MOROHA「MOROHA V」インタビュー|アフロとUKが2人きりで歩んだ15年、“MOROHA”という音楽の広がりと今後の展望 (3/3)

UKのギターは“優勝”

──アフロさんはUKさんのギターに対して特別な思いがあるんですね。

アフロ 優勝ですよ、優勝。UKのギターは唯一無二だし、最高です。俺に一番歌詞を書かせてくれるのはUKのギターだし、ライブしていてときどきミスったりするけど、それもいい。MOROHAが始まってからの15年間、俺がラップする姿をずっとUKがリアタイで見てるわけです。それって冷静に考えるとすごいことで、もし俺1人だったら、そのときの俺が客観的にどうだったか知るよしがないんですよね。それを別に口に出して語ったりはないんだけど、とりあえず知ってるやつがいる。俺はそれがすごくありがたいことだなと最近思うんですよ。だからUKがミスったときも「あ、ミスったとこ見れた」と思うし、そうすると自分もミスに動じなくなってくる。つまりそれが信頼関係だったりするのかもしれないなって。去年の武道館のときも、最初の1音目ハズしたじゃん?

UK ハズしたね(笑)。会場がホールだと、ミュートしとかないとすぐ音を拾ってハウっちゃうんです。だからミュートしてスタンバイしたまま1音目に集中してたらミュート切るの忘れてて。武道館の1曲目の1音目から仕切り直したんです。

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アフロ それで俺、ものすごいリラックスさせてもらってます。しかもその1曲目「イケタライクヲコエテイク」は、俺がセトリから外そうと言ったけど、UKが「いやこれは絶対やろう、これを1曲目にやるから意味があるんだ!」って力を入れてた曲だったから「なんなの! 最高かよ」と思って! でも、いい滑り出しだったね。

UK あれはかわいいなと自分で思った(笑)。

──UKさんは昨年からご自身のYouTubeチャンネルでギターの弾き方をレクチャーされて反響を集めていますね。

UK 自分の配信をきっかけにギターを始めましたって人が最近めっちゃ多いんです。それまでMOROHAでしか活動してなかった中、ギタリストとして感謝されることの喜びを知ったというか、人としてうれしいなと思って。これはこれで続けたいなっていう思いもありますね。

──同じようにアフロさんの姿を見て「自分もリリックを書こう」と思う人も増えていると思います。

アフロ みんなラップしたらいいと思う。「芸術は人の心を救う」って言うじゃないですか。確かにその通りなんだけど、俺はむしろ見る側が救われてるんじゃなく、やる側が救われてると思うんです。だから発表するしないは別として、心がギュッとなってるときは、みんなポエムを書いてみたらいい。それをアートに落とすことで心が楽になると思ってるから。UKのやってることが素晴らしいのは、気持ちが楽になるための手段を手渡してる感じ。俺はポエムの書き方を教えられるわけじゃないけど、学校で作文は書くじゃないですか。それと一緒だから、もっとみんなポエムを書いたらいいのになと思います。

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「文銭」シリーズのラスト

──今の話は「あなたがいた だから名曲」というラインが印象的な「六文銭」にもつながりますよね。今回のアルバムの最後を飾る曲ですが、ここで改めてMOROHAにとっての「文銭」シリーズについて聞かせてください。

アフロ 基本的に俺らは自分たちのことを歌ってるんだけど、この「文銭」シリーズでは自分たちが今どのあたりにいて、どんなことが悔しいのか、どんなことを希望の頼りにして生きているのかっていう現状をとにかく歌う。で、UKの場合はギターの最新テクニックというか。

UK その時点の自分がギターで表現できることを全部駆使する場ですね。

アフロ 俺らの地元に上田城というお城があって、真田家の家紋として六文銭という言葉がもともとあるんですよ。で、俺らは2人だからってことで「二文銭」という曲を作って。最初はこんなふうに続いていくと思ってなかったから、二、三、四、一、五、六という順番になったんです。六文銭という言葉があって書き始めたから、「文銭」シリーズとしては、今回の「六文銭」で一応ラストのつもりです。実は「六文銭」は最初から「『六文銭』という曲にしよう」と思って作ったわけじゃなくて、曲を書き進める中で「これ、『六文銭』かもね?」という感じでできあがったんです。それが決まってから曲の最後の部分を「諦めに向かう地図を破れば 何かを成す為にやって来たんだ ドリームはゴーしてトゥルーにしていく」と、「文銭」シリーズのサビからセルフサンプリングすることにして。一から六までつながってるわけじゃないけど、なんとなく意味が通るのがすごくロマンチックで、はしゃぎました。

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燃え続けるために

──MOROHAは「三文銭」の「2015年フジロック 届かなかった大舞台」や、「六文銭」の「待たしたな 九段下 日本武道館」など、そのときどきの目標を歌詞に織り込んできましたが、この先、お二人はどこへ向かうのでしょうか?

