8. Shed a light
──ECCジュニアのCMソングとしてオンエアされた楽曲ですね。
未来に向かっていく人たちの背中を押せるような曲になるといいなと思って作りました。コロナで大変な時期だったというのもあって、光を求めている感じがありますね。不安の中で足を進めて、その先をつかんでいくというテーマは、今思うと「Fly High」とつながるところもあるかな。「進んでいくあなたのそばに必ずいる」というメッセージが共通しています。
──今回のアルバムは、1stアルバムに比べて力強い曲が増えましたね。
当時の状況から這い上がりたいと思っていたんですよね。このまま暗い感じで暗い曲を作っていたら気持ちがやられてしまうから、自分自身も後押しできるような曲を作りたいと思っていました。
9. 邂逅
──「Loved By You」のように叶わない恋を歌う切ないナンバーです。
これは実話というわけではなくて、私の頭にある映画のような映像がずっと忘れられなくて作った曲です。星空の下で2人が巡り会うけど、その仲を分かつ壁が生まれて触れ合うことができなくなって、「もう今世では会えないから来世でまた巡り会おうね」と約束を交わすという物語。珍しくタイトル先行でした。作ったのはデビュー前で、TomoLowくんと曲作りを始めた頃、ホントに初期の曲ですね。
──そういえばデビュー時のインタビューで、心象風景から曲が生まれるとおっしゃっていましたね。
そうなんです。その初期の作り方で生まれた曲です。このアルバムは最新の曲からデビュー前のものまでいろんな時期の曲が入っているんですけど、初期の楽曲があると旧友がいてくれるようで心強いです。
10. jam with iri
──miletさんが初めてゲストを迎え入れたコラボレーション曲ですね。
とても、うれしかったです。ずっとiriさんのファンだったので。この曲は誰かとコラボしたいなあと思いながら作って、iriさんのパートは空白のままちょっと寝かせていたんです。男性ボーカルが合うかなと考えていたんですけど、このアルバムに入れたいと思ったときにパッと浮かんだのがiriさんでした。iriさんは男の子っぽい声も出るし英語の発音もきれいだし、絶対合うと思って、「ぜひお願いしたいです」っていうオファーと長文の曲解説を送りました。
──2人の声のニュアンスが少し違うのがいいですよね。
自分の作った歌詞やメロディを、iriさん節で歌ってもらえるのがすごくうれしかった! しかもiriさん、「miletちゃんの発音を真似したところもあるんだよね」って言ってくれて。「Can I be」というフレーズを私は「カナビ」と発音するんですけど、iriさんが「私そこ、一緒の感じで歌う」と言ってくれて、しっかり聴き込んでくれてるんだなって感動しました。彼女らしい気だるい雰囲気も醸し出してくれているし、ほんとiriさんとでよかったなって思います。
──この「jam」にはどんな意味があるのでしょうか?
