音楽ナタリー Power Push - 森友嵐士

3つの“嵐”を届ける 実験的ライブに向けて

森友嵐士が3月29~31日に東京・Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREにてコンセプトライブを3夜連続で開催する。

今年メジャーデビュー25周年を迎える彼が、「新たな挑戦」をコンセプトに行うこのライブは、初日には「静かな嵐」、2日目には「COVERで嵐」、3日目には「激しい嵐」というテーマが掲げられている。森友はどのような思いでこのようなライブを企画したのか。その思いを聞くべくインタビューを行った。

取材・文 / 秦野邦彦 撮影 / 西槇太一

「静かな嵐」「激しい嵐」っていうのはどう?

──今回のライブは森友さんにとって新たな試みになりますね。

そうなんです。今年からライブのチームメンバーが新しくなったんですよ。そのスタッフたちとライブについてミーティングをしている中で、たまたま「『静かな嵐』『激しい嵐』っていうのはどう?」という提案が出てきて、言葉の響きが面白いなと思って。そのときはキーワードだけ決まって、やることは何も決まってなかったんだけど、会場が3日間取れたので「だったらカバーライブもやってみたいよね」ってことで「COVERで嵐」というタイトルが浮かんだんです。そこから、「じゃあ『静かな嵐』『激しい嵐』では何をやればいいだろう」っていうディスカッションが始まりました。

──第1夜の「静かな嵐」は、歌とピアノとチェロというシンプルな編成でライブをするそうで。

森友嵐士

ずいぶん前になりますけど、シーラ・Eがブルーノート東京で来日公演をしたときに1曲だけだったんですけど、彼女がピアノの弾き語りで歌い始めて途中からチェロが加わった曲があったんです。それがすごくよくて「いつか自分もこの編成でライブをやりたい!」と思ったんだよね。チェロとピアノっていう編成でライブをするなら響きのいい場所でやりたいと思って、最初に選んだのがクラシックホール。そのあと縁あって神社仏閣でライブをやらせてもらうようになったときも、この編成でした。広島の厳島神社、京都の鷲峰山高台寺、滋賀の比叡山延暦寺、奈良の東大寺……。いろんな場所でやりましたけど、厳粛な空間に合うんだよね。今回の「静かな嵐」はゆったり音楽や歌を楽しみたい方にはぴったり。クラシカルな繊細さと声の共鳴を楽しんでもらえたらと思います。

──第2夜は「COVERで嵐」です。カバー曲を中心としたセットリストになるということで、ファンの方からリクエストを募られてましたね。

はい。集まったリクエストの中には予想通りの曲もあれば、「これをリクエストするんだ!?」と思うような曲もありました。1980年代、90年代の曲から、今の曲までいろいろですね。僕的には意外なものも面白かったですね。これまで聴いたことも歌ったこともないけど、やったら面白そうなものもセットリストに入れたいと思ってます。この日はドラムがそうる透さん。ベースが黒夢の人時。ギターが原田喧太とムーチョ。キーボードがTHE ALFEEや黒夢のサウンドクリエイターで、今は中国で活動されている菊地圭介さん。

──そうそうたるメンバーですね。

自然とつながってくもんなんですよね。カバーってほとんどしたことがないんですけど、せっかくだから、アレンジなんかもいろいろ遊べたらいいなって相談してます。オリジナルアレンジのままやるものもあれば、大胆にアレンジするものもあったり。「ちょっと遊ぼうぜ!」って、メンバーと一緒にいろいろと企んでます。

──そして第3夜は「激しい嵐」です。

ソロ曲やT-BOLANの曲の中から激しい曲を中心にセットリストを組んでます。この日のバンドは、まったく新しいメンバーなんです。本番1カ月前にして(取材は2月下旬に実施)、俺がまだ会ったことない人ばかりという(笑)。アマチュア時代の、人の紹介でメンバーを集めてセッションするときのような新鮮さがこの日はあると思います。パッションとか直感とか、動物的な感性がショートしあうようなライブになればと思ってます。

実験みたいなことができたら

──なぜ新しいメンバーとライブをやろうと思ったんですか?

