ナタリー PowerPush - MINMI
豪華ゲストと築き上げた“愛せる作品”
自分の本能に従って聴きたいものを聴いていこう
──それにしても多種多様な14曲が見事1枚にまとまりましたね。サンバ、EDM、ハウス、ラバーズレゲエ、音頭、R&B、ロックなど、幅広い音が堪能できるアルバムですが、MINMIさんにとってはジャンルの壁なんてあまり関係なさそうですね。
もう今さら考えてないですね。今は特に自分の好きな曲も、なんていうジャンルかわからないものも多いですしね。これからどんどんそうなっていくんじゃないかっていうワクワク感もあります。
──これからの自分がですか?
これからの自分もそうだし、世の中を見ててもそう。例えば前はサブカル的な人とおしゃれな人って交わってなかったけど今は交わってきていたり、私の好きな曲でも、ラップをしてる人が白人で歌を歌ってる人が黒人だったり、今ロックをやってる人たちが実はヒップホップを聴いて育っていたり。本当に入り乱れていろんな要素があるから、また新しいものが生まれる予感があるのですごくワクワクして期待してます。
──なるほど。その感覚は昔とは違いますか?
初期の頃は、ジャンルにまつわることですごくふがいない気持ちになることはたくさんあったんですよ。まずクラシックのピアノを習ってるときに、「ジャズに興味を持っちゃいけない」って先生に言われたり、今度はジャズを聴いてたときに勉強でジャズバーに歌いに行ってたんですけど、普段レゲエが好きだって言ったら「そんなの聴いてちゃいけない」って。それから、クラブで歌ってた時代は「レゲエを歌ってるのになんでヒップホップのイベントに行くんだ」っていうことで先輩に呼び出されたり。そういう経験がすごく多くて。でももともとヒップホップの人になりたくてやったわけじゃないし、レゲエの人になりたくてやったわけじゃなくて、その音楽に心が惹かれたから、自分の感じる音楽が素敵だなと思うからなんです。自分の本能に従って聴きたいものを聴いていこうっていう気持ちが今までずっとあって。
──それを実践して、MINMIさんはデビュー当時からジャンルをクロスオーバーしていたとは思うんですけど、「I LOVE」を聴いて今が一番自由だなと感じました。
確か「Natural」を書いたあたりから、そういうのを堂々と脱ぎ捨てていきたいなって思い始めましたね。全員に好かれようとするより、自分の感性を信じて進みたいって。それについてきてくれて、聴いてくれる方がいたからこそ、今回も自分が愛せる音でアルバムを作ろうと思えたんです。
「M」「i」「N」「M」「I」アルバム5作
──冒頭でもチラッとお話されていましたが、この5枚目で歴代のアルバム頭文字を並べると「M」「i」「N」「M」「I」が完結するんですね。
そうなんです。今までまったく意識してなかったんですけどね。制作の途中でスタッフの1人が気付いて、それに乗っかったっていうところで(笑)。
──とは言えこんな機会もあまりないので、過去のアルバムに対して今だからできる評価や当時の自分のことを教えてもらえたらと思うんですけど、お付き合いいただけますか?
もちろん! うれしいです。
1stアルバム「Miracle」(2003年3月19日発売)
本当にがむしゃらにがんばっていた感じが、自分で聴いていても思うし、それに力ももらいます。あのときは、日本でももっとR&Bやレゲエっていう音楽を知ってもらいたいっていう気持ちでいっぱいで。そのカッコよさを聴いてほしいっていう気持ちで、音楽もファッションもカルチャーもそれ一色でした。まっすぐだったっていう気がしますね。
2ndアルバム「imagine」(2004年6月30日発売)
「imagine」はね、忙しくて全体を思い出せないんですけど……この頃の私はそうだ、スランプど真ん中だったんです。
──どういうスランプだったんですか?