恋愛に煮詰まっちゃってるという意味と、ジャムには“好きな曲”っていう意味もあって、「あなたのジャムになりたい」っていうダブルの意味があります。まだ始まったばかりの恋愛関係にいる2人がなかなか先に進めなくて、キスもできずにちょっと煮詰まっちゃってる。でも本当はあなたの1番のお気に入りになりたいのっていう、ちょっと気弱なパートをあえてiriさんに歌ってもらっているのがポイントです。
11. Come Here(Session1)
実はこれ、ドック(Ryosuke "Dr.R" Sakai)と最初に会って「はじめまして」の日に作った曲。だからSession1と付けています。
──なるほど、そうだったんですね。デビュー前に「ちょっとこの人と曲を作ってみて」とムチャぶりされたときですよね(参照:milet「inside you EP」インタビュー)。
そうなんです、それがこの曲。メロディもトラックも歌詞も当時のままで、歌だけ少し録り直しました。「あのとき、よく『はじめまして』でこの曲作ったよね」なんて話をしながら。歌詞は自分の恋愛事情を包み隠さず書いていて、別れても私より素敵な人に出会ってほしくないというちょっとわがままな気持ちを歌っています。私はこれが自分の曲の中で一番好きで、いつか出せたらと思い続けていたのでうれしいです。
12. The Hardest
──「Who I Am」と同じくドラマ「七人の秘書」の主題歌で、劇中では終盤の印象的なシーンで流れていました。
ドラマ内で2曲も主題歌として使っていただけることはなかなかないですし、私もドラマにサプライズで出演させていただいたりして、すごく思い出深いです。私の周りではこの曲が一番好きって言ってくれる方たちも多くて、お母さんも大好きって言ってくれました。
──曲の世界に浸って、一緒に歌い上げたくなるんですよね。
わかります。歌謡曲の感じがありますよね。私の曲は何小節かのパートを繰り返す洋楽的なものが多いけど、この曲は一連のメロディになっているところが珍しいかも。歌詞もいつもの英語先行ではなくて、サビ頭を日本語にして、誰もが馴染みやすい曲を作ることを心がけていた時期だったので、それが響いてくれたのがうれしいです。
13. Wake Me Up
「モーニングショー」のために書いた曲で、“朝の光”がテーマです。夜明けからどんどん日が昇っていく時間の経過を描きたいと思って、静かめのAメロで始まり、弾けるようなサビで朝日がパーッと広がる感じを表現しました。
──バグパイプの音色が新鮮に響きます。
新しい楽器を入れてみたくて、制作しているときにイントロでバグパイプが使われている楽曲が流れてきて、「これいいな、始まる予感がするなあ」と思って。バグパイプは力強さを感じるけれど、私の「Wake Me Up」では草原のような清々しい景色が見える音にしたいなと思って、いろんな音色を聴き比べていく作業が面白かったですね。
14. Ordinary days
この曲は2021年のハイライト! 昨年はこの曲を作れたことが一番うれしかったです。自分で自分を励ますような歌を作れたのが初めてだったし、何より誰かを思って作れたのがうれしくて。この曲は妹や、私の歌を聴いてくれてるけどなかなか会えない人たちに向けて書いた手紙みたいな曲なんですけど、ホントに思いを込めた分だけ届いたという実感があります。大変な日常の中で、この曲がみんなの心に響いてくれたのがうれしかった。私が全編日本語で歌詞を書くのは珍しいんですけど、この曲に関しては全部ちゃんとひと言も漏れずにみんなに届いてほしいと思いながら書いていたら、自然とこうなりました。
──アレンジは蔦谷好位置さん。この曲が初タッグとなりました。
サビだけできた状態で「この曲を一緒に広げていきたいです、お願いします」って持ち込みで一緒に作らせていただきました。コード進行やブリッジの展開、サックスが生きて暴れているような感じとか、ホント蔦谷さんにしか引き出せないものだと思います。イントロから胸がきゅっとなる。この曲をきっかけに蔦谷さんとは3月に発売される新曲「Flare」を制作しました。
15. One Reason
──ついにラストの曲です。アニメ映画「鹿の王」の主題歌となった曲ですね。
原作を読み進めていくと、緑の苔や、土の匂い……体を包み込むような濃い空気感が頭の中にどんどん広がってきて、その世界に入る感じで作ったらすぐできていました。物語では血のつながっていない親子の愛が大きなテーマになっているんですけど、自分も日頃すごく愛を感じながら生きているので理解しやすかったです。
──壮大な旅の終わりのようにも、また始まりのテーマにも聞こえますね。
そう、このアルバムにはいろんな旅があります。「One Reason」のように広大な緑の中を行くものや、「邂逅」のように夜の中を行くもの……「SEVENTH HEAVEN」では世界中のいろんな空港名をちりばめてますし、いろんな景色が見られると思います。
──それでアルバム名を「visions」に?
