ボーカリストが決まってから曲を作り始める

──そしてこのアルバムでは豪華なフィーチャリングボーカリストが起用されています。GREAT3の片寄明人さん、NONA REEVESの西寺郷太さん、元キリンジの堀込泰行さん。

うん、彼らにお願いして歌ってもらうからには「Mellowheadで歌えてよかったな」と思ってほしい。それがものすごいモチベーションになりました。そのためにどれだけボツ曲を書いたかわかんない（笑）。

──こんなにパーソナルな世界観を持ったアルバムなのに、他人の声が入ってきても成り立つというのがMellowheadの面白い点だと感じます。

俺の場合は絶対自分で歌わなきゃっていうのがないから。誰かが最高の声で歌ってくれればそれでいいって、最初から思ってましたからね。

──まずボーカリストの人選ありきで、それにあわせて曲を書いていく？

はい。歌ってくれるっていうOKをもらってから曲を作り始めてます。

──例えば「この曲は女性の声が似合うから女の子に歌ってもらおう」ということだったらわかるんです。または「自分には歌えないファンキーな曲ができたからファンキーなボーカリストを連れてこよう」とか。

はいはい。

──でもMellowheadの場合はそういうことじゃないわけですよね。

うん、「この人とやりたい」っていうのが先ですね。

──今回参加している3人は皆さん同世代です。90年代にシーンに登場して、そこからずっとやり続けて今40代になっている同士として、やはりシンパシーは感じますか？

それはすごくあります。いろいろ苦労もあるんだろうけどみんな楽しそうにやってるしエネルギッシュだし。いい成長をしてきたんだなって思う。あとやっぱ単純にこれだけ生き残ってる人たちの声って、もう普通じゃないんですよ。レコーディングで聴いて「うわ、すげえわこれ！」って思う。声自体に含まれる成分が異常に魅力的というか、音としてすごいというか。

──なるほど。

そういうすごい声の人と自分のプロジェクトでやれる、オファーしてOKもらえるっていうのは、本当に幸せな立場だと思います。だったら全力でやるしかないだろうって。

歌えるようになったのは最近のこと

──アルバムのボーナスディスクには、3人のために書いた曲を深沼さん自身が歌ったバージョンも入っています。

そうなんだけど、これがね、全曲オリジナルに及ばない（笑）。レーベルスタッフにも「深沼には悪いけど全部オリジナルのほうがいい」って言われたしね。

──悔しいですか？

いや、それでいい。それがうれしいんです。だって彼らのために書いた曲だから。

──深沼さんは自分のボーカルについてはどう評価してるんでしょうか？

最近は弾き語りやったりとか、佐野（元春）さんのバンドでもほぼ全曲コーラスやったりとかで、自分でもちょっと歌えるなあと思うようになってきた。

──最近ですか（笑）。

もともと自分の歌にそんなにプライオリティを置いてないんですよね。バンドで暫定的にボーカルやっててそのままデビューしちゃっただけだから。まあ自分の曲だからがんばって歌うけど、パッと歌い出しただけでみんなが振り向くような歌い手ではないと思ってて。

──でも、だからといってMellowheadで全曲誰かに歌ってもらおうとは思わないわけですよね。

やっぱそのへんはね、やっと歌えるようになってきたし、20年やってきた意地もあるからね（笑）。