もさを。「こいのうた」全曲レビュー、1stアルバムで表現された“大切な人との日常” (2/2)

09. もう一度 feat. asmi

asmiをフィーチャリングゲストに迎えたデュエットソング。気持ちが離れつつある2人のあきらめやうんざりした気持ち、後悔などがツインボーカルで歌われ、歌詞では男女の捉え方の違いが表現されている。例えば1番では、もさを。が「拗ねてばかりで 君の心が曇って見えないよ」と歌う一方、asmiは「ほら結局いつもそう 見てるフリだよ 目を瞑ったままじゃ なにもわからないでしょ、ね」と歌っている。歌詞はもさを。とasmiの共作だが、もさを。の代表曲「ぎゅっと。」を含んだ「ぎゅっと。ぎゅっと。もう一度」という遊び心のあるフレーズはどちらが書いたのか想像したくなる。

10. 涙雪

鈴の音が鳴るウインターバラードは、リスナーから寄せられた“冬の失恋”にまつわるエピソードをもとに曲を制作するLINE MUSICとのコラボ企画から生まれた新曲。“あなた”を失っても思い続ける女性目線の曲だが、「醒めない夢なら幸せだな」と表現しつつ、「朝だよ ねえ起こしに来て」と歌っているということは、別れすらも告げてもらえなかった失恋なのだろうか。募る悲しみを表した「積もった雪のような涙」や、相手の気持ちがどんどん薄まってしまうこと、あるいは自分の中から“あなた”にまつわる思い出が少しずつ消えていくことを表した「どうしてあなたは溶けていくの」など、雪に例えたフレーズが印象的だ。

11. カラメル

片思い中の心境を「甘くて苦いカラメルの味」と例えたモータウン調のアッパーチューン。恋を知らなかった頃の自分ではもういられないという実感を「ああ きっときっと 片道切符 もう戻れない 戻りたくない」と表現しているのもユニークだ。アルバムの中でもっともテンポが速い曲で、カラフルなサウンドは忙しなく変化する心模様を表現しているよう。そんな中、2番Aメロでは音を大胆に抜くことで2人だけの静かな空間を演出。またサビでは、やや食い気味にリズムをとるボーカルによって疾走感がより増している。

12. 会いたい

タイトルの通り、「会いたい」という気持ちをストレートに歌ったナンバー。「足りない 電話越しの声じゃ 今すぐ夜を超えたい」というフレーズは遠距離恋愛を彷彿とさせるが、ほとんどのカップルが“会えない”状況になってしまったコロナ禍において、この曲は多くの人の共感を呼んだ。「染まってくあなた色 きっと紅より綺麗よ」といった歌詞からは、会えない間にいくつもの季節が過ぎていったことが感じられる。

13. サイダー

アコースティックギターやピアノでゆったりとしたサウンドを奏でるサマーソングで、主人公は片思い中の女性。サビでは「恋色」にもあった「伝えたいけど、気付かれたくない」といった表現が海やサイダーにまつわる比喩とともに登場する。J-POPにおける夏の恋愛ソングといえば、夏特有の開放的な空気に身を任せて、少し積極的になってみたり、熱しやすく冷めやすい恋に興じてみたり……というものが多いが、それとは真逆のニュアンスの「夏に助けを借りたって 火傷しちゃうだけ」というフレーズからは主人公の性格が読み取れる。

14. 冬のプレゼント

「あなたに言いたい『ずっと好きです。』 友達のままじゃ終われないの」と思いをストレートに歌ったクリスマスソング。冬の新定番として10代を中心に浸透しつつある曲で、「今夜だけ ヒロインは私一人」「冷たい風が背中を押すの 冬のせいにして強く抱きしめなと」といった前向きで堂々とした言葉は、恋する人たちへのエールとなったことだろう。また、1番と2番の構成の違いにも注目したい。1番ではBメロの直後にサビが始まるが、2番にはサビの前に間奏があり、Bメロ最後の歌詞「ああ目と目が合ってどうしよう」の続きをリスナーに想像させる形になっている。

15. ギフト

「ぎゅっと。」のリリース2周年を記念して制作された、「ぎゅっと。」に登場する2人の2年後を描いた曲。ここで注目したいのは、「特別はたまにでいいよ 何気ない日常が私にとって大切で」(「ぎゅっと。」)から「どんなに変わり映えのしない日々でも あなたといると特別で」(「ギフト」)と歌詞が変化していること。その日常は実は特別であり、「ずっと一緒にいられたら」という願いはシンプルでいて“言うは易く行うは難し”だと実感した2年だったのだろう。アルバムの最後の曲に選ばれたのは、ファンへの感謝を込めた“ギフト”でもあるからだろうか。

16. ワスレモノ ※CDのみのボーナストラック

もさを。が初めて制作したオリジナル曲は恋愛ソングではなかった。「輝き方忘れた僕」が星の瞬く夜に紡ぐひとり言のような歌で、失意や劣等感がにじみ出ている。初のオリジナル曲がこのような内容だったのは意外だ。多くの曲で歌われている「側にいてほしい」「私を見ていてほしい」という願いの根源はこの曲にある寂しさなのだろうか。

もさを。

もさを。

ライブ情報

もさを。「1st ONE-MAN LIVE『こいのうた』」

  • 2023年1月29日(日)東京都 WWW

先行抽選:2022年12月7日(水)18:00~12月18日(日)23:59
※「こいのうた」CDに封入されているQRコードより申し込みが可能。
一般発売:2023年1月7日(土)10:00~

もさを。「1st ONE-MAN LIVE『こいのうた』」告知画像

プロフィール

もさを。

おもに女性目線のラブソングを歌うシンガーソングライター。2020年2月にTikTokにて弾き語り動画の投稿を始め、2020年7月に1stシングル「ぎゅっと。」を配信リリースした。その後もコンスタントに楽曲を発表し、2022年12月には1stアルバム「こいのうた」をリリース。2023年1月に東京・WWWにて初のワンマンライブ「こいのうた」を行う。