音楽ナタリー PowerPush - AOMORI ROCK FESTIVAL '14~夏の魔物~

吉田豪が問い詰めた私生活、DPG、魔物

ボタンをどんどんかけ違えていった

──そもそもSILLYTHINGはなぜ終わったんですか?

SILLYTHINGがなぜ終わったか……。覚えてないんですよ。あんまり過去のことに興味ないんで。

──単純に人間関係?

人間関係です。前のインタビューの時点でメンバーはいなくなってたじゃないですか。で、寄せ集めのメンバーというか、ただアルバムの楽曲を演奏できそうなメンバーでやってたんですけど、長い時間を過ごせば過ごすほど温度差を感じて。結局は俺がやりたいことって形だけ集まってライブをするっていうよりは、1つの音についてみんなで考えたいって思ったんです。

──SILLYTHINGはプロレス観の違いでメンバーが抜けていったって話はしてましたよね。

やっぱりそこが問題になってきて、ニュアンスがわからない、どう見せたいかっていうのが。例えば、みんなに「アイアン・マン」(Black Sabbath)を演奏させて、俺と大内(ライダー)さんが甲冑つけてフロアから入ってきても、何も伝わらなかったんです。

──元ネタはThe Road Warriorsですよね。

はい、ロックロックしてるロックの現場の人たちだったんで、ボタンはどんどんかけ違ってきますよね。ツアーに出たりするとより同じ時間を過ごすことが増えるんで、ごはんを食べてても不穏な雰囲気が続いて。これは続けられないなって。

──そういうときに某音楽評論家からの話があると、これはリセットしたほうがいいかなってなりますね。

それで事務所と話し合いして解散っていうか。なのでSILLYTHINGに関しては……。

──そこは全然引きずってないんですね。

はい!(笑) ただ大内さんと出会えたことは本当に大きくて。「サマーロマンサー」っていう楽曲もそうですけど、柱となる部分が全部できあがったなっていう。SILLYTHINGのときはロックバンドのフォーマットに当てはめようとしてたんで、振り切ったことができなかったんですよね。ホントはプロレスラーとやるっていうのが一番いいなってこの頃から思ってて。

──え?

結局どう見せたいかっていうとプロレス的なものなんですよ。あと「サマーロマンサー」で対バンの人とコラボしたり、外部の人をこっちに呼んで料理するっていう猪木さん方式。そこだけよかったんです。SILLYTHINGに関していえば、リキッドルームで和嶋(慎治、人間椅子)さんとROLLYさんと(夢眠)ねむきゅんとコラボしてやったライブだけがちゃんと表現できてて。

──そこで何かが見えたわけですね。

はい。それでよかった部分だけ残して次にいこうって。でもアルバム(「cross wizard」)はすごくいいものができたっていまだに思ってます。

泣きながらかつ丼を食べるぐらいの悔しさ

──そしてDPGへと至るわけですね。

SILLYTHINGが消滅して、「魔物」も外部の人間が増えてきて、ただのお客さんみたいになって。そんなときに2.5Dのねむきゅんが出てたさよポニのイベントにチケットを買って行ったんですよ。スミスさんとねむきゅんの対談だと思ったら、2人でスミネム結成っていうのを目の当たりにして。言ったら僕がきっかけみたいなもんじゃないですか。

──SILLYTHINGの「サマーロマンサー」のPVをスミスさんが監督して、ねむきゅんが出演したわけですよね。

あのイベントの日、「自分も何かやらなきゃいけない」って煽られたんですよ。

──きっかけは作ったはずが、自分のいないところで周りが動いていくのを見て。

成田大致

そうです。関わってる人とかは一緒なんですよ。だから「あれ、なんで今日成田くんいるの?」みたいな。あの日、ステファニー・アユミと一緒に行って、帰りに一緒にラーメン食いに行ったんです。俺はあんまり悔しがることないんですけど、ものすごい悔しくて、それこそ鈴木みのるが泣きながらかつ丼を食べたぐらい悔しくて。

──わかりづらいですけど、SWSでアポロ菅原相手に何もできなかった悔しさみたいな。

初めてそういう気持ちになったんですよ。何かやらなければいけないっていう。で、モヤモヤして東京にいて、偉い人に会って名刺の束がどんどんできあがってくるけど、なんだこれ、みたいな。特に誰とも何もやりたくないけど、何がやりたいんだろうみたいな時期が続いて。で、ステフが「サマーロマンサー」もあるし、これを軸になんかやったほうがいいってことを言ってくれて、そうだよなと思って始まったのがDPGなんですよ。

──そんな時期にDDTからも話があったわけですね。

そうです。その時期に高木三四郎さんに呼び出されて、両国国技館で「なんかやってくれ」って言われて。自分はマッスル坂井さんが好きなんで、坂井さん的な匂いを持ってる人ってなると福田洋くん1人しかいないなと思って。アントンさん(アントーニオ本多)は別として。それで、フクちゃんと一緒にやりたいですって高木さんに伝えて。なのでフクちゃんとやりたい、ステファニーとやりたい、SILLYTHINGの流れで大内ライダーとやりたいっていうのがあったから、みんなにDPGのオーディションに出てもらって、一次審査は受からせるけどあとはガチでいくからっていうことで。

