凄腕ギタリスト・Ichika Nitoが徹底レビュー!Marshallスピーカー&イヤフォンの魅力 (2/3)

Ichikaファン必読、音作りのこだわり

──先ほど「Acton III」を触っているとき、イコライザーで低音を上げていましたけど、Ichikaさんのギターサウンドって実はけっこう低音が強いですよね。真似しようと低音を上げてもぼわっとなりがちなんですけど、なぜあんなに締まった低音が出せるんですか?

複雑なプリEQ、ポストEQ、コンプの設定をしていて、出したいところだけ出して余計なところはゴッソリ削るんです。ピアノの左手の鍵盤の役割を前に出したくても、低音側がコードの邪魔をするわけにはいかないし、コードの分離感もきれいに出るようにしたいけど、ギターの1弦から7弦まで細かくしすぎると際限がないから、0から5、5から10、10から15、15から20とフレットごとに縦と横でEQのブロックを作って、全部オートメーションを書いて、システムを作っています。

──めちゃくちゃ細かいですね。

リバーブもフレットごとに長さも深さも変えます。ざっくり言うならリバーブ、EQ、コンプはブロックごとに値を変えてます。

──細かい音作りをしていると、普段のリスニング環境でもいろいろ気になってくることがありそうですがどうですか?

まあ気になりますよ。でもそれはそれで別物として楽しむ頭はあるので。自分の音楽を作り込むためにはこだわるけど、音楽を楽しむという観点からすると、このMarshallのスピーカーは自分にぴったりで。ベースのつまみを少し動かすだけで低音がボンッと上がるんです。自分の音作りでそれはできないけど、例えばカーディ・Bの「I Like It」とかを聴きながらテンションを爆アゲしたいときなんかはそういうシンプルな使い方ができたほうがいいなと思います。

──IchikaさんはIron Maiden好きだということですけど、メイデンの初期アルバムはCD音源だとわりと音がスカスカですよね?

Iron Maidenもそうだし、MetallicaもMegadethも初期はベースの音がカリカリですよね(笑)。でも「Acton III」だとしっかりベースをぶち上げることでその物足りなさを補って、気持ちいい感じになるんです。音楽を楽しんで聴きたいときって、ベースの音ってめちゃめちゃ大事だと思うんですよね。定位感も大事ですけど、僕が一番に求めるのはベースのドライブ感。自分が作っている音楽がハイファイなこともあって、広がりのあるキラキラした音像以上に突き抜けた音像を求めることもあるから、もちろんトレブルも気になってくるんですけど、このスピーカー、トレブルのEQもしっかり効くんですよ。目盛り2つ分上げるとさわやかでクリアな音になるから、本当に気分に合わせて楽しめるスピーカーだなと思います。

コンパクトでパワフルなBluetoothスピーカー「Acton III」

──では改めてスマホと接続した「Acton III」で音源を聴いてみましょう。スピーカーを使うとき、小さい音量にすることはあるんですか?

あまりないので、ここで試してみましょうか。(試聴しながら)って言いながら、無意識に音量上げちゃった(笑)。

Marshall「Acton III」を試す。

Marshall「Acton III」を試す。

──本当に日頃から爆音なことがわかりました(笑)。改めて音量を下げて聴いてみましょう。

(試聴しながら)ああ。音量小さくてもしっかり鳴ってますね。低音も消えてない。

──「Acton III」にはダイナミックラウドネスという機能があり、音量を絞っても低音が落ちにくい、つまり音質が変わらないような作りになっています。

あとサイズ感に対して、音のレンジが広いですよね。

──前モデル「Acton II」よりも音域がワイドな設計なので、音量をあまり出せない部屋での使用にも最適です。

うん。この音量でも音がいいことはわかりました。けど、ついボリュームを上げたくなります(笑)。

──試聴でVeil Of Maya「Godhead」、Unprocessed「Lore」、カーディ・B「I Like It」とメタル、ヒップホップを再生していましたが、アンビエント系をお聴きになることは?

ありますよ。聴いてみますか(ここで白素光「Fantasie No.1 in F-Sharp Major, Stories of a Figure Skater - Day Off」を再生)。うん、いいですね。ピアノピースも聴きやすい。自分の曲「Eternal Feel」を聴いてみたら、ギターのツヤ感もちゃんと再現されてますね。ベースのキレのよさも気持ちいいです。

──曲によってEQ設定を変えてましたね。

曲によってEQをつまみでいじれるのは便利ですよね。ギタリスト的にはアンプ感覚で使えるし、DJの人とかにもよさそう。当たり前のようにキッチンでもEQを操作してるんですけど、このサイズのBluetoothスピーカーでこうやって直感的にいじれる製品ってなかなかないですね。

Marshall「Acton III」コントロール部

Marshall「Acton III」コントロール部

小さくても本格派の防水ポータブルスピーカー「Emberton II」

──続いては「Emberton II」を試してみましょう。このサイズ感のMarshallスピーカーはIchikaさんにとって初体験だと思いますがいかがでしょう?

びっくりした。このコンパクトなサイズで、ここまで定位がしっかりしてるとは思ってなかったです。これ、すごくいいな。この形や見た目からは想像できないレンジの広さ。そして正面が一番いいとは思いつつも、どの位置からでも定位がしっかりして聴こえるんですね。

Marshall「Emberton II」

Marshall「Emberton II」

──「Emberton II」はマルチディクショナル(全方位)サウンドを採用していて、スピーカーの後ろにいても、斜めにいても厚みのある音を楽しめます。

なるほど。ハイの部分もしっかり出ますよね。サイズ的に抑えられた感じのレンジなのかと思ったけど、本当に上から下までしっかり出てます。コントロール類はシンプルで「Acton III」のような無骨さはないけど、このスティックみたいなボタンが使いやすくていいですね。前後の曲にすぐ飛べるし、音量も操作しやすい。これ、防水なんですよね? お風呂場に欲しい(笑)。

──風呂でもアウトドアでも活用できる場面が多そうですよね。

(Iron Maidenの「Wrathchild」を聴きながら)僕、Iron Maidenは1stと2nd(「Iron Maiden」「Killers」)のポール・ディアノ(Vo)のがなり声が好きで。まあそれはともかくとして(笑)、Bluetoothスピーカーはレスポンスがもたつくと地味にストレス溜まるけど、これは自然に使えるし、YouTubeとかNetflixを観るとき、スマホの拡張スピーカー的な立ち位置でも使えそうですね。部屋にスピーカー置く場所がない人でも気軽に手に取れるし。

──ちなみに外で音楽を聴く機会はありますか?

キャンプとかもしないのでそんなにないですね。でもアウトドアで使いたい人にもよさそうです。それと海外に行くときにこれがあるとめちゃくちゃいいなと思いました。僕は今年、20カ国くらい行ったんですけど、そうなるとキャリーケースだけの生活になるんですよね。そんなにいろいろは持っていけないけど、これなら軽いし、サイズもコンパクトだからホテルでの過ごし方が充実しそう。どうしてもホテル滞在だとイヤフォンかMacBookのスピーカーになっちゃうので。自分の海外ライフを豊かにできるなあと思いました。

Marshall「Emberton II」

Marshall「Emberton II」

──ちなみにこの「Emberton II」には“スタックモード”がありまして、複数台で鳴らすことも可能です。

つなげてどうなるんですか?(笑)

──Marshallのスタックアンプから着想を得たモードで、何台もつなぐことで音圧が増すという。

あの“Marshallの壁”の発想をこのスピーカーに取り入れたんですね(笑)。疑似的にスラッシュ(Guns N' Roses)の気分を味わえるというのは、なんとも夢のある話です。