My Hair is Badが12月23日にCDシングル「life」と配信シングル「love」を同時リリースした。音楽ナタリーではこれを記念して、椎木知仁(G, Vo)自らの希望を受け、表現者としても制作者としても尊敬しているという九条ジョー(コウテイ)との対談をセッティング。2人は以前より連絡を取り合っていたそうだが、九条が関西にいるためなかなか実際に顔を合わせる機会がなく、この日が念願の初対面となった。
対談は終始お互いへのリスペクトにあふれ、帰り際には「M-1グランプリ」敗者復活戦を控えた九条に椎木がお守りを渡す場面もあった。共鳴し合う2人の初対談をぜひ楽しんでほしい。
取材・文 / 阿刀“DA”大志 撮影 / 藤川正典
追いかけないといけない
──インタビュー前に行った写真撮影中、九条さんは椎木さんに「普段見てる顔と違うなあ」とおっしゃっていましたね。
九条ジョー(コウテイ) YouTubeに上がってる動画で見る感じと普段の人柄が違ったので、いいギャップだなあと。バンドマンって尖ってる方が多いイメージなんですけど、椎木さんは実際にお会いしてみると柔らかい雰囲気もある人だなと思いました。
──でも、芸人さんも尖ったイメージがあるような気がしていて。
椎木知仁(My Hair is Bad) そうですね。特に九条さんからはこだわりの強さのような“尖り”を感じます。
九条 そのとおりだと思います。
──お二人は初対面だそうですね。
九条 直接お会いするのは今日が初めてですけど、連絡は取り合っていました。僕が定期的にやってるライブを椎木さんが観に来てくださって、インスタで「ありがとうございます」とDMを送ったのがきっかけですね。
──九条さんはマイヘアの存在は知っていたんですか?
九条 もちろん! めちゃくちゃ知ってます。昔からマイヘアさんの音楽聴いてますし、YouTubeのチャンネル登録もしてます。
──自分の好きなアーティストがライブを観に来てくれるなんてたまらないですね。
九条 いやあ、本当にびっくりしました。以前、椎木さんがミキさんの単独ライブを観に行っているのをSNSで見ていたので、お笑いが好きなんだなという印象はずっとあったんですけど、まさか自分の単独ライブに来ていただけるとは思っていなかったので。僕の考えているお笑いがこんなにすごい方に刺さってるということが自信になりましたね。僕自身はまだマイヘアさんのライブに行けたことがないんです。生に勝てるものはないし、ライブはもっとすごいんだろうなと思うので、早く行ってみたいです。
──コウテイのどんなところが椎木さんに刺さったんですか?
椎木 コウテイの漫才は2、3年前に何かのきっかけで観たことがあったんですけど、僕の友達に芸人さんのネタの真似をして笑わせてくれるバンドマンがいて、その彼が去年の暮れぐらいからずっとコウテイのモノマネをしていたんです。
九条 ええー!
椎木 そのモノマネでものすごく笑って、SNSを見てみようと思って九条さんのアカウントにたどり着いて。そこで九条さんの言葉や自分の見せ方に触れたときに、「こんなに脳みそが柔らかい人があのネタを作ってるのか。これはきちんと追いかけないといけない」と思って、ここ1年ぐらいずっと見させてもらってます。
九条 めちゃめちゃうれしいです。これはヤバいわ。
──テレビやYouTubeで満足するわけではないんですね。
椎木 お笑いを劇場で観るようになったのはミキさんを生で一度観てみたいと思ったことがきっかけで、それからいろんなところへ観に行くようになったんです。生のお笑いの現場ってテレビやYouTubeとは別物で、コウテイも間違いなく生で観ないといけないと思って。実際に観て圧倒されたし、めちゃくちゃ笑ったし、そうなるとさらに一言一句聞き逃がせないというか、もっとテレビで見られないところを見てみたいという気持ちになって劇場に通っています。
九条 椎木さんもライブを一番大事にされているというイメージがずっとあったので、そういう共通の思いがお互いを引き寄せたのかもしれない。やっぱりお笑いは生で観るに限りますよね。テレビだと、テレビ局の方から「これをやってくれ」と言われて、自分たちがやったものを好きなように編集されてしまうんです。しかも、僕にしてみれば“過去の自分がやったこと”をうまく編集したものなんてほぼ嘘というか。僕は劇場に生きているそのままの自分が5分間で見せるものを大事にしていきたいし、椎木さんはそのことをわかってくださってるのでめちゃくちゃうれしいです。
──今日、椎木さんの口から出る言葉は、九条さんにとって全部うれしいものになるでしょうね(笑)。
九条 僕もレコーダー回したいくらいですよ! まさかこんなにうれしいことを言っていただけるとは。
2回の解散を経て……
──コウテイは、以前はなかなか東京に来る機会がありませんでしたよね。
九条 そうですね。今年「ABCお笑いグランプリ」で優勝してからちょっとずつ呼んでいただけるようになったんですけど、大阪の劇場にほぼ毎日出演してるので、東京に滞在する時間があんまりないという。早く東京にも進出したいですね。東京に来たら、椎木さんと一緒に住みたいです。
椎木 あはは(笑)。
九条 「ああ、こんな感じで曲作ってるんやあ」って眺めていたい……曲って1人で作られてるんですか?
椎木 最初のデモは1人だけど、最終的には3人で作ってます。
九条 地元の友達とバンド組んだんですよね? ツレと金稼ぎしてるなんて、そんなん最高じゃないですか! めちゃくちゃうらやましいです。僕はNSCで出会った相方とやってるので、今ようやくちょっとずつお互いのことをわかり合ってきてる状態というか。マイヘアさんはライブ映像を観ると3人が楽しそうに演奏している感じが伝わってきますし、そこがいいですよね。
椎木 でも、僕らもきっちりピリピリしますよ(笑)。
九条 えっ、そうなんですか?
椎木 ものを作ってるときってそうなりませんか?
九条 わかります。創作活動に苛立ちは付きものですもんね。
椎木 ネタ作りでお互いの100%がぶつかり合ったときはどうしてるんですか?
九条 相方が折れてくれます。僕がブレーンとしてやってるんで、「そこまで言うんやったらお前のでいこう」という歩み寄り方をしてくれます。昔はそれで何度も喧嘩してたんですけど、最近はちょっとずつよくなってる感じですね。
──コウテイは“仲が悪い芸人”として知られていますよね。
九条 そうですね。それを話のネタにして最初にテレビに出ちゃったので、そういう印象が強くなっちゃってるんですけど、今は全然そんなことはなくて。僕らはこれまでに2回解散しましたけど、今はこの相方とじゃないと笑いは取れないということがわかってますし、着実に結果を出せているので、仲いいとまではいかなくてもいい付き合いができる相方になってると思います。
椎木 九条さんはもちろん、下田(真生)さんも信じられないぐらい面白いですよね。
九条 ホンマにすごい顔圧というか。「絶対に笑わしたんねん!」という気持ちが強い、根っからのパフォーマーです。
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ゾクゾクするような“尖り”