DPGは夏の魔物の架け橋的な“オリキャラ”

──成田さんがDPGを始めるときも、あれが興行だとは誰もわかってなかったじゃないですか。「え、これバンドじゃないの?」って感じで。

あれはどう説明すればいいのかいまだにわかってないです。簡単に言うと“プチ夏の魔物”ですよね。

──DPG興行をライブハウスで続けて、年に一度の「夏の魔物」というビッグマッチにつなげていくっていう。だからバンドとかアイドルが出て試合もあるっていうことですよね。

「夏の魔物」ってこういうパッケージングなんだよっていうのをわかりやすくダイジェストで見せるっていうのがあるんですけど、まったく伝わってないです。まあ、要はPRIDEとかハッスルとかマッスルみたいなものです。

──団体名というよりも興行名ですね。

興行です。そういう空間を作ってるという。よく言うのは「スーパーロボット大戦」もオリジナルキャラクターがいて、いろんな作品の架け橋の役をやってるじゃないですか。「キング・オブ・ファイターズ」もそうだし。つまり、「夏の魔物」っていう空間の橋渡しをするオリキャラみたいなのがDPGなんです。

──「スーパーロボット大戦」やってないとわかんないですけど、いろんな有名なアーティストとかアイドルとかをつなぐオリジナルキャラがあるってことですよね。それがDPGで。

はい。そこが説明できてなくて。DPGを始めたときも、オーディションはガチンコで、加茂(啓太郎、ユニバーサルニュージック)さんとかYouth Recordsの庄司(信也)さんとか、自分がプロレスを感じる人だったり、プロレスが好きな人にオーディションの審査員をお願いしました。加茂さんなんて入り時間しか知らない、何をやるかもわからない状況で(笑)。それでオーディションやって。

夏の魔物ちゃんねる 第弐話

AOMORI ROCK FESTIVAL '14~夏の魔物~

2014年7月21日(月・祝)青森県 夜越山スキー場
OPEN 7:00 / START 8:00

AOMORI ROCK FESTIVAL '14~夏の魔物~

<出演者>
BRAHMAN / でんぱ組.inc / the telephones / 髭 / ドレスコーズ / THA BLUE HERB / 神聖かまってちゃん / 水木一郎 / 蝶野正洋 / 大槻ケンヂ&NARASAKI / 人間椅子 / KING BROTHERS / THE NEATBEATS / 曽我部恵一 / 向井秀徳アコースティック&エレクトリック / 後藤まりこ / 大森靖子 / 田我流 feat. stillichimiya / サイプレス上野 / HINTO / Wienners / アルカラ / アップアップガールズ(仮)/ バンドじゃないもん! / LinQ / Negicco / Especia / lyrical school / BELLRING少女ハート / hy4_4yh / Ladybeard / 寺嶋由芙 / ゆるめるモ! / ULTRA-PRISM / 妄想キャリブレーション / 藤岡弘、 / DJダイノジ / 吉田豪×杉作J太郎 / 掟ポルシェ / クリトリック・リス / ベッド・イン / 久保ミツロウ+能町みね子 / うしじまいい肉撮影会 / 岸田メル / KAMINOGE ROCK FESTIVAL '14(マッスル坂井、井上崇宏) / MC. アントーニオ本多 / DDTプロレスリング / DPG VS ブラックDPG / DJテンテンコ(ex. BiS) / 小林ゆう / and more

夏の魔物前夜祭

2014年7月20日(日)青森県 青森サンシャイン
<出演者>
川本真琴 / 大森靖子 / 撃鉄 / 快速東京 / DJテンテンコ(ex. BiS) / DPG VS ブラックDPG / and more

DPG VS ブラックDPG ニューシングル「スーパーエンタメ大戦 夏の魔物エンタメユニット DPG VS ブラックDPG」2014年6月25日発売 / 1080円 / 虎の穴レコード
DPG盤 [CD] DQC-1304 / ジャケット写真:タイコウクニヨシ
ブラックDPG盤 [CD] DQC-1305 / ジャケットデザイン:岸田メル
VS盤 [CD] DQC-1306 / ジャケットデザイン:河野さち子
収録曲
  1. キカイノココロ
    作詞:只野菜摘 作曲:浅野尚志 G:ROLLY
  2. ダダダダダン
    作詞:只野菜摘 作曲:小池雅也
  3. キカイノココロ(FUNKOT魔改造 BY DJ JET BARON)
    Remix:高野政所
成田大致(ナリタダイチ)

1986年青森県生まれ。2006年、19歳のときに「AOMORI ROCK FESTIVAL~夏の魔物~」を主催し、個人による手作りフェスとして話題を集める。以降「夏の魔物」は規模を拡大しつつ継続中。2013年春からはオーディションでメンバーを集めた新プロジェクト「DPG」を発足し「世の中とプロレスするバンド」をキャッチフレーズに、新たな活動をスタートさせた。