ナタリー PowerPush - 宮本笑里×多和田えみ

異色対談で語る「私の沖縄、日本、音楽」

宮本&多和田から見た「沖縄」「日本」

──アルバムのテーマになっている沖縄についても話を訊かせてください。宮本さん、多和田さんから見た沖縄の魅力ってどういったところでしょう?

対談風景

多和田 東京に出てきて思うのは、沖縄って楽しくて明るくて、自然にも恵まれていて、なんかこう「ザ・沖縄」みたいな印象もありつつも、戦争とか本土返還とかいろんな歴史がありますよね。無意識にだと思うけど、島の人たちはコンプレックスやネガティブな気持ちをどこかで抱えていて、時間が経過するにつれそれが消えるどころか積み重なって独特なエネルギーみたいなものになっている気がするんです。でも、そういったつらい経験を活かして、人間に対する不安感や緊張感をほぐしてくれたりとか、そのネガティブな気持ちが何かの拍子にポジティブなものに変化することもあると思うんですよ。

──悲しみを知っているから、よりやさしくなれるみたいな。

多和田 はい。もちろん東京にもすごくあったかくて素敵な方がたくさんいらっしゃるので、逆に東京に出てきてから、より「沖縄もそうだったよな」って強く感じるようになりましたね。

──なるほど。宮本さんはどうですか?

宮本 沖縄の人はとにかくあたたかくて、皆さん他人に対する壁がなくて、本当に親戚みたいに歩み寄ってくれるところが素敵だと思います。あとは「沖縄時間」というか、時計を気にせずにゆったりした時間を自然と感じることができるところ。東京にいると無意識に急いじゃう自分がいるけど、沖縄はそういうことを忘れさせてくれる空間で、私にとって大切な場所だと思ってます。

──また、2人とも海外での生活経験がありますが、海外で生活したことで沖縄を含む日本に対する見方は変わりましたか?

宮本 日本も海外も、それぞれの良さがあると思います。日本で生活して海外に行くと、「やっぱり海外はいいな、住みたいな」って思ってしまうんですけど、でもヨーロッパで過ごしていると日本がいかに発達した国かを改めて感じるし。本当にないものねだりというか、どちらにもいいものがあるから難しいですね。

多和田 実際に海外で生活すると気持ちもオープンになったり、チャレンジ精神が芽生えたりして楽しいですけど、人間関係や食べ物や街の空気で「ここは異国なんだ、自分は日本人なんだ」って痛感することもあって。

──日本の外に出ることで日本人であることのアイデンティティを再確認するというか、ずっと中にいたら気付かない部分もありますものね。

多和田 「やっぱおいしい寿司が食べたいな」って思ったりして(笑)。そういう部分も含めて改めて、日本人でよかったなって、日本に対する愛を再認識しました。

音楽を通じて感じる日本人と外国人の違い

──では音楽についてはどうでしょう。海外に出たことで改めて感じる日本の音楽やアーティストの魅力ってどういうところですか?

対談風景

宮本 私の場合はクラシックというジャンルにおいて、海外と日本との違いはいろいろあるなって思います。ヨーロッパにも本当に素晴らしいアーティストや奏者がたくさんいるんですけど、日本のアーティストは技術面が本当に優れていて。海外の方からもそういう声はよく聞きますね。

多和田 私はもともとブラックミュージックが好きで、日本にいながら海外のそういったジャンルを聴いていたんですね。日本のシーンも海外からの影響を少なからず受けていると思うので、音楽性の違いはほとんど気にならなかったんですけど、私はシンガーなので歌の表現の仕方だったり、骨格の造りで声の響き方がすごく変わることだったり、それこそ海外に行っていろんなものを観たり聴いたりしたことで気付いたこともあって。そこから、好きなものや憧れているものに近づくために自分のアイデンティティを壊すくらいなら、もっと日本人独特の部分を理解して、自分なりのテイストでシンガーとしての新しい存在感を築いていけたらなって、意識するようになったんです。

──「日本人の多和田えみ」だから作れる音楽や歌があるってことですよね。

多和田 はい。自分を知ることで、新しいものに挑戦していかなきゃ、表現していかなきゃって思うようになりましたね。

──そういう意味では、今回のコラボレーションはまさにうってつけだったのでは?

