森七菜インタビュー|森山直太朗書き下ろしの「bye-bye myself」で見つけた新しい私

森七菜の新曲「bye-bye myself」が配信リリースされた。

「bye-bye myself」は森山直太朗が森七菜をイメージして書き下ろした楽曲。さわやかなサウンドに乗せて前向きな心情が歌われている。2020年1月に「カエルノウタ」で歌手デビューして以降、コンスタントにリリースを重ねる彼女に音楽活動への思いを聞くと、その言葉から、歌うことに対する強い向上心が伝わってきた。

取材・文 / 西廣智一撮影 / 梁瀬玉実

ハードルは高かったけど自分らしく歌えた

──新曲「bye-bye myself」は森山直太朗さんの書き下ろし楽曲です。森山さんとお会いしたことは?

以前「エール」という朝ドラに出たときに、一緒のシーンはなかったんですけど、すれ違ってお会いしました。

──どういう印象を持ってらっしゃいましたか?

なんだろう……雰囲気がつかめない方だなと。

──では、森山さんの音楽にはどういうイメージを持っていましたか?

すごく清らかな雰囲気もあれば、どこか大人な色気を感じることもあって。歌がうまい人にしか歌えない曲ばかりだなと思っていました。

森七菜

──今回の「bye-bye myself」は森山さんが森さんをイメージして書き下ろしたそうですが、最初に聴いたときはどういう印象を持ちましたか?

普段私は愛らしいイメージを持たれることが多いんですが、この曲は歌詞の中に「デンジャーなのは承知さ」とかカッコいいフレーズが入っていたのが意外で。それが自分の本当の姿なのかはわからないですけど、森山さんにそんなイメージを持ってもらえたのはうれしかったです。あと、私自身は普段から嫌なことも寝たら忘れるタイプなので、ちょっと言い当てられたような気もしますけど(笑)、この曲でまた新しい自己表現ができるのかなと、歌うことが楽しみでした。

──実際、歌ってみていかがでした?

難しいですね。例えば「最後の守りだ」のところは声をすごく轟かせる感じというか。仮歌を森山さんが歌ってくださっていて、それを聴いて本番に臨むと思うとハードルの高さも感じましたけど、最終的には自分らしく歌えました。

カラオケは卒業できました

──昨年リリースした「深海」「背伸び」という難易度の高い楽曲を経験した成果なのか、この曲を聴いてすごく堂々とした歌声だなと感じ、歌に対する自信のようなものが伝わってきました(参照:森七菜インタビュー|新海誠監督に作詞を直談判、「背伸び」で見せたさらなる音楽活動への意欲 / 森七菜インタビュー|歌手デビューから1年半、新曲「深海」でAyaseに託した思い)。

もしかしたらこの曲調や歌詞に引っ張ってもらったのかもしれませんね。私自身も聴いている人を引っ張っていけるような存在にならないといけないと思っていたから、それは影響していると思います。

──この前向きさって、例えば「スマイル」(2020年7月に配信したホフディランのカバー)のポジティブさともまた違ったテイストだと思うんです。以前お話を伺ったときに「親戚の子供がカラオケで歌っているところを見て、元気になってもらうようなイメージで歌っていた」とおっしゃっていましたが、そこから経験を重ねて地に足が着いてたくましくなったような。

本当ですか? ここまで、Ayaseさんや新海誠監督などすごい方々に楽曲を作っていただいて、ちょっと気合いも入ったというか、その歌の一番いいところをちゃんと引き出せるようにとがんばってきたので、カラオケは卒業できたのかな(笑)。少しでも成果が出ていたらいいなと思います。

森七菜
森七菜

──「深海」「背伸び」に対する反響も耳にしたと思いますが、そういった声が自信につながったりもした?

最初に「カエルノウタ」(2020年1月リリースのデビュー曲)を出したときはまだ高校生で、しかもコロナもなくて、ライブをやったりすると高校の友達が直接感想を言ってくれたんですけど、今はなかなかそういう機会もなく。でも、ラジオ(「SCHOOL OF LOCK!」内の「森七菜 LOCKS!」)に寄せられたコメントを通じて「私の歌を聴いて元気になってくれたんだ!」と知れると現実味が一気に増して、自分の中にあった「本当にこれで大丈夫なのかな?」という不安も解消されて、「じゃあ次はどんな曲を歌おうか?」と前向きに考えられるようになりました。

──一方通行ではなく、ちゃんとお互いの気持ちが通じ合っていることを確かめることで、どんどん次のステップに進めていると。

でも、それでも物足りなさもあって。まだ皆さんに直接何かを届けたり伝えてもらったりはしていないので、早く皆さんに直接会いにいきたいですね。

森七菜

英語詞を歌うことに恥じらいがなくなった

──「bye-bye myself」の話題に戻りますが、レコーディングにおいてこだわったポイントはありますか?

もともとお芝居をずっとやってきたのと、歌の技術がそんなにあるわけではないのもあって、とにかく歌詞に思いを馳せて歌うことで、メリハリとか緩急につながればいいなと思いながら歌いました。

──歌詞には英語のフレーズも多く含まれています。

ここまで英語が多い曲は初めてなので、最初は少しだけ恥ずかしさもありました。それこそ最初は「bye-bye myself by my sorrow」とか「by my tomorrow」といったフレーズも拙い発音で歌っていたんですけど、もっとカッコよくしようということでちょっと巻き舌で歌ったりとか(笑)。それが練習の過程で板についたので、恥じらいなく本番に挑めました。でも、普段は英語なんて歌の中でしか口にしないから、なんだか新鮮さがすごかったです。

森七菜
森七菜

──森山さんの歌詞の特徴かもしれませんが、「bye-bye myself」と「来来来来世」のように日本語と英語で韻を踏んでいるフレーズも多いです。

特にどちらかに寄せてとかはなかったですけど、テンポもよくてキャッチーなフレーズなので、そのノリのよさをしっかり出せるように歌うことは意識しました。それこそ、「来来来来世曖昧模糊」の「曖昧模糊」は最初意味がわからなくて、自分で調べて「へー!」と納得しましたけど、そういうフレーズの音の響きもキャッチーで。ついつい普段から歌っちゃうぐらいなんです。

──そこも含めて、森山直太朗節炸裂の1曲になりましたね。完成した歌に対する自己評価はいかがですか?

どうなんでしょうね? 自分の歌ってずっと自分で耳にしているから、冷静に判断できなくて。それに、歌に関してはもともと得意というわけではなくて、ただただ無我夢中でやってるので、聴いた皆さんからコメントとかで教えてほしいですし、これからの伸びしろに期待してもらえる1曲になっていたらうれしいです。