今までやってきたことをそのままやるのは簡単だけど、可能性があれば広げたいし、自由に遊ぶ中で自分自身が思いもしなかったことに触れてみたくて。新しいエッセンスを取り入れることで、自分の色をもっと増やしたい衝動に駆られちゃって。

──なるほど。

あともう1つ試みがあって。今回打ち合わせをしている中で、メンバーと親しい1人の映像クリエイターの名前が浮上してきたんです。VOCALOIDの楽曲で「千本桜」ってあるでしょ? あのリリック映像を作ったお菊さんと今回のライブでコラボすることにしたんです。

──意外な組み合わせですね。

ジェネレーションも違うし、どうなるか想像つかないでしょ? 俺からは「この曲を映像化してほしい」とだけ伝えて、それ以上のことは一切彼女に任せてます。こういう渡し方初めてなんだよね。俺は大学で化学を専攻していたこともあって、とにかく自分の中に理由がないと動かないタイプの人間なんです。「これをやりたい。なぜなら……」ということを常に考えてしまう。だけど今回のライブに関しては自分の理屈は横に置いて「理由はわかんないけど、面白そうじゃん、乗っかってみようよ」っていう。そんな軽やかな自分に会いたかったというか。

──直感を信じたと。

森友嵐士

そうだね。「直感で遊びたかった」というほうが正しいかな。自分のエネルギーが一番あり余っていたアマチュアの頃って、何をするにもワクワクしてた。それと同じように今回、スタッフから「静かな嵐」「激しい嵐」ってアイデアを提案されたとき同じようにワクワクしたんです。これまでは固定のメンバーだったから、ある程度はどんな音になるか予想がつくじゃない? その中で完成度の高いものを作ろうとしてきたんだけど、今回は1回それを忘れて、何が起こるか予測できないことをたくさんやる、実験みたいなことができたらいいなと思っています。

──「実験」という言葉は今回のライブにピッタリですね。

そうでしょ? 今のチームでミーティングしてると単純に楽しいんだよね。アマチュアバンドの頃、リハが終わったあとファストフードのお店に入ってミーティングと称して、終わらない夢の話をずっとしてたのを思い出して。なんの根拠もないのに妙な自信があった頃。そういう音楽を始めたばかりのような新鮮な気持ち、ワクワク感を大事にしながら3日間を過ごしてみようと思ってます。

森友嵐士 2016 DEMONSTRATION LIVE at Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

静かな嵐
2016年3月29日(火)東京都 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
<バンドメンバー>
倉田信雄(Piano) / 徳澤青弦(Cello)
COVERで嵐
2016年3月30日(水)東京都 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
<バンドメンバー>
原田喧太(G / KATAMALI) / ムーチョ(G / SeanNorth)/ 人時(B / 黒夢)/ そうる透(Dr)/ 菊地圭介(Key)
激しい嵐
2016年3月31日(木)東京都 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
<バンドメンバー>
HIRO(G / La'cryma Christi、Acid Black Cherry、Creature Creature)ムーチョ(G / SeanNorth)/ RYO(B / defspiral) / 西田”Ryu”竜一(Dr / Ra:IN)/ 菊地圭介(Key)
森友嵐士(モリトモアラシ)
森友嵐士

1965年生まれ、広島県出身のボーカリスト。1991年にT-BOLANのメンバーとしてシングル「悲しみが痛いよ」でメジャーデビューし、「離したくはない」「Bye For Now」「マリア」など数々のヒット曲を世に送り出す。しかし1994年に原因不明の発声障害のため歌唱が困難になり、1999年12月のT-BOLAN解散以降は音楽活動を休止する。その後、2009年11月に森友嵐士として音楽活動を再開させる。また2012年にT-BOLANの再結成を発表し、同バンドが2014年4月に活動休止するまで再びフロントマンとして活躍した。2015年にゴールデンボンバーの鬼龍院翔とユニットmorioniを結成。同年2月にシングル「サヨナラは歩き出す / 離したくはない」を発表し話題を集める。2016年1月には「東京マラソン 2016」ランナー応援ソング「駆け抜ける愛のうた ~はじまりのday by day~」を配信リリースした。