majikoが新作ミニアルバム「AUBE」をリリースした。
2010年に“まじ娘”名義で“歌ってみた”動画を初投稿し、2017年2月にミニアルバム「CLOUD 7」を発表したタイミングでmajikoに改名。そしてレーベルの移籍を経て制作された今作は、海外のポップミュージックの要素とJ-POPの要素を同居させた無国籍な音楽性、ディープな心象風景をカラフルに描き出すボーカルなど、majikoの個性が存分に発揮された作品となった。「2017年はつらい1年だったけど、『AUBE』を作ったことで闇の時期を抜けました」と話す彼女に本作の制作プロセスを語ってもらった。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 後藤壮太郎
majikoの“闇の時期”
──まずは2017年の活動を振り返ってみたいと思います。2月にミニアルバム「CLOUD 7」をリリースしましたが、その後は表立った活動が少なかったですよね?
私にとっては“闇の時期”でした。「CLOUD 7」を出した頃は、思うように活動できない時期が続いていて「どうして?」と思う事が多くて。「これは環境を変えたほうがいいな」と思って、移籍をすることにしました。
──そういう状況に巻き込まれると、音楽の制作にも影響が出そうですね。
いや、逆に「すべてを音楽に注ぎ込む」という感じだったんです。活動する環境を変えてからは、しばらく何もできない時期があって。そのときが一番つらかったですけど、曲作りと筋トレが鬱憤のはけ口になっていました。ありがたいですよね、音楽は。今回もすごく助けてもらいました。
──その時期のモードは今回のミニアルバム「AUBE」にも反映されている?
出ていると思います。「AUBE」の中で最初にできた曲が自分で作詞作曲した「Avenir」だったんですが、「いざこざから解放されて私はもう自由だ!」という内容の歌詞になっていますし。あと、アレンジに関してもいろいろと実験していたんですよね。「冬の太陽」(ストレイテナーのトリビュート盤「PAUSE ~STRAIGHTENER Tribute Album~」の収録曲)は私がアレンジさせてもらった曲だったんですけど、そのときの経験を生かしながら、いろいろと新しいことも試していて。「CLOUD 7」の反省点もあったし……。
──反省点と言うと?
今思い返してみると「CLOUD 7」は、もっと細かい部分を詰められた作品だったなって。なかなか客観的に作品を見られなかったし、あとになって「こうすればよかったな」という部分もけっこうあったんです。今は前よりたくさんの方々が制作に関わってくれて、意見も言ってもらえるので助かってます。
今の私は新製品
──「AUBE」を制作するにあたっては、どんなテーマがあったんですか?
ローマ字の“majiko”を改めて示したかったし、もっとたくさんの方に自分のことを知ってほしいという気持ちがあって。そこから「J-POPの要素を取り入れてみよう」という話になって、市川喜康さん(嵐などの楽曲を手がける音楽プロデューサー)に「UNDERCOVER」という楽曲を作っていただいたんです。デモをいただいたとき、すごい曲だなと思いました。覚えやすくて口ずさみたくなるようなメロディだし、楽曲の展開も計算されていて、「さすがだな!」って。市川さんは私のミドル(中音域)の声が好きだと言ってくれて、サビのメロディもその音域を生かしているんです。歌ってみてちょっと新鮮で、新しい自分が見えた気がしましたね。歌詞についても、私にいろいろなことがあったことを含ませてくれて“鳥かごから飛び立つ”というイメージになっていて。
──なるほど。メインストリームのJ-POPにはもともと興味があったんですか?
実はそんなに興味がなかったんですよ(笑)。ニコニコ動画の“歌ってみた”に投稿していたときも、マイナーな曲、オルタナティブな曲を歌うのが好きだったくらいで。「自分の歌を聴いてもらうために有名な曲を選ぼう」と思っていた時期もあったけど、ある程度聴いてもらえるようになってからは、自分が好きな曲だけを歌うようになったので。
──どちらかと言うとマニアックな志向を持っていたmajikoさんが、今回はメインストリームに接近した理由はなんだったんでしょう?