私はちょっと遅いデビューだったんですけど、音楽家になりたいっていう大それた夢を10年ぐらい持っていて、なんとか粘ってデビューしてミラクルを起こすんだって思ったんです。だけど、いざ山に登ってみたら、次何をしていいかわからなくなっちゃったんですよね。プロのシンガーになりたいって思ってやってきて、なっちゃったら何をしていいかわからなくなっちゃった。R&Bとかレゲエの魅力を表したいって思ってやったけど、うーん、続けていきたいことはそれなのかな?……って思ったし。あとは自分の生活自体も、デビューしてバンッて変わって、曲を書く時間とか音楽を楽しむ時間がほとんどない中で曲を作らなきゃいけなくて……。
──歌ってればいいだけじゃないですもんね、MINMIさんの場合は。
そうそう。もっと言うと友達と会ったり、恋したりっていう時間も急になくなっちゃって。私の欲しかった生活って、東京に1人暮らししてベランダで泣くことなの?みたいな。でもそこで自分のイマジネーションをいろいろ広げて模索してる感じが、このアルバムにいっぱい出てるんです。今聴いてもその模索してた感じを思い出します。
──だから「imagine」というタイトルなんですね。
谷の部分です。私の。でもやっぱり好きですね。
3rdアルバム「Natural」(2006年3月29日発売)
さっき言ったように、この「Natural」でやっと自分らしいものを正面から躊躇せずに選んでいこうと思えて。世間の意見を探ったり、誰かに憧れたり、こう見せたいと思う自分じゃなくて、もっと等身大のところに自分らしさっていうのが見えるのかなって。それを表現したいなって思い始めたアルバムですね。ジャンルとか垣根をもっと振り切って自分らしさを探していこうって踏み出すきっかけになりました。ここはすごく転機ですね。
4thアルバム「MOTHER」(2010年7月7日発売)
そして「Natural」があったから「MOTHER」っていうタイトルを付けられたんだと思います。「M」から始まる言葉を付けようと思ってたけど、「MUSIC」とかほかの案もいろいろあって。っていうのも、自分の思ってる“歌手”ってリアリティよりも夢を与えることのほうが重要なんじゃないかなとか、恋の曲をずっと歌っているのに、母親である現実って見せる必要あるのかなって思ってたんですね。だけど自分のプロデュースの仕方を考えて「ナチュラルでしょ、私は」と。ここにこんなに大きな感動とか葛藤があるなら、もうこれをバンッと出すぞと。母だからできない、母だから我慢するんじゃなくて、みんなが母になりたいと思うような母像をイメージしたいなと思って作りました。母であるからこそ書けた作品だと思います。
5thアルバム「I LOVE」(2013年7月24日発売)
──ここまでの話を踏まえると、今のMINMIさんが言う「I LOVE」と、1stアルバムや2ndアルバムの頃に言う「I LOVE」ではその意味や重さが違うような気がします。
そうですね。
──大きな質問になってしまいますが、今のMINMIさんにとって愛とはなんですか?
難しいことを聞きますねえ。
──すみません(笑)。
うーん……。(しばらく考え込んで)許すことと、いい可能性を信じること。今、子供に置き換えて考えてみましたけど。
──未熟なときはいろんなことが許せなかったりしますから、今のMINMIさんはやっぱり朗らかな姿勢で生きてるんですね。
でも許せない時期っていうのも、すごい大事ですよね。何かにこだわりがあって、自分がいいと思うことを突き詰めたり、違うものは違うって思うことは絶対にムダではないと思うんですよ。私もそうだったから、あの時期は必要だったなと思っています。
- 5thアルバム「I LOVE」/ 2013年7月24日発売 /Far Eastern Tribe Records
- 初回限定盤 [CD+DVD] 4500円 / UMCF-9634
- 通常盤 [CD] 3059円 / UMCF-1095
CD収録曲
- Lavender
- Intro
- さくら ~永遠~ feat. 湘南乃風
- TONITE
- 風に乗せて
- ラララ ~愛のうた~
- I LOVE
- この世が闇だと言わないでおくれ feat. サンボマスター
- CHIKAのテーマ
- 君がスキ
- エンゲージリング
- Ribbon
- Skit ~あの夏~
- ポジティブ音頭 ~D.P.P~ feat. SHINGO★西成
初回限定盤DVD収録内容
<MINMI 10周年Tour “雨のち虹” ~Rainbow after the rain~ 2012年12月31日大阪城ホールライブ>
- 太陽の下で
- マカナ
- Teo Teo
- Lotta Love
- 想い出がいっぱい
- 平成の乙女 feat. KENTY GROSS
- サマータイム!!
- The Perfect Vision
- Miracle
- imagine
- Natural
- MOTHER
- アベマリア
- 初夢 ~カウントダウン
- 真夏のオリオン
- ラララ ~愛のうた~
- ハイビスカス
- パッと花咲く feat. BES
- ピンク帽子のドレミファソ
- シャナナ☆
<Music Video>
- ラララ ~愛のうた~
- エンゲージリング
- さくら ~永遠~ feat. 湘南乃風
MINMI(みんみ)
大阪出身の女性シンガーソングライター。2002年にシングル「The Perfect Vision」でメジャーデビューを果たし、いきなり50万枚を超える大ヒットを記録。翌2003年のアルバム「Miracle」も売り上げ60万枚を突破し、一躍シーンの注目を集める存在となる。その後も「サマータイム!!」「西麻布伝説」など数々のヒットソングを発表しており、楽曲制作のみならずダンスアレンジまで自ら手がけている。また湘南乃風らとクラブイベント「西麻布伝説」のオーガナイズや、ジャマイカでのレーベル「ZAREK」の立ち上げ、自身が主催する大型野外フェス「FREEDOM」を毎年開催するなど、幅広い分野で活躍。2013年7月には5thアルバム「I LOVE」をリリースした。現在3人の子供を持つ母でもある。