多和田 まさに(笑)。私にとっては未知の世界でしたし、すごく勉強になりました。

──それでは最後に、アルバムを楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いします。

多和田 これから聴いてくださる皆さんにとっても、今まで体感したことがないような、すごく大きくてあたたかいものに包まれることになると思います。なので、まっさらな気持ちで聴いていただけると、いろいろ受け取れるものが詰まっている作品なんじゃないかなと思ってます。

宮本 1曲1曲をいろんなアーティストの皆さんと大切に作り上げましたし、完成して私も本当に幸せです。聴いてくださる方々の背中をポンと優しく押して、皆さんが前を向いて歩いていけるようと気持ちを込めて演奏したので、その思いやメッセージが届くといいなと願っています。

対談風景

コラボレーションアルバム「大きな輪」 / 2011年8月17日発売 / Sony Music japan International

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CD収録曲
  1. 明日への路 (feat. 上間綾乃)
  2. 花~すべての人の心に花を~ (feat. 喜納啓子Ohana)
  3. 島唄 (feat. 多和田えみ)
  4. one (feat. ORANGE RANGE)
  5. 朝日 (アコースティック・ヴァージョン) (feat. 玉城千春)
  6. 愛は私の胸の中 (feat. 宮沢和史)
  7. ボーダーレス・ジンジン (feat. 喜納啓子Ohana)
  8. 童神 (feat. Sandii)
  9. 涙そうそう (feat. 中孝介)
  10. Stay With Me (feat. 前川真悟 from かりゆし58)
  11. 大丈夫 (feat. jimama)
  12. さとうきび畑 (feat. 普天間かおり)
  13. ハイサイおじさん (feat. Eddie)
  14. シューベルトのアヴェ・マリア (※初回盤のみボーナストラック)
初回盤DVD収録内容
  • 「明日への路」
  • 「明日への路」ミュージック・ビデオ・メイキング
  • 『大きな輪』制作ドキュメンタリー
宮本笑里(みやもとえみり)

宮本笑里

バイオリニスト。14歳のときにドイツ学生音楽コンクールデュッセルドルフ第1位に入賞し、小澤征爾音楽塾・オペラプロジェクト、NHK交響楽団、東京都交響楽団定期公演、宮崎国際音楽フェスティバルなどに参加。これまでに徳永二男、四方恭子、久保陽子、店村眞積、堀正文に師事する。テレビドラマ「のだめカンタービレ」にオーケストラのメンバーとして出演したほか、サッポロビール「ヱビス<ザ・ホップ>」CMキャラクターとして父である元オーボエ奏者・宮本文昭と共演するなど、デビュー前からメディアに多数出演。2007年7月にアルバム「smile」で本格的なデビューを果たす。その後もコンサート活動やテレビ番組のテーマ曲担当など、精力的な音楽活動を展開。CHEMISTRYやDEEN、福山雅治、K、中孝介との楽曲コラボや、アメリカ人ボーカリストJadeとのユニット「Saint Vox」結成、エリック・マーティン(MR.BIG)やソリータなど海外アーティストとの共演など、国籍やジャンルを超えた幅広い活動でその存在感をアピールしている。

多和田えみ(たわたえみ)

多和田えみ

沖縄県宜野湾市出身。2005年、高校卒業後カナダ留学中にストリートジャズバンドに参加し音楽に目覚める。帰国後、ナンクル沖縄で活動開始。県内限定シングル「ネガイノソラ」がインディチャートNo.1に輝く。2007年11月に活動の拠点を東京へ移し、2008年4月に全国デビュー。「FUJI ROCK FESTIVAL」をはじめ、多数の大型ライブイベント出演やテレビCMソング担当、クラブ系アーティストのゲストボーカルなど多方面で活躍する。これまでに2枚のシングルと3枚のEPを発売し、2009年11月、待望の1stフルアルバム「SINGS」を発売。2010年3月に村上てつや(ゴスペラーズ)をプロデューサーに迎え制作された3rdシングル「Lovely Day」、6月には全国6都市ワンマンライブ「SINGS OF SOULS live 2010」のステージを収録したCD+DVD2枚組ライブアルバムを発売した。ブルースやソウル、ジャズ、ファンクなどブラックミュージックから強く影響を受けたサウンドと、ときに激しく、ときに優しく聴き手に訴えかけるソウルフルな歌声が高く評価されている。