もうちょっと世に出たいという意識が働いたんですよね。スタッフの皆さんもすごく協力してくれるし、「このチームで売れたい、みんなで幸せになりたい」という気持ちが強くなりました。この前、初めてテレビの収録があったんですよ。収録前は緊張で震えていたんですけど、やってみたら「楽しい! 病みつきになりそう!」と思って(笑)。現場では心の準備もできないまま収録が始まって、「ワーッ」って思いながらやってたんですけど、「短い時間で自分をアピールすることって、こういうことなんだ」と感じたんです。テレビで歌わせてもらうときは曲を3分くらいに収めるために歌詞を削る必要があって。以前の私だったら「嫌だな」と思ったんだろうけど、今の私は自分のことを“新製品”だと思っているから、どんどんアピールしないといけない。だからテレビでしっかり自分を表現することも必要だなって思っているんです。
「声」はmajikoへのラブレター
──そのほかの楽曲についても聞かせてください。リード曲「声」はharuka nakamuraさんの作詞作曲によるナンバーですね。
「声」はこちらからオーダーした曲じゃなくて、harukaさんから「曲ができた」って送ってもらったものなんです。以前harukaさんに書いてもらった「morrow」もすごくいい曲だったんですけど、ちょっとライブでやりにくいアレンジだったから、今回はバンドアレンジにしたくて。私が骨組みを考えつつ、いつもライブでバンマスをやってもらってる木下哲さん(G)にアレンジの協力をお願いして、さらにharukaさんがピアノのレコーディングに参加してくれたので、激アツな1曲になりました。
──歌詞については?
harukaさんは「君へのラブレターだから」と言ってくれてたんです。「見ていたよ 君のこと わかってみたくて」「僕の声 覚えてて欲しいんだ」って歌詞を読んで、私は「自分の声に対するラブレターなんだろうな」と思っていて。本当にずっと私のことを見ていてくれたし、話もたくさん聞いてもらって……高校生のとき、harukaさんの音楽は私の精神安定剤だったんですよ。harukaさんのアルバムを聴かないと眠れない時期もあったくらい。今回「声」という曲を書いていただいて、それがアルバムのリード曲になってすごく感慨深いです。ぜひライブでもやりたいですね。
──ライブでどう再現されるのか楽しみです。
バンドアレンジなんですけど、けっこう緻密ですからね。ホリエアツシ(ストレイテナー)さんから「『声』がすごくよかった。ライブが大変そうだけど」ってメールをもらったんですよ(笑)。今までは制作のときにライブでやることを全然想定してなくて、作品としていいものを目指す、という感じだったんです。でも今はもっとライブ重視で曲を作るようになってます。ダークな感じだけじゃなくて、みんなでノレる曲も欲しいなって。
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つながりから生まれたコラボ曲
- majiko「AUBE」
- 2018年3月7日発売 / UNIVERSAL MUSIC
-
限定盤 [CD+DVD]
2800円 / UICZ-9102 -
通常盤 [CD]
2000円 / UICZ-4416
- CD収録曲
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- 声[作曲・作詞:haruka nakamura / 編曲:majiko、木下哲]
- Learn to Fly[作曲・作詞・編曲:荒井岳史]
- アガルタの迷い子[作曲・作詞:sasakure.UK / 編曲:有形ランペイジ]
- スープの日[作曲:H ZETT M / 作詞:jam、majiko / 編曲:H ZETT M]
- ダーウィン先生の倦怠[作曲:堀江晶太 / 作詞:堀江晶太、majiko / 編曲:堀江晶太]
- UNDERCOVER[作曲・作詞:市川喜康 / 編曲:坂本秀一]
- Avenir[作曲・作詞:majiko / 編曲:majiko、木下哲]
- AM[作曲・作詞:ホリエアツシ / 編曲:Rayons]
- 限定盤DVD収録内容
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- end
- このピアノでお前を8759632145回ぶん殴る
- ノクチルカの夜
- ダージリン
- 彗星のパレード
- 心做し
- 冬の太陽
- 世田谷ナイトサファリ
- アマデウス
- きっと忘れない
- Avenir
ライブ情報
- majiko presents 「new album "AUBE" release party ~名古屋パッション編~」
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2018年3月8日(木)愛知県 APOLLO BASE
<出演者>
majiko / Zanto / THURSDAY'S YOUTH - majiko presents 「new album "AUBE" release party ~大阪ハッピー編~」
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2018年3月11日(日)大阪府 Socore Factory
<出演者>
majiko / みきとP / ネクライトーキー - majiko presents 「new album "AUBE" release party ~東京ハイカラ編~」
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2018年3月14日(水)東京都 新代田FEVER
<出演者>
majiko / LUCKY TAPES / チーナ
- majiko(マジコ)
- 2010年に“歌ってみた”動画を初投稿し、「まじ娘」名義で歌い手としての活動をスタートさせる。2011年にニコニコ動画で公開した「カゲロウデイズ」の歌唱動画が70万再生を記録するなど、人気の投稿者として注目を集め、多数のライブイベントでその歌声を披露。2015年6月には東京・東京キネマ倶楽部にて初のワンマンライブ「Contrast release party」を開催した。2016年12月にmajikoへと名義を変更し、2017年2月にメジャーデビューミニアルバム「CLOUD 7」をポニーキャニオンより発表。2018年2月にはユニバーサル・ミュージックに移籍し、新作ミニアルバム「AUBE」をリリースした。