ナタリー×WOWOW ミュージックスタイルJAPAN PowerPush - 藤巻亮太

「オオカミ青年」ツアーを終えて WOWOW連動インタビュー

「本物の音楽との出会い」をコンセプトに、毎月厳選したアーティストを紹介するWOWOWのライブプログラム「ミュージックスタイルJAPAN」。3月の番組では藤巻亮太が1stソロアルバム発売後に実施したツアー「TOUR 2013 “オオカミ青年”」から、2月1日に東京・TOKYO DOME CITY HALLで行われたライブの模様をオンエアする。

ナタリーでは「ミュージックスタイルJAPAN」と完全連動の特集コンテンツで彼のインタビューを掲載。現在の心境を語ってもらった。

取材・文 / 大山卓也 撮影 / 福岡諒祠

「オオカミ青年」の次の気持ち

──今回、1stアルバム「オオカミ青年」リリース後初のツアーから東京公演の模様がオンエアされます。まずはツアーを終えた感想から聞かせてください。

藤巻亮太

アルバムが出たあとのライブっていうのは、やっぱり違いますよね。自分の世界観を思う存分出せたし、お客さんとの距離感も近くなった気がします。リリース前はお客さんが曲をぜんぜん知らないぶん、お互いにもう探り探りだったので(笑)。シングルの曲はありましたけど、ある意味すごく突き放したライブだったと思うし、こっちがより丁寧に提示していかないと届かないものがたくさんあるなと思ってました。

──じゃあ今回のツアーではアルバムの世界観をうまく表現できましたか?

そうですね。「オオカミ青年」って言ってるけど、やっぱり自分の腕の中で安心して生きていきたい“羊な自分”もいるし、そこから飛び出して何かを作っていきたい“一匹オオカミ”な自分もいて。そのオオカミの自分を解き放ちたいっていうのがソロをやる一番大きな理由だったし、1stアルバムではそこをちゃんと描けたと思うんです。で、この「オオカミ青年」のツアーはもう一歩踏み込んで、その次の気持ちはどういう気持ちなんだ?っていうライブになったと思うんですよね。

──次の気持ちというのは?

自分自身ソロになったときに一番やりたかったのが「月食」っていう曲なんです。自分の中の負の思いをフワーッて吐き出したような曲で、それがアルバムのキーワードでもあったんですけど、でも吐き出すばかりじゃなくて、もっと違う音楽もできるんじゃないかって。

──その思いが新曲に込められているんでしょうか。

やっぱライブで一緒の時間を共有するっていうのはとても貴重なことで、その時間を楽しいものにしたいっていう思いから生まれた新曲もあるんですよね。だからそこらへんのエッセンスを感じながら観ていただけたら、作り手としてはすごくうれしいです。

ライブで感じるカタルシス

──今回のライブを観ていて、藤巻さんはじめバンドメンバーの皆さんが全員すごく楽しそうに演奏しているという印象を受けました。

いや、本当に素晴らしいメンバーに巡り合えたと思います。やっぱり1つのバンドで10年間やってきたんで、そのバンドを経て、また違う感性、違う才能を持ったミュージシャンに出会って、僕自身すごく刺激を受けたし、それぞれのメンバーから学ぶものもたくさんあったんですよね。

──シンガーとバックバンドという感じではないですもんね。

なんか近かったですよね、距離が(笑)。もともとはソロを始めるかどうかくらいのタイミングから、ギターの田中義人さんと音楽についての話とか、それ以外のくだらない話なんかをいっぱいしてきて。その中でソロでやっていくことに対する前向きなエネルギーをもらって、やっぱり自分自身が本当に楽しめるもの、本当にいいって思えるものをちゃんと突き詰めていこうっていう思いを強くしていったので。

──アルバムの楽曲も、ライブで観るとCDとは違う印象を受けました。

藤巻亮太

うん、絶対変わりますよね。やっぱり作った当時の気持ちと今の気持ちって絶対違うわけで、どっちも正解なんですよ。だから例えば「月食」を作ったときの気持ちを再現しようって思いながら演奏しているわけではもちろんないですし。「この曲はこうあらねばならぬ」みたいなのはないです。

──じゃあ負の思いを吐き出した曲も楽しく演奏できている?

そうですね。自分の恥ずかしい部分を掘って吐き出した曲って、やっぱ演奏しても気持ちいいんですよ(笑)。カタルシスがあるっていうか、開き直りのパワーみたいなものがあって。そういう意味ではいつ演奏しても楽しいですね。

──アンコールのときのリラックスした表情もすごく印象的でした。

やっぱりね、もちろんずっとそう思ってきましたけど、時間を割いて、チケットを購入してくれて、集まって来てくれて本当にありがとうって。やっぱり来てくれた人と同じ時間を過ごせたことが純粋にすごくうれしいなって思うんですよね。

よりピュアに音楽と向き合っていく

──アルバムを出して、初のワンマンツアーも終え、今後藤巻さんはソロとしてどういう方向に向かっていくんでしょうか。

「オオカミ青年」を作ったことで、ソロの初期衝動がひとつ形になったと思うんですよね。で、ソロだからとかバンドだからってことを変に意識するんじゃなくて、よりピュアに音楽と向き合っていく感覚を素直に曲にしていけばいいのかなって思えるようになって。そしたらまた自然と曲が何曲かできて、その新曲をライブでも演奏することができたんですね。

──じゃあ今後はもっと自然体で?

まあ蓋を開けてみないと何が出てくるかはわからないですけどね。とりあえず変に頭使ってしぼり出すようなことはやめようって思ってます。やっていくうちにわかっていくことが多いから。「そういうことがしたかったのか」って自分自身途中で気づくかもしれないし。それに気づいたときに「オオカミ」の先の何かがしっかり形になると思う。無理のない姿勢で作っていきたいですね。

──具体的な活動予定もありますか?

リリースとかが決まってるわけじゃないんですけど、もう着々と新曲もレコーディングし始めてますよ。ずっと聴いてくれてる人とも、新しく聴いてくれる人とも、楽しい時間、いい何かをやり取りしながら音楽ができたらいいなと思ってます。今はそれだけですね。

MUSIC STYLE JAPAN

ミュージックスタイルJAPAN
藤巻亮太

WOWOWライブ
2013年3月24日(日)23:00~
2013年4月20日(土)19:15~

藤巻亮太(ふじまきりょうた)

2000年12月に前田啓介(B)、神宮司治(Dr)とともにレミオロメンを結成し、ギター&ボーカルを担当。「3月9日」「南風」「粉雪」などの楽曲群が多くのファンからの支持を集める。2011年3月の東日本大震災発生後は、1人で被災地を訪れて歌を届ける“歌の炊き出し”を続ける。2012年2月にレミオロメンの活動休止を発表し、初のソロシングル「光をあつめて」をリリース。同年8月に2ndシングル「月食 / Beautiful day」、10月に1stソロアルバム「オオカミ青年」を発表した。2013年1月から初のワンマン全国ツアー「藤巻亮太 TOUR 2013 “オオカミ青年”」を開催。