majiko|闇の時期を抜け、夜明けへ

つながりから生まれたコラボ曲

──the band apartの荒井岳史さんが手がけた「Learn to Fly」はまさにライブで盛り上がりそうな曲ですね。

そうですね。荒井さん、ホリエさんが出演したアコースティックライブ(2017年7月に東京・TSUTAYA O-EASTで行われた「虎渓三笑ノ巻」)で、いきなりホリエさんに「来ちゃいなよ」って呼んでもらったことがあって。そこで荒井さんと初めてお会いして、荒井さんの提供曲「きっと忘れない」をぶっつけ本番で歌ったんです。そのときの私のテンションを感じ取って「次は元気な曲を歌ってもらいたい」って書いてくれたのが「Learn to Fly」。普段の私はそこまで元気じゃないんですけど(笑)、この曲を歌っているとどんどん元気になれるんです。

──sasakure.UKさんが作詞作曲を手がけた「アガルタの迷い子」も印象的でした。有形ランペイジ(sasakure.UKが主宰のバンド)がアレンジを担当、フュージョンのテイストを取り入れたサウンドも素晴らしくて。

ありがとうございます。以前、有形ランペイジのゲストボーカルをやったこともあるし、ぜひsasakureさんに曲を書いてもらいたかったんです。sasakureさんの曲をいくつか挙げさせてもらって「こういう感じがいいです」というお願いをして。テンポが速くて、ライブのときにメンバー紹介ができるような曲にしたかったんですよね。ジャズやフュージョンの雰囲気があって、メロディもかなり凝っていて。聴いてると幾何学模様が思い浮かぶような曲だなって思ってます。

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──そしてH ZETT Mさんとの初コラボとなる「スープの日」は、キャッチーなピアノのフレーズを軸にしたポップチューンに仕上げられてます。

すごくかわいらしい曲だったから、歌詞はちょっと変な感じにしたかったんです。深い愛の曲と言うか、ちょっとサイコパスな感じ。H ZETT Mさんとつながりができたこともうれしいですし、この曲があったことでPS4の曲にも誘ってもらえて(参照:PS4新作ラインナップムービーでH ZETTRIO、環ROY、鎮座DOPENESS、majikoがコラボ)、すごく感謝しています。

──続いては堀江晶太さん(KEMU VOXX / PENGUIN RESEARCH)の提供による「ダーウィン先生の倦怠」。アルバムの中でもっともエッジが効いたロックナンバーです。

堀江さんとは前のレーベルのときから「一緒にやりましょう」という話をしていたんです。堀江さんとどんな曲にするか相談させてもらったんですが、いろいろ話してる中で「System of a Downが好きです」って言ったら「あ、わかった。それね」って合点してくれたみたいで(笑)。私はSystem of a Downのちょっと気持ち悪いギターが好きなんですけど、そのテイストを曲の中に入れてくれて。デモを聴いたときから「最高だな」と思ってました。歌詞には怒りや鬱憤を吐き出しているんですけど、それだけだと本当に暗い感じになってしまうので、バランスを考えながら書きました。参考にしたのは「おかあさんといっしょ」の曲ですね。子供の頃から触れている「おかあさんといっしょ」や「アンパンマン」の曲って意外と深くて大好きで。好きなもののエッセンスが入れられた歌詞だと思ってます。

傷付いてた心に沁みてきた「Avenir」

──先ほども話に出た「Avenir」は、今作の中で唯一majikoさんが作詞作曲した曲になっています。

はい。「Avenir」というタイトルは、以前プロモーションで神戸に行ったときの思い出がもとになっているんです。SAVOYという有名なバーに行ったんですけど、そのときに飲んだカクテルが「Avenir」という名前で。すごくおいしくて、いろいろあって傷付いてた心に沁みてきて。そのとき「前向きな曲ができたら『Avenir』というタイトルを付けよう」と思ったんですよね。「Avenir」は当時の気持ちにも合ってるし、私にとっても大事な1曲になりました。ライブでもいい感じで歌えてますね。私のライブのお客さんは直立不動で聴いてくれる方が多いんですけど、きっと心の中で盛り上がってくれてるんだろうなって。

──アルバムの最後はホリエアツシさんの「AM」。ホリエさんはmajikoさんの音楽にとって欠かせないアーティストの1人になりつつありますね。

ホリエさんもずっと私のことを見てくれているし、歌のいいところもよくわかってくれている方だと思っています。今回の「AM」はアコースティックギターの弾き語りのデモを送っていただいたんですけど、それがもうすごく素敵で。Rayonsさん(中井雅子のソロプロジェクト)がアレンジしてくれたカルテットもすごくいいんです。ホリエさんも「ストレイテナーでもやってないようなストリングスのアレンジにしちゃったよ」って言ってました(笑)。

──バラエティに富んだアルバムになりましたね。しかもサウンド、歌詞の世界を含めて、今のmajikoさんがリアルに表現されていて。

そうですね。闇の時期のスパイスも入っているし、そこを抜け出た解放感も出てる。今の“majikoまとめ”という感じです。

愛を歌っていきたい

──アルバムの制作を通して、ご自身のよさを客観的に捉えることもできたのでは?

