音楽ナタリー PowerPush - オーディオテクニカ「ATH-MSR7」

国産ブランド40年の集大成 ATH-MSR7をDE DE MOUSEがチェック

オーディオテクニカが新モデルのヘッドホンATH-MSR7をリリースした。

ターンテーブル用カートリッジの販売から歩みを始め、現在では良質なヘッドホンやマイクで世界的なシェアを誇るオーディオテクニカ。今年ヘッドホン事業40周年を迎えた同社が満を持して送り出すATH-MSR7は、ハイレゾ音源のリスニングにも対応するモデルだ。

今回ナタリーでは、DE DE MOUSEの言葉から本機の実力を探っていく。

取材・文 / 加藤一陽 撮影 / 小原啓樹

“録音の奥”がわかる

──今回はDE DE MOUSEさんにATH-MSR7で好きな音楽をリスニングしてきてもらいました。

デリック・メイのトラックを聴いていたら、オープンリールレコーディングで以前録音した音が消え切っていなかったのか、前の録音の残りの音や“サー”っていうヒスノイズまでけっこう聞こえて驚きましたね。それって普段制作用に使っているヘッドホンで聴いていたときは意識しなかった音でした。あと、そのテープヒスがキックのタイミングでコンプレッションされて聞こえなくなったり……そういう“録音の奥”みたいな部分までわかって面白かったです。

──聴く部分が細かいですね(笑)。

DE DE MOUSE

そもそも作り手なので、どうしてもそういう部分まで聴いてしまうんですよね。あと、今回このヘッドホンを試すにあたって「リスニング用のヘッドホンってどういうものがいいんだろう」っていろいろ考えてみたんですけど、ヘッドホンって外で音楽を聴くときに使う人が多いじゃないですか。街でもヘッドホンやイヤホンを付けている人もいっぱいいるし。

──はい。

そう考えると、騒音の中でも聴きやすいものがいいんじゃないかって思って。ATH-MSR7は遮音性に優れているから、街の中とか騒音が多いところで聴くのにもいいでしょうね。あまり遮音性に優れたヘッドホンを外で使うと危ないっていうのはあるけど(笑)。

──音楽に集中しすぎてしまいますからね。では、サウンドはいかがでしたか?

さっきのテープヒスの話にもつながるのかもしれませんが、すべての音が立ってくるような感じ。小さな音からローエンドまで各パートが主張してくるというか、それぞれの音をしっかりと聴くことができます。自分が作った曲を聴いて、忘れていた音が聞こえてくるくらい……(笑)。トラックメイクをしているときのチェック用としても便利だなあと思いましたね。

──それは面白いですね。

あと、ATH-MSR7は中高域にツヤがあります。出力が大きいので音が太い。存在感があるというか……だからすべての音がしっかりと聞こえるのかもしれませんね。

音作りの参考になるほど魅力的な音

──ATH-MSR7でリスニングするのに向いているジャンルは?

ポップスもダンスミュージックもジャズもキャッチーに聴けました。僕らが普段制作で使っているモニター用のヘッドホンと違って、リスニング用のヘッドホンって楽しく聴けるのが一番いいと思うんです。そう考えるとこのヘッドホンはジャストじゃないかって……とにかく豪華なサウンドで楽しく音楽が聴けるんです。

──派手ということですか。

というより、ローエンドも中高域もしっかり出てる。だから豪華に感じるのかもしれません。個人的にはダンスミュージックが特に魅力的に聞こえました。制作時にモニターとこのヘッドホンを聴き比べて「どうやったら魅力的な音になるんだろう」って研究するのもいいかもしれませんね。制作者的な考え方ですけど。

──なるほど、そういう使い方もあるんですね。

DE DE MOUSE

あと、一般的にはパソコンのスピーカーで音楽を聴いているって人も多いと思うんですけど、例えばダブなんかをパソコンのスピーカーで聴いてもあの低域の気持ちよさはわかりません。スネアの「カン!」って音しか聞こえない、みたいな。そういう環境で音楽を聴いている人がATH-MSR7を使ったら、別の音楽の楽しみ方に気付くんじゃないかな。今まで聞こえなかったものが聞こえるから。

──確かに、そういった発見は面白いですよね。

個人的にはDJプレイ時のモニターにも使えるなと思いましたね。DJするときって、モニターの音の抜けがよくないと混ざったときに聴きづらいんです。ATH-MSR7は遮音性もあるし、ダイナミックだし、中高域にツヤがあるから抜けてくるんですよ。

──ちなみに、ATH-MSR7はハイレゾ音源のリスニングに対応しています。DE DE MOUSEさんは昨今のハイレゾ音源ブームについて、どう考えていますか?

