1週間会えないだけでも寂しい
──「私は知りたい。」はジャズの雰囲気がある楽曲です。これも妄想から生まれた曲なんですか?
これは「知りたい私は知らないあなたを知っていくうえで」というフレーズが浮かんできたのが最初ですね。語呂がいいなと思って、「これってつまりどういう意味だろう?」と考えながらどんどん歌詞を膨らませて。そこから“分かり合えない人同士の恋愛”というテーマに着地しました。お互いのことを知りたくて夢中になってる感じも歌いたくて。誰かに夢中になってる人って、ほかで何が起こっててもまったく気にならないくらい相手と向き合ってるじゃないですか。「それくらい誰かに夢中になれたらいいのに」と思ってしまう時点で、実際はそこまで相手を好きになれていない……というのが着想の1つですね。
──「Pitapat」は心地いいテンポ感とかわいらしいメロディが1つになったミディアムチューンです。
仲のいい女友達が2人いて、2年くらい前に山梨に遊びに行ったんですよ。そのときに2000円台のオムライスを食べて、スワンボートに乗ろうとしたら「まだ寒いから、もうちょっと暖かくなってからにしようよ」と拒否られて、ハーブ園でハーブティーを飲んで。あと、めっちゃ高級なホテルのラウンジでコーヒーだけ飲んで、宿泊してる人のフリをするという遊びもしました(笑)。旅での出来事をスマホにメモしてたんですけど、それを読み返して懐かしいなと思って、ラブソングにしたら面白いかもなって。恋人になりそうな人との旅行をテーマに作りました。「最初から 旅行なんて行かなきゃよかった」という歌詞もあるんですけど、それはネガティブな友達の言葉がもとになってるんですよ。例えばバーベキューしていて、「楽しすぎる。来なきゃよかった」みたいなことを言うんだけど、その考え方が面白いなって。
──楽しいことがあったあとの寂しさが嫌なんですね。
そうそう。曲のBPMは歩くときくらいのテンポだったり、“リラックスした休日”をイメージしたサウンドを目指して。ドライブとか散歩のときに聴いてほしいです。
──「Homesick」はオルタナ的なサウンドの楽曲ですね。これも新機軸では?
カッコいいですよね! この曲でもギターをがんばって弾いてみたんですけど、絶妙なズレがガレージ感につながってるかも(笑)。ベースも7年くらい前に買った中古なので、音がベロンベロンなんですよ。歌詞はタイトルそのままなんですけど、ホームシックがテーマですね。今年の3月に「SXSW 2024」(アメリカ・テキサス州オースティンで開催された音楽、映画、インタラクティブをテーマにした複合イベント)に行ったとき、ファンや友達に会えなくなるのが寂しすぎて。まず1番だけ作って、それを置き土産みたいに公開して。帰国してから2番を作りました。「おはよって送ってもおやすみなんでしょ」という歌詞は、アメリカと日本の時差を表しました。この曲もちょっとラブソングみたいに聞こえるかも。
──ファンの人に会えないのって、そんなに寂しいんですか?
寂しかったですね。と言っても会えない期間は1週間くらいだったんですけど(笑)。友達に送別会を開いてもらって、そのときも「1週間だろ」って言われました。
呪いみたいなタイトルしか思いつかなくて
──「とっておき」もこのアルバムのポイントだと思います。「今日を生きて 明日を夢見てる」「とっておきたい日があること ここに記します」という歌詞が素晴らしいなと。
ありがとうございます。「とっておき」は最後の最後に滑り込みで作った曲なんですけど、私もめっちゃ神曲だと思ってます。トラックもがんばったし、メロディも歌詞もなるべくわかりやすくして。「幸福ミュージック」を超えるようなポップチューンを作ろうと、勝手に自分と戦ってたし(笑)、代表曲になったらいいですね。なんていうか、“ハコ”をイメージしてたんですよ。
──ハコ?
そう。私の歌詞って、どうしても具体的になりがちだし、自分の価値観が全面に出すぎることがあって。例えば「最後のお願い」の「そのアーティスティックな事情とか 私の幸せに持ち込まないで!」とか、わかる人にしかわからないかもなって。あと「Pitapat」の「ラスコンに駆け込んで夜食を買うの」もそう。ラスコンは“目的地に着く前の最後のコンビニ”という意味なんですけど、私の仲間内でしか使ってない言葉なんですよ。
──それはわからないですね(笑)。
そういう言葉を取り除いたのが「とっておき」なんです。「光を線にして ゴールテープみたいに切る」もそうですけど、抽象的なフレーズを使うことで、いろんな人のいろんな場面にマッチするかなと思っていて。具体的なことを歌うというより、みんなが入ってきやすい“ハコ”みたいな曲というか。多くの人が共感できることを意識したのは初めてだし、「うふふ」は、それぞれが自由に解釈しながら聴いてもらえるアルバムになったんじゃないかなと思います。
──「うふふ」というアルバムのタイトルも、“ハコ”っぽいですよね。愛らしくもあり、不思議なところもあって、いろんな受け取り方ができるので。
そうなんです。最初は「部屋とYシャツと私」(平松愛理)みたいな長めのタイトルも考えたんですよ。でも、「人を傷付けた日にも曲を作った」とか、呪いみたいなタイトルしか思いつかなくて(笑)。いろいろ出した中で、「うふふ」が一番いいじゃん!ってなりました。
言いたいことは曲で言う
──アルバムのリリースに先駆け、コンセプトライブ「全曲眉村ちあき」も開催されました(参照:眉村ちあきがラブソングのみのライブ、最後は唯一無二の声で“ブチ落とす”)。全5公演で、これまでリリースしてきたアルバム6作品の全楽曲を披露しようと思ったのはどうしてですか?
