森七菜|歌手デビューから1年半、「深海」でAyaseに託した思い

レコーディング現場に本物のYOASOBI

──「深海」のレコーディングに向けてどういう準備をしましたか?

今まで歌ったことのないようなリズムで、かつ複雑なメロディだったので、レコーディング前日に「ここはこうやって歌いたいな」と入念にシミュレーションしました。そうやって楽曲と向き合う時間は楽しくて、気付いたら4時間くらい経っていて。明日が本番だから早く寝なきゃと思って、飴ちゃんをなめて寝ましたね(笑)。

──確かに「口ずさみやすい曲」ではないですよね。レコーディングにはAyaseさんも同席されたそうで。Ayaseさんはどんなアドバイスを?

「とにかく一生懸命歌ってね」という言葉をいただきながら、もう必死に歌いました。現場にはikuraさんも来てくれて、激プレッシャーでしたね(笑)。だって私はただのファンなんですもん。

──お二人に見守られるのはファンとしてうれしい反面、プレッシャーでもありますよね。

Ayaseさんとikuraさんがそろったとき「わっ、本物のYOASOBIだ!」って。「ダメなところがあったら全部言ってください!」とikuraさんにお願いしたんですけど、優しい方なので結局「すごく素敵でした」というお手紙を残してくださって。次の現場に行かれました。

──明るい「スマイル」を歌ってもどこか寂しさを感じさせる、儚い成分が森さんの歌声の魅力だと思うんですね。「深海」はその儚さをAyaseさんがすごく美しく引き立てているし、冒頭のブレスもすごく印象的でした。ド頭からグッとつかまれてしまいます。

意識してなかったんですけど、あんなに深く息継ぎしていたんですね。自然なブレスも採用してもらえてうれしかったです。

──ミュージックビデオも最高でした。どこかノスタルジーを感じる小狭い路地、4:3のブラウン菅画角がこんなに似合う19歳もいないなと。

ありがとうございます(笑)。2日間の撮影だったんですけど、林(響太朗)監督から細かい指示はなくて、ぶっつけ本番でした。それによって私の素の部分が出ているかなと思います。

──涙を流しているシーンがすごく印象に残ります。歌詞のストーリーに準じた演出というわけではなく、ふとした拍子に思わず込み上げてきたような涙ですよね。

ものすごく恥ずかしいんですけど……あまりにも景色がきれいで。日没の時間の少しどんよりした空が「深海」とリンクしている気がして、奇跡かなと思えたんです。空の美しさ以外にも、人恋しい感情が思い起こされて、自然と涙が出てしまいました。

森七菜

膨らむ創作意欲

──8月31日には20歳の誕生日を迎えます。「こういう大人になりたい」という具体的な目標やイメージはありますか?

一緒にお仕事をする人はもちろん、応援してくださる方に信頼してもらえる女性になりたいですね。

──ちなみに今、自分の中で一番楽しいことは?

やっちゃいけないことをやってるときとか。

──どういうことですか(笑)。

法律違反はしませんけど(笑)、夜中にラーメンを食べちゃうとか。「もう帰るよ!」と言われてるのに、ずっと四葉のクローバーを探すとか、ちょっとスリルのあることが好きなのかもしれないです。

──些細な悪さが。では逆に一番嫌だなと思うことは?

怒鳴られることですね。大きな声を出されるのが苦手です。

──嫌なことがあって落ち込んだときの対処法はありますか?

寝ます。その一択ですね。寝たら忘れるタイプなんですけど、そもそも忘れっぽい性格なんです。小さい頃にお皿を洗わず遊んでいたらお母さんに叱られたことがあって、母親の前では反省してたんですけど、自分の部屋に戻った瞬間、陽気に「アナと雪の女王」の主題歌をつい歌っちゃったんです。たとえ怒られても、3歩歩くと忘れちゃう(笑)。

森七菜

──(笑)。「深海」のリリースを経て、これから音楽とはどのように向き合っていきたいですか?

次にどういう曲を歌いたいという具体的なイメージはないですけど、歌は続けていきたいです。Ayaseさんがせっかく「深海」を作ってくださったので、今はこの素敵な歌をより多くの人に届けたいという思いが強いですね。今回、作品作りに携わるという機会をいただけて、ホントに楽しかったんです。今後はより深く、楽曲制作に関わっていけたらなって。創作意欲がどんどん湧いてきています。

──リリースを重ねて、ゆくゆくはお客さんの前でワンマンライブを、という気持ちは?

音楽のことに関しては専門的な知識がないので、怖いもの知らずかもしれないですけど、ライブは好きですし、好きなバンドの皆さんと競演してみたいですね。あとはお客さんと一緒に歌えるような、そういう日が来るといいなと思います。

森七菜
森七菜(モリナナ)
森七菜
2001年8月31日生まれ、大分県出身。2019年7月に公開された映画「天気の子」でヒロイン・天野陽菜役に抜擢され一躍脚光を浴びる。その後、数多くの映画やドラマに出演し、2021年3月に「第44回日本アカデミー賞」新人俳優賞を受賞した。2020年1月公開の映画「ラストレター」では岸辺野颯香、遠野裕里(高校時代)役を務め、主題歌も担当。その主題歌「カエルノウタ」で歌手デビューを果たした。同年7月に大塚製薬「オロナミンC」のCMソングとしてホフディラン「スマイル」をカバーし、配信リリース。YouTubeで公開されたミュージックビデオの再生回数は3000万回を超える。2021年8月にはYOASOBIのコンポーザーとしても活動するAyaseが提供した「深海」を配信リリース。

衣装協力 / LA BELLE ETUDE ※トップス¥4,950、サロペット¥24,200ですべて税込み価格。そのほかはスタイリスト私物。 ※お問い合わせはアンティローザ・LA BELLE ETUDE事業部 03-6431-9431