河野圭とのコンタクト

──今作はチャレンジングなナンバーと森さんらしいメロディアスな楽曲のどちらも楽しめる内容になっています。この作品の中で最初に作られたナンバーはどれですか？

森恵　「ユメオイビト」ですね。最初に映画のタイアップの話が来たんです。それでスタッフと相談しながら、この曲は河野さんにプロデュースしてもらいたいなと思って初めてお願いしました。曲のイメージをお伝えしつつデモをお渡しして、あとは河野さんにお任せするっていう流れで。

河野圭　僕は偶然前作を聴いていて「すごくいいな」と思ってたところにお話をいただいたので光栄でしたね。それに受け取ったデモテープも素晴らしい内容だったから、僕の仕事は早かった。いい曲に対しては余計なことをしなくていいんで（笑）。

森　よかった（笑）。私も「ユメオイビト」を河野さんと作るのが楽しかったので、「もう一度何か河野さんと作らせてもらいたいな」って気持ちが芽生えてきたんです。で、そのままアルバム制作に入って「この曲は河野さんでしょ！」って感じた「Hello Smile!」「せんたくもの」という2曲のプロデュースをお願いしましたね。

河野　前作を聴いていたことでASA-CHANGさんがやってらっしゃった音の流れはつかめていたから。それもあって深く考える必要がなかったというか、一緒に制作しているとだんだん「これぐらいアレンジを施しても大丈夫だな」って見えてきて。だから「Hello Smile」はちょっとアップテンポな感じにしたし、最後にもらった「せんたくもの」に関してもデモテープがよかったから余計な楽器を入れないほうがいい気がして、このままでもいいんじゃないかと……仕事放棄みたいな感じにしちゃって（笑）。

森・ASA-CHANG　ははは（笑）。

──「せんたくもの」は打楽器のないシンプルなアレンジで、森さんのメロディを前面に出したナンバーですね。ミニアルバムのオープニングナンバーでもあります。

河野　そう。アルバムの曲のラインナップを伺っていたんで「じゃあその中にこういうのがあってもいいか」って作ってみたら、この曲がまさかの1曲目になるという。

森　今回は曲順をすっごい考えたんですよ。いろんな挑戦を詰め込んだ分、1曲目で「いつもの森恵だ」って感じてもらいたかったから「せんたくもの」を1曲目にしました。その次に「ハンターグリーン」っていう、かぶっていた猫を脱いだようだ曲を持ってきたんですけど（笑）。

「ユメオイビト」が築いたもの

──シンプルな「せんたくもの」からジャジーなアレンジが大胆に施された「ハンターグリーン」に。こちらのプロデュースはASA-CHANGさんが担当されてます。

森　前作を作ったときに「まさにASA-CHANG」って言えるような、冒険した曲をまた一緒にやりたいと思ってて。すぐ「ハンターグリーン」の曲のデモができたので「これはもうASA-CHANGさんだって思って。今回もうまいこと料理していただきました。

ASA-CHANG　そうだったんですね。超変化球みたいな楽曲にしてしまってかわいそうだったかな？（笑）

森　いえいえ、私も変化球にしてもらいたくてボールを用意しましたから。こういった意外性のあるアレンジの曲を最初から歌いたいっていう気持ちはあったんですけど、アルバムの並びとしてはあまりに異なるテイストの曲なのでどうかなって意見もスタッフ間であって。一時は「ちょっと置いとこう」ってことになりそうだったんです。でも「いろいろ挑戦しようって言ってるんだからこれぐらい歌わせて！」って私が言って独断でやることにして。

河野　変化球っていうより隠し球だね。

森　そうなんです。

──ASA-CHANGさんはどういう考えでこのアレンジに？

ASA-CHANG　チャレンジしたいっていう雰囲気を感じたから……まあ役割というか、私はこういうタイプのプロデュースワークしか取り柄がないから。「ASA-CHANGだったら普通じゃないことをやってくれんじゃないか」っていうのが森さんから伝わってきたので。もちろんポップスを作る上では丁寧なリズムを作る必要性もあったと思うんですけど。「せーの」でバーンとやっちゃっていいんじゃないかなって思って、ちょっとリズムの精度が落ちてもいいから一発で仕上げるみたいなものをね。

河野　いやカッコいいなって思いました。僕も頼みたいですもん（笑）。

ASA-CHANG　いやあ、でもやっぱり最初に「ユメオイビト」っていうちゃんとした太い道が見えていたので、その道の途中に「ハンターグリーン」を置くっていう冒険ができたんじゃないかなって思ってます。

森　そうですね。その結果「ユメオイビト」「ハンターグリーン」がミニアルバムの二本柱になったので私としては本当にありがたかったです。