「全曲歌うライブをやってみたい」という話は以前からしていて。ファンのみんなと一致団結できる場所というか、「やりきったぞ!」みたいなテンションになってから新しいアルバムをリリースしたらさらに盛り上がるんじゃないかなと。ここで一度おさらいしたい気持ちもあったし、5thアニバーサリーでもあるからちょうどよかったんですよね。
──なるほど。デビュー5周年についてはどんなことを思ってますか?
えーと、全然ないです(笑)。まだ5年だし、まだまだなって。活動を始めて1年くらいしか経ってない感覚なんですよ、私の中では。そう言えばこの前、Mr.Childrenさんのライブ(「Mr.Children tour 2024 miss you arena tour」)を観させてもらったら「50周年を目指します」みたいなことを言ってて。「私もそうしよう!」と思いました。
──5周年の次は50周年(笑)。でも、この5年間でかなり変わったんじゃないですか、眉村さん。
変わったと思います。5年前はどこにいるかもわかってなくて、何をしてるかもわからないまま息をしてた感覚で。自分の行動がどんな影響を及ぼすかも、自分の発言が誰にどう思われるかも「知らないよ」みたいな感じで生きてたんですけど、だんだんと考えながらしゃべるようになった。めっちゃラジオ(眉村がパーソナリティを担当しているTOKYO FM「Roomie Roomie!」)のおかげだと思います。
──視野が広がって、トラックメイクの技術も上がって。曲の幅も広がり続けています。
最近、言いたいことは曲で言えばいいなと思ってるんですよ。あとはライブで「秘密ね」と前置きして話すか(笑)。なので曲はまだまだ作れます。アルバムに入れられなかった曲もたくさんあるし、本当にちょっとしたきっかけで作れるようになってきて。まだまだ作りますよ!
眉村ちあき フォトギャラリー
公演情報
眉村ちあき New Album「うふふ」発売記念リリースイベント in 東京
- 2024年12月7日(土)東京都 歌舞伎町シネシティ広場
Chiaki Mayumura Tour あはは いひひ うふふ えへへ おほほ
- 2025年1月18日(土)東京都 Spotify O-Crest
- 2025年1月25日(土)神奈川県 横浜BAYSIS
- 2025年2月8日(土)埼玉県 HEAVEN'S ROCK Kumagaya VJ-1
- 2025年2月9日(日)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
- 2025年2月15日(土)鹿児島県 SR HALL
- 2025年2月16日(日)福岡県 INSA
- 2025年3月2日(日)千葉県 KASHIWA PALOOZA
- 2025年3月29日(土)愛知県 新栄シャングリラ
- 2025年4月19日(土)北海道 SOUND CRUE
- 2025年4月20日(日)宮城県 space Zero
- 2025年4月29日(火・祝)広島県 CAVE-BE
- 2025年5月7日(水)大阪府 Music Club JANUS
- 2025年6月8日(日)東京都 WWW X
- 2025年6月28日(土)沖縄県 桜坂セントラル
Chiaki Mayumura Tour うふふ After Party でゲソタコ
- 2025年6月29日(日)沖縄県 Output
プロフィール
眉村ちあき(マユムラチアキ)
アイドル、シンガーソングライター、トラックメイカー、実業家。“弾き語りトラックメイカーアイドル”を自称している。グループアイドルとして活動を行ったのち、2016年に眉村ちあき名義でソロ活動を開始。2017年に株式会社会社じゃないもんを設立し、現在は取締役会長を務めている。2019年にTOY'S FACTORYからメジャーデビューを果たし、2020年には東京・日本武道館でワンマンライブ「日本元気女歌手 ~夢だけど夢じゃなかった~」を開催。TBS「はやドキ!」テーマソングの「この朝を生きている」、日清食品「カップヌードル PRO」CMソングの「顔ドン」、映画「レディ加賀」の主題歌「バケモン」などさまざまなタイアップソングを手がけている。最新作は2024年11月リリースのアルバム「うふふ」。
眉村ちあき Chiaki Mayumura (@chichiyan1207) | Instagram