作り手として、ハイレゾ音源っていうアウトプットの選択肢があるのはうれしいですよね。僕はMIDIの打ち込み主体で制作をしていて、自分のトラックを48kHz / 32bitのハイレゾクオリティで作っているんですけど、打ち込みよりも生楽器をレコーディングするような音楽のほうがハイレートのレコーディングの魅力がより生きてくると思います。そういったレコーディング時の空気感まで収めて感覚に訴えかけるような音源だったら、ハイレゾで聴くとより楽しめると思います。

──なるほど。

でも、まだ一般の人って、ハイレゾ音源の魅力をちゃんと味わえる環境でリスニングしていないと思うんですよ。ヘッドホンにしても、スピーカーにしても。たとえそういう環境が整っていても、人によっては何度も聴き比べないとその差なんてわからなかったりする。でもATH-MSR7があれば、周波数特性的にもハイレゾ音源のポテンシャルを引き出すことができるし、「あー、違うな」っていうのを感じてもらえると思いますよ。

──ハイレゾのよさが手軽に味わえる。

はい。高音質音源は何が違うのかってことを手軽に体感するのには、すごくいいと思いますよ。ダイナミクスも感じられるから、生楽器のアンサンブルのダイナミズムみたいなものも味わえると思うし。

オーディオテクニカ「ATH-MSR7」
オーディオテクニカ「ATH-MSR7」製品写真

φ45mmの新型ドライバー“トゥルー・モーション”ハイレゾオーディオドライバーを搭載し、ハイレゾクオリティの音源の再生にも対応したモデル。音響効果の高い積層構造と、音の空気経路を緻密に計算した独自技術により原音を忠実に再生する。

価格:オープンプライス
形式:密閉ダイナミック型
周波数特性:5Hz~40kHz
最大音圧レベル:100dB / mW
最大入力:2000mW
インピーダンス:35Ω(@1kHz)
ドライバーユニット:φ45mm
ケーブル:片出し / 着脱式
重量:約290g(ケーブル除く)
カラーバリエーション:2色(ブラック、ガンメタリック)※レッド&ゴールドの限定カラーATH-MSRLTDは全世界4000基限定販売

DE DE MOUSE USBアルバム「planet to planet」 / not records / 2500円
「planet to planet」USBカード
収録曲
  1. runaway man theme
  2. route 0 to 0
  3. one-way ticket
  4. weather search
  5. program run error
  6. brass power
  7. forget dance
  8. railway night
  9. blue voice
  10. planet to planet
  11. from milkyway planet
  12. firework girl(remix)

※12月21日に特典映像「a backstage of planet to planet」をストリーミング公開予定

DE DE MOUSE(デデマウス)
DE DE MOUSE

遠藤大介によるソロユニット。緻密に重ねられたオリエンタルなメロディとドリーミーなサウンドで、幅広い層からの人気を獲得している。自主制作で発売したCD-R「baby's star jam」が各方面で話題になり、2007年1月にExt Recordingから1stアルバム「tide of stars」を発表し、好セールスを記録。2008年3月にavex traxへのメジャー移籍を発表し、5月にメジャー第1弾となるアルバム「sunset girls」を発売した。その後自主レーベル「not records」を設立。2012年10月にはレーベル第1弾となる4thアルバム「sky was dark」を発売した。 DE DE MOUSE + Drumrollsとしてツインドラムと2人のVJを加えた編成でのパフォーマンスやプラネタリウムを舞台にした公演など、趣向を凝らしたライブにも定評がある。