アフロ 武道館は場所に特別な憧れがあったわけではなくて、自分たちがモチベーションを持つために必要な目標だったんです。それと同じように、場所で言えばもっと大きいところ、例えば「紅白」(「NHK紅白歌合戦」)だったり、「俺が俺で俺だ」の中で歌ってる東京ドームとかがあるんだけど、あくまでそれも自分が燃え続けるための手段なんですね。

──なるほど。

アフロ だからこれからも目標は「燃え続けていること」。そして、いい曲を作ること。俺は自分自身を更新していかないと新しい曲が書けない人間なので、テレビのバラエティに出るのもその一環なんです。人に喜んでもらったり愛してもらったりするたび、新しい性格を1つゲットできると思っていて。バラエティに出てみんなに笑ってもらえて、もっとコミュニケーションが取れるようになったら新しい曲が生まれていくと思うんです。自分の幅、曲の幅を広げるために、とにかく人に出会い続けることが俺の今の夢ですね。昔からそうだけど、より明確に強く思うようになってきました。あ、でもお金も欲しいね。

UK お金は大事(笑)。僕もあえて言葉にするなら、MOROHAがテレビとかメディアで露出することですね。これはなんでかって言うと、ギターを持ってなくてもマイクを持ってなくてもMOROHAと認知されて、自分たちが出てる価値っていうものがそこにあるのだとしたら、こんなに素晴らしいことないと思うんです。ギター弾くとすごい人。歌詞がすごくて、歌うとすごい人。ギターとマイクを持ってなくても、それが伝わるぐらいメディアに出たいですね。そこから知ってくれる人もたくさんいるので。

アフロ ぶっちゃけ、俺たちの音楽を好きになってもらわなくても友達になれたらそれでもいいと思い始めてるもん、最近。「別にお前らの音楽好きじゃないけど、一緒に飲んでたら楽しい」で納得できるようになってきちゃってる。でも、そうなればなったで「好きなやつだからこそわかってほしい!」って、もっと熱く燃えると思う。そういうやつとも笑い合って「どこが嫌なの?」「あのアーティストが好きなんだ? 俺も好き!」みたいな会話ができてれば、正直そいつとの関係性においてMOROHAを認めてもらう必要ってないのかもしれない。ギターとマイクがなくても俺たちを好きになってもらえるならそんな素晴らしいことはないし、でもそこまでの道のりにギターとマイクがあることも知ってる。俺らのことを人として好きになったあと、「もっと掘り下げたい」ってMOROHAの音楽に出会ってくれたら、さらにハッピーだし。そうなればいいなと思います。それでもし困っても、マイクとギターのところに戻れば俺たち2人で完結できる世界があるから。

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ライブ情報

自主企画「怒濤」第二十二回

2023年6月20日(火)東京都 LIQUIDROOM
<出演者>
MOROHA / ビッケブランカ


「MOROHA V」RELEASE LIVE

2023年7月23日(日)東京都 Zepp Shinjuku(TOKYO)


「日程確定、開催確定TOUR」×「MOROHA V RELEASE TOUR」

  • 2023年7月26日(水)北海道 KLUB COUNTER ACTION
  • 2023年8月1日(火)岡山県 CRAZYMAMA 2nd Room
  • 2023年8月3日(木)香川県 高松TOONICE
  • 2023年8月5日(土)徳島県 club GRINDHOUSE
  • 2023年8月7日(月)大阪府 FANDANGO
  • 2023年8月14日(月)愛知県 CLUB ROCK'N'ROLL
  • 2023年8月18日(金)鹿児島県 SR HALL
  • 2023年8月20日(日)大分県 T.O.P.S Bitts HALL(※会場変更)
  • 2023年8月22日(火)福岡県 BEAT STATION
  • 2023年8月27日(日)神奈川県 F.A.D YOKOHAMA
  • 2023年8月29日(火)東京都 新代田FEVER
  • 2023年9月3日(日)福島県 clubSONICiwaki
  • 2023年9月7日(木)新潟県 CLUB RIVERST
  • 2023年9月9日(土)山形県 酒田hope
  • 2023年9月11日(月)青森県 LIVE HOUSE FOR ME
  • 2023年9月14日(木)東京都 下北沢ERA
  • 2023年9月20日(水)京都府 Live House nano
  • 2023年9月23日(土・祝)長野県 ALECX
  • 2023年9月30日(土)沖縄県 食工房まほろば(※会場変更)
  • 2023年10月4日(水)東京都 新宿MARZ

「日程確定、開催確定TOUR」×「MOROHA V RELEASE TOUR」ファイナル公演

2024年1月13日(土)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

プロフィール

MOROHA(モロハ)

ラッパーのアフロとギタリストのUKにより2008年に結成。2010年に「SUMMER SONIC」出場権を賭けたコンテスト「出れんの!?サマソニ!?」にエントリーし、審査の過程で急遽追加された「曽我部恵一賞」を受賞したことをきっかけに急速に注目を浴びる。同年10月にROSE RECORDSから1stアルバム「MOROHA」をリリース。さまざまなアーティストとの対バンで、2人組という小編成ながらインパクトのある熱いパフォーマンスを繰り広げ、2016年には東京・LIQUIDROOMでのワンマンライブをソールドアウトさせた。同年10月に自身のレーベル・YAVAY YAYVA RECORDSからアルバム「MOROHA III」を発表。結成10周年を迎えた2018年6月に再録ベストアルバム「MOROHA BEST~十年再録~」をリリースし、2019年5月には4枚目のフルアルバム「MOROHA IV」を発表した。2020年には新型コロナウイルス感染拡大の影響でさまざまなライブが延期・中止となる中、困窮を極めるライブハウスに会場費を先払いするという試みから日程未定の全国ツアー「日程未定、開催確定TOUR」の開催を発表。2023年に結成15周年を迎え、同年6月に約4年ぶりとなるニューアルバム「MOROHA V」をリリースした。7月からはツアー「日程未定、開催確定TOUR」のタイトルを、「『日程確定、開催確定TOUR』×『MOROHA V RELEASE TOUR』」に改め全国各地を回る。

※記事初出時より本文の一部表現を修正しました。

2023年6月8日更新