ナタリー PowerPush - mondaysick

架空の映画館「九月七日座」へようこそ 札幌在住バンドが伝える新作の魅力

mondaysickの主演の座は誰にも譲りたくない

──飯濱さんが脚本家、あるいは監督だとすると、鎌田さんは主演俳優の立ち位置だと思うんです。飯濱さんが作った曲を表現するとき、どういうことを注意していますか?

鎌田 最後まで絶対に主演を演じ続けなければいけないし、そうあり続けたいと思ってます。まだまだ至らない部分も、未熟なところもたくさんあると思うんですけど、一貫して僕が思ってるのは、mondaysickの主演の座は誰にも譲りたくないってことなんです。

──なるほど。

鎌田 最終的には飯濱さんが書いてきた歌詞の世界をちゃんと自分で理解して、「何も言わなくても歌を聴かせれば、鎌ちゃんはちゃんとわかってくれるから」っていうふうになりたいんですよ。そしてステージでも、歌って演じるっていう感覚をまず自分がちゃんと理解して、聴かせるだけじゃなくて「観せる」部分も重視したい。聴くだけだったら別にCDでもいいけど、やっぱり「mondaysickはライブだよね。ほかのバンドとは何かが違うライブをするよね」って言われるようなバンドになりたいです。そのためには僕を含めたメンバーみんなが「観せる」っていうことに対して、いろいろ意識的にならなきゃならないと思います。

──そういう意味では、mondaysickのライブって生で演技をする舞台みたいな感覚に近いのかもしれないですね。

鎌田 そうですね。だからこそ、いろいろ習得しなきゃいけないこともあるだろうし、実際に演技の世界から盗まなきゃいけない部分もきっとあると思いますよ。

死は悲しいことだけどちょっと憧れもある

──mondaysickの歌詞で、ひとつ気になる部分があって。いろんなストーリーがある中で、死を感じさせる歌詞が多いと思ったんですが、そこは意識的なんですか?

飯濱 僕の中で死っていうのは浄化するもののように捉えていて。例えば会社や学校で特に仲も良くなくて、どっちかっていうと嫌な奴だなって思ってた人が亡くなったとき、すごくショックであると同時にその人のいいところが見えてくることってあると思うんです。死を通じてその人の人生、生きてきた道をきれいにしてくれるっていうか、美しく見せてくれるっていう意識が僕の中にあるのかもしれないですね。

──そういう意識って、昔からあったものなんですか?

飯濱 はい。縁起でもないかもしれないけど、僕の中には自分の葬式を見てみたいっていう気持ちがずっとあって。僕が死んだらどれくらいの人が悲しんでくれるんだろうとか、どれくらいの人が僕の葬儀に集まってくれて涙を流してくれるんだろうとか考えるんです。死って、人にとって最後のステージじゃないですか。死は悲しいことなのかもしれないけど、ちょっと憧れみたいなものも感じるんですよね。でも、別に死にたいとかそういうことじゃないですよ。

──飯濱さんの歌詞の面白いところは、例えば「姑獲鳥」の歌詞では主人公の奥さんが亡くなったことは直接表現されていないんだけど、突然「遺影」って単語が出てきてハッとさせられるというか。そういう言葉のセレクト、表現方法が本当に絶妙だなと思うんです。

飯濱 直接的に死について言ってるわけじゃないけど、喪失を連想させる言葉っていうのはどうしても出てきちゃう。やっぱり、人を浄化してくれる死というものに憧れがあるのかもしれないですね。とはいえ、自分の大切な人には死んでほしくないんですけど。

北国で生まれ育ったからこそ出せる音が誇り

──mondaysickは現在も札幌を拠点に活動してます。北海道にこだわってる部分というか、地元を離れずにいる意義は何かあるんでしょうか?

飯濱 冷たい空気感をまとった音っていうか、北国で生まれ育ってる人間が集まって音楽を鳴らすと、本州では「札幌っぽいよね」「冷たい感じがする」ってよく言われるんです。この土地で生まれ育ったからこそ出せる音だと思うし、そこに対しては誇りを持ってます。だから、本州に行ったときもMCで鎌ちゃんが「こんばんは。札幌から来ましたmondaysickです」って必ず挨拶するんです。もちろん全国的に知名度が上がってほしいっていう気持ちもあるし、ローカル感は嫌なんだけど、北国代表って気持ちは常に持ってますね。

──実は東京でmondaysickのアルバムを聴いたときと、千歳空港から札幌に向かう道中に聴いたときで、音の感触が違って聴こえたんですよ。自分の思い込みかもしれないですけど、雪が降って空気が冷たく澄み切った北海道の環境にぴったり合ってるというか、この空気だからこそ生まれた音なのかなって。北海道にたどり着いて、改めてそう感じました。

飯濱 確かに本州の空気とは違いますよね。凛と凍てついてるけど、すごくきれいな空気っていうか。

鎌田 キラキラしてますよね。でも、そうやって違って聴こえたっていうのはうれしいです

飯濱 僕の地元は旭川なんですけど、氷点下41.0℃っていう日本の最低気温を記録した町で。すごく寒くて晴れた日には、ダイヤモンドダストが空気中でキラキラ光るんです。だから寒いけど冬は大好きで、すごく美しい季節だと思います。

ミニアルバム「九月七日座」 / 2011年11月23日発売 / 1500円(税込) / Yumechika Records / HTBY-1101 / Amazon.co.jpへ

CD収録曲
  1. 折れない十字架
  2. うたうのは
  3. 姑獲鳥
  4. スターとレイン
  5. Gen
  6. 風が止んだら
mondaysick(まんでーしっく)

鎌田勇佑(Vo)、飯濱壮士(G)、金子裕幸(G)、中村之則(B)、清水崇(Dr)からなる、札幌を拠点に活動するロックバンド。飯濱を中心に2007年12月結成。幾度かのメンバーチェンジを経て、2009年5月に現在の編成となる。2010年11月に北海道TSUTAYA限定シングル「インターネットローカルニュース」をリリース。翌2011年3月には初のミニアルバム「school」を発表し、北海道内を中心に好セールスを記録した。同年4月には新曲「風が止んだら」をiTunes Store、music.jpにて期間限定配信リリース。同作品の売上は、日本赤十字社を通じて東日本大震災の被災地に全額寄付された。5月からは関東および関西でライブツアーを実施。11月に2ndミニアルバム「九月七日座」を全国リリースした。