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少しずつわかってきました。以前、赤飯(オメでたい頭でなにより)さんと飲んだときに「どういう歌を歌いたいの?」という話になって。「majikoがどんなものに感動する?」って聞かれたから、「友情愛、家族愛、無償の愛に感動する」って答えたら「それやん!」って言われたんですよ。そのときから「愛を歌っていきたい」という気持ちが芽生えたんですけど、1曲目の「声」はまさにそういう曲だなと。今後の自分にとって、1つの手がかりになるような気がしています。愛にはいろんな形があるけど、自分なりの愛を表現してきたいですね。

──“愛を表現したい”というモチベーションは、以前はなかったんですか?

なかったですね。以前は「怒りや憤りをアウトプットする」という感じが強かったんです。そういう部分も残しつつ、もっと本質的なことを歌って聴いてくれる人を包み込むような存在になりたいって思っています。歌い始めて6、7年経ちますけど、意識はだいぶ変わりました。大人になったってことかもしれないですね……自分で言っちゃいましたけど(笑)。

──「AUBE」というタイトルは「夜明け」という意味ですよね?

はい。「Avenir」がフランス語だったから、「ミニアルバムのタイトルもフランス語にするのはどう?」と案をもらって、「夜明け」という意味の言葉を選びました。アーティスト写真やジャケットも夜明けの青色をイメージしてるんです。

──去年はつらい時期もあったけど、その経験も作品につながって。報われましたね。

ちょっと悔しいですね(笑)。あんなにつらかったのに、それも無駄じゃなかったんだなって。全部が無駄だったらずっと怒っていられるんだけど、そうじゃないから、怒りながらも「ありがとう」って言えるみたいな(笑)。でも悔しい経験を自分の中で浄化して、作品として出せる場所があるのはありがたいです。がんばろうという気持ちも強くなっているし、ここからはちゃんと歩いていけると思います。

majiko
majiko「AUBE」
2018年3月7日発売 / UNIVERSAL MUSIC
majiko「AUBE」限定盤

限定盤 [CD+DVD]
2800円 / UICZ-9102

Amazon.co.jp

majiko「AUBE」通常盤

通常盤 [CD]
2000円 / UICZ-4416

Amazon.co.jp

CD収録曲
  1. [作曲・作詞:haruka nakamura / 編曲:majiko、木下哲]
  2. Learn to Fly[作曲・作詞・編曲:荒井岳史]
  3. アガルタの迷い子[作曲・作詞:sasakure.UK / 編曲:有形ランペイジ]
  4. スープの日[作曲:H ZETT M / 作詞:jam、majiko / 編曲:H ZETT M]
  5. ダーウィン先生の倦怠[作曲:堀江晶太 / 作詞:堀江晶太、majiko / 編曲:堀江晶太]
  6. UNDERCOVER[作曲・作詞:市川喜康 / 編曲:坂本秀一]
  7. Avenir[作曲・作詞:majiko / 編曲:majiko、木下哲]
  8. AM[作曲・作詞:ホリエアツシ / 編曲:Rayons]
限定盤DVD収録内容
  • end
  • このピアノでお前を8759632145回ぶん殴る
  • ノクチルカの夜
  • ダージリン
  • 彗星のパレード
  • 心做し
  • 冬の太陽
  • 世田谷ナイトサファリ
  • アマデウス
  • きっと忘れない
  • Avenir

ライブ情報

majiko presents 「new album "AUBE" release party ~名古屋パッション編~」

2018年3月8日(木)愛知県 APOLLO BASE
<出演者>
majiko / Zanto / THURSDAY'S YOUTH

majiko presents 「new album "AUBE" release party ~大阪ハッピー編~」

2018年3月11日(日)大阪府 Socore Factory
<出演者>
majiko / みきとP / ネクライトーキー

majiko presents 「new album "AUBE" release party ~東京ハイカラ編~」

2018年3月14日(水)東京都 新代田FEVER
<出演者>
majiko / LUCKY TAPES / チーナ

majiko(マジコ)
majiko
2010年に“歌ってみた”動画を初投稿し、「まじ娘」名義で歌い手としての活動をスタートさせる。2011年にニコニコ動画で公開した「カゲロウデイズ」の歌唱動画が70万再生を記録するなど、人気の投稿者として注目を集め、多数のライブイベントでその歌声を披露。2015年6月には東京・東京キネマ倶楽部にて初のワンマンライブ「Contrast release party」を開催した。2016年12月にmajikoへと名義を変更し、2017年2月にメジャーデビューミニアルバム「CLOUD 7」をポニーキャニオンより発表。2018年2月にはユニバーサル・ミュージックに移籍し、新作ミニアルバム「AUBE」をリリースした。