アルバムの原型は高3の頃にあった
──7曲目「TO THE YOU (ME) I MET BEFORE」は最初にも話に出たタイトルトラックですが、このタイトルは、曲が生まれたときにはもうあったんですか?
8曲目の「LOVE」が、僕が17歳で高校3年生、まだバンドをやっていた頃に作った曲なんですけど、この「TO THE YOU (ME) I MET BEFORE」というタイトルもその頃にはありました。その時点でこのタイトルのアルバムをすでに一度作っていたんです。内容は、「LOVE」が入っていることだけが同じで、それ以外はまったく違うものなんですけど。なので、このアルバムの原型は高3の頃にはありました。
──そうなんですね。
そのとき、「このアルバムを俺らの宅録で終わらせるのはもったいない」という話をしていたんです。もっとしっかりとしたエンジニアさんに頼めるようになったときに、ちゃんとした環境で作ろうと。……と言っても、その頃から作詞・作曲・編曲は全部僕なので、話し合っているふうに見えて、今の発言は全部、僕なんですけど(笑)。
──なるほど。「TO THE YOU (ME) I MET BEFORE」という言葉自体は、野本さんが高校3年生の時点であったというのは驚きました。意訳すると、「かつて私が出会った、すべてのあなたと私へ」ですよね。そのうえで、「YOU (ME)」というのが「夢」とも読めるという。
「夢」か……そこはマジで気にしていなかったです。そういうことにしておこうかな(笑)。
──(笑)。
高校生の頃、このタイトルについて思っていたのは、「生まれ変わりがあったら素敵だな」ということです。まったくスピリチュアルな意味ではなくて、フィクションとしてなんですけど、実際、説明できない人との縁ってあるじゃないですか。もはや前世や来世でつながっているような気がしないでもない、みたいな。そういう出会いってあると思うんです。それって人と人との縁だけではなくて、「高校生の頃にあの曲を聴いて救われた」とか、そうやって音楽に出会って衝撃を受けることも縁のひとつだし、そう考えることができたら素敵だよなと。そんな思いを込めたタイトルでもありますね。
17歳の頃に生み出し、大切に温めてきた「LOVE」
──先ほど話に出ましたけど、8曲目「LOVE」は、野本さんが17歳の頃に作られた曲なんですよね。野本さんにとって、「LOVE」はどんな曲ですか?
ずっと「これがあるから大丈夫だ」と思える。そういう曲です。この曲を作ったときからずっと、「この先どう転んでも、この曲があれば大丈夫」「こんなに素晴らしい曲が書けるんだから、この先迷っても平気だ」という思いがあるんです。この曲のサビを作った高3のときのボイスメモは今までいろんなタイミングで聴き返してきました。これをどう展開させるかをずっと考えてきた。今、ようやく形にできました。
──最初からタイトルは「LOVE」だったんですか?
もともとは「絆創膏」というタイトルだった覚えがあります。タイトルは悩みましたけど、このアルバムの物語のラストの一端として、自分の集大成のような曲に「LOVE」と名付けられたら、もう怖いものはないよなと思って。それでタイトルは「LOVE」にしました。
──歌詞も以前からあったんですか?
一番からサビの歌詞は前からあって、2番の歌詞は今回作りました。いろんな人のことを思い出しながら書きましたね。音楽を始めてから関わってくれた人もそうだし、中学生の頃とかの、音楽を始める前からの友達のこともそうだし。ちょっと恥ずかしいくらいの歌詞が書けてよかったです。
エンドロールでNGシーンが流れるような幸福感
──そしてインスト曲の9曲目「YOU」、シングルリリースされていた10曲目「MERMAID」があり、このアルバムは締めくくられます。恐らく、このアルバムは「LOVE」にひとつの着地点があり、エンドロールのような形で「MERMAID」がある、という構成になっているのかなと思うのですが。
そうですね。
──「YOU」から「MERMAID」に至る流れはどのように考えられていましたか?
「YOU」にも佳輝さんの「寂」をサンプリングしています。この曲は、アラームが鳴って、夢から覚めていく様子を表現したくて。そこから「MERMAID」につながるんですけど、もともと「MERMAID」はこのアルバムではなく、前のEPに入れる予定だったんです。でも、デモの段階で周りの人に聴いてもらったら「すごくいい曲だ」と言ってくれたから、アルバムに入れることにしまた。「このアルバムにコンセプト外の曲が入るのはどうだろう?」とちょっと思ったんですけど、夢から起きたあとの展開を考えたら、この曲はドンピシャでハマったんです。歩き出すようなリズムの曲だから、「MERMAID」がアルバムの最後に入るのは、すごく美しい締めくくりになるんじゃないかと。
──シングルリリースされたとき、「MERMAID」は「彩度100%の楽しい思い出を表現した」とコメントしていましたね。
はい。エンドロールでNGシーンが流れるような幸福感というか。
──この曲が最後にあることで、アルバム全体に肯定的なイメージが付与されるような感覚がありますね。
ありがとうございます。そう思ってもらえてよかった。
──内容を詳しく解説していただく必要はないですが、今作の歌詞を書く体感は、今までと違うものでしたか?
そうですね。シンプルに、歌詞の書き方が今までよりもわかった感覚があります。例えば、ビートレスの曲にちょっと言葉を詰めると、英語とか日本語とかが関係なくなるくらいふくよかな響きになる。SEEDAみたいな、あの日本語ラップの「どういうこと?」と思うような譜割りの感じが生まれる。「歌詞は音節に無理やり当てはめる必要はない」というのは今回、大きな気付きでした。それに気付いてからは、散文詩みたいに書けましたね。
──その書き方ができるようになったことで、この先、歌えることも増えた感覚もありますか?
ありますね。心情とリンクする言葉の書き方ができるようになったので、書けることは広がったなと思います。今までは「断定したいのに音と言葉が合わないから断定できない」みたいな瞬間がよくあったんですけど、そういうことがなくなるだけで、歌えることは増えますね。
──最後に。この「TO THE YOU (ME) I MET BEFORE」というアルバムを作り上げられて、野本さんは何かを得た実感はありますか?
「得た」というか、「話せた」。そんな気持ちですね。こういうことを恥ずかしがらずに音楽にできる自分自身に自信がつきました。さらけ出せた分、1歩前に進めたかなと思います。やっぱり作っている間がすべてで、パッケージされたあとの評価とか、プロモーションとか、そういう部分は芸術の本質とは一切関係のない部分だと思うんです。今、このアルバムができた時点で「なんとなく幸せだな」と思えている自分がすべてなんじゃないか。そんなふうに思います。
公演情報
Meg Bonus "TO THE YOU (ME) I MET BEFORE"
2026年4月29日(水・祝)東京都 大手町三井ホール
プロフィール
Meg Bonus(メグボーナス)
2005年⽣まれのシンガーソングライター&プロデューサー・野本慶によるソロプロジェクト。全曲において野本慶自身が作詞、作曲、プロデュースを担当。洋邦ジャンルを問わずさまざまな音楽を吸収した肥沃なバックグラウンドから生まれる前衛的なトラックに乗せて普遍的かつポップなメロディを鳴らし、各方面より注目を浴びる。2024年10月、初の作品集「18PERSONAL」をリリースするとともに本格的に活動開始を開始し、2025年2月から現体制に。12月に初のワンマンライブ「Lossy」を東京・新宿MARZで実施した。2026年4月に2ndアルバム「TO THE YOU (ME) I MET BEFORE」を発表し、東京・⼤⼿町三井ホールにて初のホール公演を行う。
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