MARiA|ガルニデとは異なる歌と言葉で“ものがたり”を紡ぐ

MARiAに「冷蔵庫」って言わせたい

──6曲目の「キスをしてみようか」は元JUDY AND MARYのTAKUYAさん作詞・作曲、nishi-kenさん編曲のギターロックナンバーで、「マチルダ」との温度差がすごいですよね。

MARiA
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自分でも「おろかものがたり」「マチルダ」「キスをしてみようか」という並びはどうかしてるなと(笑)。この曲は、TAKUYAさんご本人がレコーディングスタジオに遊びに来てくださったんですけど、そのとき「あれ歌えた?」「俺の曲、なかなか歌える人いないんだよね」って言われました。TAKUYAさんに限らず、皆さん「これ歌えますかね?」っていう確認が1回あるんですよ(笑)。これはむしろありがたいことなんですけどね。「キスをしてみようか」は勢いで歌い切った感じです。実は、TAKUYAさんは候補曲を4曲も出してくださったんですけど、私が「『キスをしてみようか』が絶対いい!」と押し通しました。デモを再生した瞬間にビビッときちゃって、この曲を歌っている自分が想像できたんですよ。

──次のjamさん作詞、本間さん作曲の「あー今日もまた」はオールディーズっぽい、シンプルに良質なポップスですね。

ねえ。本間さんのポップセンスが炸裂した、超おしゃれなサウンドに私の声がハマったのが面白い発見でしたね。「私可愛くない 飲んでやる」という歌詞もかわいくて、「キスをしてみようか」とは違う方向性の。ちょっと疲れ気味の私みたいな(笑)。

──8曲目の木村友威さん作詞、nishi-kenさん作曲・編曲の「Brand New Me」は、1980年代後半から90年代初頭の懐かしさを感じさせるナンバーです。

「Brand New Me」は、nishi-kenさんに「ライブでみんなが1つになれる曲が欲しいです」とお願いしてできた曲なんですよ。

──「Brand New Me」はニュージャックスイング的なテイストもあってMARiAさんのルーツの1つであるR&Bに通じると思いますが、ガルニデでは鳴らしてこなかった路線の曲だと感じました。

うん、確かに。これはnishi-kenさんの曲に限らないんですけど、自分が今まで使ったことのない言葉だったり歌ったことのないメロディラインを皆さん書いてくださって。結果として全部の曲がソロのボーカリストとしてのMARiAにハマった感覚があるんです。「MARiAにこんな曲を歌ってほしい」という皆さんの思いに少しは応えられたかな。

──続く「光」は宇宙まおさん作詞、本間さん作曲、清水さん編曲の壮大なバラードです。女性が作詞したのはこの曲と、草野さんの「おろかものがたり」の2曲になりますね。

まおさんは「MARiAに『冷蔵庫』って言わせたい」と、この歌詞を書いてくださったんです(笑)。まおさんいわく、私が「冷蔵庫」と歌っているところは誰も想像できないだろうと。生活感とか身近な事柄はガルニデではテーマにしないので。実際、ファンの方から「MARiAさんって、お米炊くんですか?」って聞かれたことあるんですよ。

──何を食べてると思われているんですかね(笑)。

炊くよ! 炊飯器あるから! さらに「電車も乗るんですね」と言われたこともあるし……。だから「光」の歌詞はみんなびっくりするだろうし、このアルバムを聴いたら「MARiAも1人の女の子なんだな」って思ってもらえるかも。

──このアルバムで新たな“MARiA像”が立ち現れてくるというのも面白いと思います。

すっごい面白いですよね。いろんな作家さんのお話をお聞きしたりして、改めて「私って、そういうふうに見えてるんだ」と思うこともたくさんありました。

MARiAは大和撫子

──アルバムを締めくくるのは、じんさん作詞・作曲、本間さん編曲の「ハルガレ」です。

私はこの「ハルガレ」を絶対に最後の曲にしようと決めていて。その理由は最後の1行が「また季節が 芽吹いてる」だから。要は、最終的に前を向けるアルバムにしたかったんです。なおかつこの曲は内容的に「コンコース」に通じるものがあるというか、私の中で「コンコース」と「ハルガレ」は対になっているんです。どっちも春の歌で、別れがあって、それでも前へ進もうと決意する。だから春から始まって、春で終わって……終わったらまた1曲目に戻ってください(笑)。

──楽曲を手がけたじんさんのことを先ほど「友達」とおっしゃっていましたので、プライベートでも交友があるんですよね?

はい。じんくんとタッグを組むのはひさしぶりなんですけど、彼とは青春を共に生きているような感覚があって。じんくんは私の1個上で、個人的な悩み相談とかもしょっちゅうしてる親友なんです。楽曲をお願いしたあとも長電話でいろんな話をしたんですけど、そこで「ハルガレ」のヒントが浮かんだらしいです。「MARiAちゃんって、どうなってもMARiAちゃんなんだね」とか「迷っても何回でもぶつかっていくよね」みたいなことを言っていて。「ハルガレ」ができあがったときも「とんでもなくいい曲できちゃった」って、自信満々でした(笑)。

──実際、アルバムの最後を飾るのにふさわしい、和のテイストあふれるシンプルにカッコいい楽曲に仕上がっていると思います。

じんくんは「MARiAちゃんからは和の要素をすごく感じる」「大和撫子だ」とも言っていたんですけど、私は「嘘でしょ? どこに感じてるの?」と(笑)。名前もMARiAだしこんな髪色してるし。でも「見た目じゃなくて、魂に奥ゆかしさを感じる。だから和のメロディが絶対ハマる」と言ってくれてうれしかったですね。思い返せば私も「極楽浄土」(GARNiDELiAのアルバム「Violet Cry」収録曲)を作ったりしているから、もしかしたら和のイメージが根付いているんじゃないかって、ちょっとじんくんの言っている意味がわかるような気がしました。アルバム全体に通じている“日本人の音楽”という芯みたいな部分もそうでしょうし。

──「ハルガレ」は本間さんのアレンジも面白いですね。2番はスカっぽくなりますし、ボカロPのじんさんの曲なので曲調的にエレキギターなりシンセなりでもっとバキバキさせてもハマりそうですが、メインはアコースティックギターとストリングスという。

確かに、バキバキにしなかったことで「ハルガレ」の儚い感じが生きたと思います。本間さんとじんくんってすごいコラボじゃないですか? たぶんこのアルバムじゃなければ実現しなかっただろうし。そういう異色の組み合わせもこのアルバムでは楽しんでもらいたいですね。

──アルバムリリース後の6月5日には東京・豊洲PITでライブが予定されています。どんなイベントになりそうですか?

ちょうど今、そのミーティングに入っているんですけど、アルバムをレコーディングしているとき自分の中にいる別の自分を発見した不思議な感覚があったから、この「うたものがたり」をライブで表現するなら、全部じゃないけど、物語的な見せ方ができたらいいなと思っていて。まだ構想を練っている最中なんですけど、MARiAのソロじゃなきゃできないライブステージになると思いますので、お楽しみに。

ライブ情報

MARiA Live2021「うたものがたり」

2021年6月5日(土) 東京都 チームスマイル・豊洲PIT OPEN 16:00 / START 17:00 全席指定席 7800円 ※1Drink別

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