水樹奈々インタビュー|塞ぎ込んだ世界に愛と喜びを!明るいパワーで突き進む2年半ぶりフルアルバム (3/3)

アーティスト水樹奈々を育んだ愛媛の県民性

──「全力DREAMER」は水樹さんの地元である愛媛のNHK松山「ひめDON!」のテーマソングとして書き下ろされた楽曲で、すごく前向きな勢いのある曲ですね。番組からはどのようなオーダーが?

番組のディレクターさんから「POP MASTER」(2011年4月発売のシングル)や「SUPER GENERATION」(2006年1月発売のシングル)みたいな曲を、というリクエストがありました。駆け抜けていく疾走感が心地よく、それでいてノスタルジックで甘酸っぱい青春っぽさもあるこの曲に出会って、これだ!と。愛媛は自分を育ててくれた場所で……のど自慢大会に出るために必死で練習したり、たくさんのイベントやお祭りで歌ったり、本当に思い出の詰まった場所なので、夢があふれる街で流れるのにぴったりな曲にしたかったんです。

──歌詞は水樹さんご自身によるものですね。

幼少期のことを振り返りながら書きました。いろいろ思い出していたら……夢を追いかけているときの気持ちって、恋をしたときと似ているなと思ったんです(笑)。夢に近付くためには、この人に近付くためには、といっぱい試行錯誤するじゃないですか。そして「すごく知りたい!」と考える。そんな気持ちになぞらえつつ、この曲は情報番組のテーマソングでもあるから……「情報を知りたい!」という気持ちにもつながるなと(笑)。

水樹奈々

──なるほど(笑)。

何かを知りたい!と好奇心が芽生えるときの気持ちや衝動、エネルギーをリンクさせるように書いていきました。

──ちなみに水樹さんにとって愛媛のよさというのは、端的に表すとどういうところですか?

みんなお祭り好きなんですよ! 我が地元には「新居浜太鼓祭り」という大きなお祭りがあって、そこに向けて一直線! 10月にお祭りが終わったらもう次の10月のことを考えている(笑)。そして、文化芸術に力を入れる教育方針もあって、小学生の頃から「個を伸ばす」ということに意識的な教育を受けてきたんです。私のように放課後の課外活動というか(笑)、勉強以外のことに熱心に取り組んでいる子にも優しい地域だったんです。家族だけじゃなくみんなが応援してくれた。お祭り好きの血と個を伸ばすという風潮があったからこそ、今の私があると思っています。

──ちゃんと県民性が血肉化されているわけですね。

はい。もちろん道後温泉や東洋のマチュピチュなど素敵な観光地もたくさんありますが、自分が育った場所としての愛媛のよさを考えると、そういう県民性が浮かびます。

恋愛=アンコール?

──14曲目は水樹さんが作詞のみならず作曲も行っている「HOME」です。音楽的には水樹さんが好きだという渋谷系の血筋も少し感じる軽やかなポップスだけど、まさに今の時代だからこそのメッセージがもっとも強くポジティブに書かれていて。そしてツアーでファンと再会することも念頭に置かれた内容でもありますよね。

はい。曲を作るにあたって、いつもプロデューサーの三嶋(章夫)さんからいち作家として依頼があるんです(笑)。今回は「ミディアムテンポで明るいけど泣ける、夏を感じさせる曲」というオーダーがあって。しかもリファレンスとして挙げられた過去の曲は「夏恋模様」や「恋想花火」というラブソングで、「また難しいのが来たな」と(笑)。自作曲として恋愛の曲を書くのは、今回のアルバムのテーマとズレてしまうような気がして、1カ月くらい悩みました。それで一度、恋愛から離れて「夏の曲で明るいけど泣ける……」と連想していたら、ライブのアンコールの景色が浮かんだんです。幸福感で満たされた空間、でももうすぐ帰らなきゃいけないという切なさ……「これだ!!」って。

──恋愛と共通する感情を見つけた、と。

そこからは早かったです。「今日は最高だったね! でももうすぐ終わってしまう」というあの名残り惜しさ。あの感情をそのままメロディと歌詞に落とし込みました。「地球」より熱く青いという壮大な歌詞になっちゃいましたけど、私にはそう見えているんです(笑)。

──挙げ句「歌う」と書いて「生きる」ですからね。

あはは(笑)。それは今年の1月にひさしぶりのステージに立ったとき(参照:「会いたかったー!!」水樹奈々、2年4カ月ぶり有観客ライブで伝えた深い愛)に感じた気持ちそのものです。改めて私は歌とともに生きているんだ!って。

