私が歌えば私なんだ

──「闘いの時」は作編曲が森さんになっていますね。四つ打ちのダンスチューンというこれまでの楽曲にはないタイプになっています。

森　こちらは私とエイベックスの太田守さんでアレンジを考えた曲なんです。“バンドで聴ける森恵”っていうのを感じてもらえるかなって思って。弾き語りは大好きだし、原点を忘れたくないですけど、それだけじゃ嫌だと思って。それだけだと世界が広げられないと思ったんです。

ASA-CHANG　エイベックスのディレクターの太田さん本人が、キラーチューン作っちゃうんだもの……。

河野　僕らの仕事減らしてほしくないな（笑）。

──ははは（笑）。このサウンドにしたきっかけは？

森　最近バンド編成でライブをやることが多くなってきたんです。それで、バンドの演奏で自分の曲を歌いながら、お客さんに対して「もっと叫びたいんじゃないか」「体動かしたいんじゃないかって考えることが増えてきて。だから今作だと「ハンターグリーン」「Hello Smile!」と、この「闘いの時」はライブをイメージした曲になってて、もっとライブに来て楽しんでほしいっていう思いも込めた曲でもあるんです。

──前作同様に今回もいろんなことにチャレンジしているんですね。

森　ミニアルバムの制作を進めながら「私が歌えば私の音楽なんだな」ってのがわかってきたんですよね。だからいろいろやっても森恵だって思えたんで、楽曲の後ろでダカダカいってる音は「こっちがいい」って自分で希望して入れました。

──いくら振り切ってもいいと。

森　はい。でもチャレンジしたことによってお客さんから拒否反応を起こされたらどうしようとも考えたんですけど、自分はこうじゃなきゃ嫌だっていうのがあったんで。それに想像しなかった音をアレンジャーさんに返してもらったときに「大丈夫じゃん」って思えたので、それ自体が大きな成長かなって思いましたね。

ASA-CHANG　「闘いの時」の後半で声がギギギッてエレクトロニカルに加工されてる部分があるじゃん。あそこまで加工されても大丈夫なの？

森　はい。もう思いきりやろうと思ったんです。もちろんほかの曲でそれをされたら考えちゃうと思うんですけど、この曲の歌詞のテーマは“自分との闘い”で、それが私の思いそのものでもあったんで、曲の内容もそうしたいって思ったんです。

ASA-CHANG　ああ、じゃあ音の感触は気にならなかったと。

森　はい。音自体、声の質はいじってますけど、歌い方っていう表現の部分は変わらないので、そこに挑戦するべきだなと思って。

ASA-CHANG　この曲、野外フェスで爆音でかかったら最高ですよね。

歌で伝える自分の10年

──ミニアルバムのラストナンバー「輝く日々」は、“森恵然”としたスタンダードなナンバーですね。これはあえていつも通りの形で？

森　はい。そのままの自分がここにいるというか、今作の中で一番何も考えずに作った曲で。というのも、自分の10年間を伝えられる曲を作りたいなって思ったんです。歌いたい気持ちを押し殺していた学生時代を経て、タイミングとしては遅いながらも歌っていう自分の夢を歩き始めて、今も続けられている。そんな自分の今の気持ちを伝えたいなと思ってこの歌を入れました。

──今年はメジャーデビュー5周年であり、同時に森さんのキャリア10周年記念にもなるということで、このアルバムにはそういう節目の作品のような気持ちが込められている？

森　はい。「あっという間ながらものすごくいろいろな体験をしてきたな」って、自然と「節目になってるなあ」と考えながら作ってましたね。それでおのずと「歌をストレートに届けたい」っていう気持ちになり、この10年間の自分のことを歌ってる曲もできたし、誰かの応援歌になってもらえるといいなという曲が集まりました。それに私のライブ向きの曲で、来てくださるお客さんにもっと楽しくなってもらいたい！っていう思いもあったし。ライブが終わってサインとかをしてると、「すごい元気をもらいました」ってたくさん言ってくださって。それはライブで何かを受け取ってもらえた証だと思うのですごくうれしくて。このミニアルバムでは楽曲からもそういうパワーを感じてもらえたらいいなってすごく思って。そしたらこういう曲たちがどんどん出てきたんです。

ASA-CHANG　今日話して森さんのそんな気持ちを感じました。びっくりしちゃった。

河野　ちゃんとしてんだなあって思いました。

森　ちゃんとしてる（笑）。まだまだ小さい人間ですよ。身長も含めて（笑）。でも、いろんなことやっても私は私だと気付けたし、これからは原点に帰るような作品も作りたいなって思ったので、このまま素直な自分でいたいなって思いますね。