりあえず今は自分に集まってくれる人を変えて、幸せにして、それを膨らませて世界につなげていきたいなって思うんです。

──そのためにライブにも力を入れたいと。

やっぱり私は歌いたいんですよね。吉田さんの番組に出たときも、アーティストってやっぱり歌う人間だからしゃべってもしょうがないかなって思って。CDかけることもできるけど、それだったら自分で演奏して歌ったほうが伝わるかなというか、リアルじゃないですか。最近はそうやって本物を伝えようって人が少ないから、私は逆にギター1本で出て行って自分で歌ったほうが時代に勝てる気がしてるんです。

ななみ 2015 tour “あなたが、生きますように。”
2015年11月14日(土)
福岡県 イムズホール
2015年11月27日(金)
東京都 キリスト品川教会 グローリア・チャペル
2015年11月29日(日)
大阪府 Music Club JANUS
ななみ

ななみ

1993年、大分県生まれ。学生時代から地元大分でライブの経験を積み、2013年1月に行われたヤマハグループ主催のコンテスト「The 6th Music Revolution JAPAN FINAL」でグランプリを受賞。NHK大分放送局のノンフィクション番組「ドキュメント 桃」の主題歌として書き下ろし曲「桜」がオンエアされるなど、大分で大きな注目を集めた。グランプリ受賞後は、全国22カ所を1人で回る弾き語りツアーを行い、着実にその知名度を上げていく。2014年10月、自身が“暗黒時代”と呼ぶ学生の頃の経験をモチーフにした楽曲「愛が叫んでる」をシングルリリースし、日本クラウンとヤマハが合同で設立したe-stretch RECORDSよりメジャーデビュー。2015年5月に1stアルバム「ななみ」を発表し、全国で73回のストリートライブを実施するツアー「~73 Street Mission 2015~」を成功させた。さらに同年11月、ミニアルバム「Lovin' you あなたと繋がる6つの方法」をリリース発表した。