前作の「eyes」はみんなからの視線の温かさを感じて、そのお返しをする気持ちで作ったんですけど、「visions」は聴いてくれたみんながこれからもっと新しいものを見て、それぞれの「visions」を作っていってほしいし、自分も作っていきたいという思いを込めました。
──それぞれが見る景色、という意味で複数形の「visions」なんですね。デビューから約3年が経ちますが、miletさん自身の“vision”もすごい勢いで変化していると思います。
そうですね、見える景色がどんどん変わっていきます。駆け抜けすぎだろうって思う(笑)。2021年はオリンピック(閉会式で「愛の賛歌」を歌唱)のような大きな出来事もあったし、何より「SEVENTH HEAVEN」ツアーで全国のみんなに会えたのがすごくうれしくて、想像していたより何倍も大きな喜びであふれていましたね。
エネルギー源は「ゆで卵瞑想」
──怒濤の毎日だと思いますが、その中でささやかな楽しみや、日々のエネルギーになっているものはありますか。
最近の楽しみは、朝起きてすぐ台所でゆで卵を無心で茹でる時間です。私は「ゆで卵瞑想」って呼んでるんですけど。沸騰したお湯の中で踊るゆで卵をぼーっと見て、できたら塩をかけて食べる。
──「ゆで卵瞑想」って、すごいキャッチーですね(笑)。
あんまり理解されないかもしれないけど(笑)、今、1日の中で一番好きな時間です。仕事が忙しいときとか朝に時間を作るのって大変じゃないですか。そういうときこそ、ゆで卵瞑想。10分あればできるので。
──よく聞くモーニングルーティンといえば朝一番に白湯を飲むとか……。
私はゆで卵を食べてプロテインを飲みます!(笑) 丸1日制作してると平気で1kg減っていたりするので、体力を付けていかないと。
──ホントその通りですね。家にこもりがちで体がなまってる感覚もありますし。
ぜひ皆さんもタンパク質をとって、強くなっていただきたいです。私も強くなるから、みんなちゃんと動いて食べて、ツアーでお会いしましょう!
ライブ情報
milet「milet live tour "visions" 2022」
- 2022年1月22日(土)神奈川県 相模女子大学グリーンホール
- 2022年1月29日(土)北海道 カナモトホール(札幌市民ホール)
- 2022年2月1日(火)埼玉県 川口総合文化センターリリア
- 2022年2月5日(土)福岡県 福岡サンパレス ホテル&ホール
- 2022年2月12日(土)大阪府 フェスティバルホール
- 2022年2月13日(日)大阪府 フェスティバルホール
- 2022年2月20日(日)新潟県 新潟テルサ
- 2022年2月23日(水・祝)広島県 上野学園ホール
- 2022年2月27日(日)宮城県 仙台サンプラザホール
- 2022年3月6日(日)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- 2022年3月12日(土)東京都 東京国際フォーラム ホールA
プロフィール
milet(ミレイ)
ハスキーかつ重厚感のある歌声が特徴の女性シンガーソングライター。思春期をカナダで過ごし、現在は東京都内に在住している。2018年に本格的に音楽活動を開始。同年10月にパリ、ニューヨーク、ソウルなど世界各国で開催されたイヴ・サンローランのイベント「YSL BEAUTY HOTEL」の東京・表参道ヒルズ会場でライブパフォーマンスを披露した。2019年3月にドラマ「スキャンダル専門弁護士 QUEEN」のオープニングテーマ「inside you」を含む4曲入りの「inside you EP」でデビュー。その後もドラマ「偽装不倫」の主題歌や、「ヴィンランド・サガ」「Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-」といったテレビアニメのテーマソングを担当し幅広いリスナーを獲得する。2020年6月に1stフルアルバム「eyes」を、シングル「Who I Am」をリリース。年末には「第71回NHK紅白歌合戦」に初出場を果たす。2021年は4月に映画「映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット」の主題歌「checkmate」を、8月にドラマ「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」の主題歌「Ordinary days」をリリース。2022年1月より全国ツアー「milet live tour "visions" 2022」を開催中。2月に2ndフルアルバム「visions」を発表した。
シンガーソングライター milet(ミレイ) Official Web Site
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