──そしてラストは、このアルバムが持つポジティブなパワーを象徴するような、疾走感あふれるナンバー「Go Live!」です。このアルバム終盤の新曲3曲が持つ明るさは、特に「今この時代に聴く音楽」としてグッときました。そんな3曲が最後に畳みかけてくる構成も素敵だなと。

これまでのアルバムでは、シングル曲がマイナー調でシリアスなものが多いから、こういう前向きで明るい曲は点在して配置されることが多かったんです。でも今回は、ライブのセットリストを組むように曲順を構成したので、明るい3曲が最後に固まる形になりました。まさに“DELIGHTED”な気持ちで、アルバムを聴き終えたときに爽快な気分になってほしくて。バラードの「Stand by you」が本編ラストで、この3曲はアンコールゾーンのイメージです(笑)。中でも「Go Live!」は、できあがった瞬間に「これはアルバムのラストに置きたい」と直感で思いました。

──ラスト3曲の徹底したポジティブさで、「DELIGHTED REVIVER」=“喜びいっぱいで復興させる人”というアルバムタイトルに込められたメッセージが明確になっていると感じたし、心が救われるリスナーも多いのではないかと思います。

そう言っていただけるとうれしいです。明るいニュースの少ない今、気持ちをアゲるアイテムも少なくて。気軽に友達に会えないとか、旅行にも行けないとか、ライブに行っても声が出せないとか……いろんなことを気にしながら生活する日々が続いている中で、このアルバムを聴いて少しでも笑顔になってもらえたらうれしいです。

安心してください、激しいですよ

──そして7月16日にはこのアルバムを携えての全国ツアーが始まります。水樹さんの自作曲から付けられた「HOME」というタイトルが冠されていますが、これは今までのズバッとした勢いを感じさせるツアータイトルとは趣の異なるネーミングですね。

そうなんですよ。夏のツアーは今まで活発なイメージのタイトルが多かったので、「HOME」と聞くとどこか穏やかな印象があるかもしれませんが、安心してください。いつも通り激しい内容になってます!(笑)

──(笑)。

アルバムを聴いていただければ「なるほど」と思っていただけるかなと。もちろん新曲だけではなく、「ツアーが戻ってきたんだ!」とみんなに実感してもらえるような、お馴染みの曲も用意しております!

──「俺たちの“HOME”はここだったんだ!」みたいな。

そう感じていただけたらうれしいです! なので夏らしく攻め攻めです(笑)。3年ぶりのツアーなので、私もしっかり体力を付けていかなくては!と思っています。ぜひ皆さんもしっかりと体を温めて来てください! あと、今回のツアーでは初めての茨城公演があるんです! 「HOME」というタイトルを付けたのはそこにも理由があって。これでついに47都道府県すべてでライブを行うという夢が叶うんです‼︎ 日本を1周ぐるりと回って“HOME”ベースに戻ってくるというイメージです。

──なるほど。ひさしぶりのツアーとなると不安な要素もあるとは思うんですけど、今のところは楽しみのほうが大きい?

めちゃくちゃ楽しみです! 3年ぶりですよ! 全公演、土日土日で連戦になるので体力勝負。だからおいしいものをたくさん食べて駆け抜けます!!(笑)

公演情報

NANA MIZUKI LIVE HOME 2022

  • 2022年7月16日(土)兵庫県 ワールド記念ホール
  • 2022年7月17日(日)兵庫県 ワールド記念ホール
  • 2022年7月30日(土)茨城県 日立市池の川さくらアリーナ
  • 2022年7月31日(日)茨城県 日立市池の川さくらアリーナ
  • 2022年8月6日(土)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
  • 2022年8月7日(日)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
  • 2022年8月13日(土)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2022年8月14日(日)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2022年8月20日(土)愛知県 日本ガイシホール
  • 2022年8月21日(日)愛知県 日本ガイシホール

プロフィール

水樹奈々(ミズキナナ)

愛媛県出身の声優アーティスト。1997年に声優としてデビューし、「魔法少女リリカルなのは」「ハートキャッチプリキュア!」「NARUTO -ナルト-」といったアニメ作品で人気を集める。2000年にはシングル「想い」で歌手デビュー。2009年6月にリリースされたアルバム「ULTIMATE DIAMOND」で、声優アーティストとして初のオリコン週間ランキング1位を獲得した。同年12月には「NHK紅白歌合戦」に初出場。2011年12月には声優アーティスト初の東京ドームコンサートを2日間にわたって開催し、大成功に収めた。声優として第一線で活躍しながらコンスタントに作品を制作し続け、2021年10月には通算41枚目のシングル「Get up! Shout!」を発表。2022年7月に14枚目のオリジナルアルバム「DELIGHTED REVIVER」をリリースし、全国5都市10公演のライブツアー「NANA MIZUKI LIVE HOME 2022」を行う。