いぎなり東北産 インタビュー|泥臭く駆け抜けた10年を経て、ついにメジャーデビュー

9人組アイドルグループ・いぎなり東北産がエイベックスからメジャーデビューを果たした。

スターダストプロモーション仙台のレッスン生グループとして2015年に結成されたいぎなり東北産。今年7月、彼女たちはかねてより目標に定めていた東京・日本武道館でワンマンライブ「TOHOKU9」を開催し、見事会場を満員にしてみせた(参照:いぎなり東北産「武道館はゴールじゃなくてスタート」レッスン生のままたどり着いた夢のステージ)。そしてその公演の終盤に、メジャーデビューが決定したことを満を持して発表。結成からの10年間、地方レッスン生のままがむしゃらに邁進してきた“TOHOKU9”はついにレッスン生を卒業し、晴れて新章へと歩みを進めた。

10月8日にリリースされたメジャー1stシングルの表題曲「らゔ♡戦セーション」は、“お祭り感”全開のアッパーチューン。何度も繰り返される「好きっちゃ!だべだべ」という東北弁のフレーズや、歌詞の随所ににじんだ勝ち気なマインドに東北産らしさが表れている。音楽ナタリーではメジャーデビューを記念してメンバー9人にインタビュー。レッスン生として過ごした10年間の活動に対する思い、多彩なカップリング曲を含むメジャー1stシングルの聴きどころ、メジャーのフィールドで叶えたい夢などを語ってもらった。

取材・文 / 土屋恵介撮影 / 八重代晃矢

レッスン生として過ごした10年、どんな時間だった?

──いぎなり東北産は7月に念願の日本武道館ワンマンを完遂させ、その公演内でメジャーデビューを発表しました。2015年8月9日の結成から長い期間、スターダストプロモーション内でスターダスト仙台のレッスン生グループという位置付けだったわけですが、この10年間は皆さんにとってどんな期間でしたか?

橘花怜 私たちは長い間、日本武道館を目標にがんばってきました。これは個人的な思いなんですけど、この目標に対する結果がどういうものになったとしてもメンバーのみんなや皆産(いぎなり東北産ファンの呼称)と過ごす1秒1秒こそが宝物で、かけがえのないものだと思っていたんです。実際に日本武道館という目標が叶って、さらにメジャーデビューが決まったときは、今までがんばってたことのすべてがつながったからこそ、ここにたどり着いたんだなとすごく感じました。今はこれまで以上にやりたいことがあるし、希望に満ちあふれています。

葉月結菜 10年間って言うと、長い下積み期間を過ごしてきたと思われるかもしれないですが、自分たちとしては下積みという感覚はないんです。学生時代を東北産に捧げて泥臭くやってきたけど、目の前にある目標を1つずつ叶えていく、すごく大切な10年だったなと感じています。その結果として日本武道館という大きな目標を達成できて、しかもご縁があってエイベックスさんでメジャーデビューさせていただけることがホントにうれしいです。この10年間は、夢を叶えていくための時間だったなと思います。

北美梨寧 10年前、東北産が始まった頃の私は、「10年後の自分は何してるかな?」「なんの仕事をしてるんだろう?」と将来についてぼんやり想像していたんですけど、気が付いたら変わらずにメンバーみんなと一緒にいて(笑)。なんか不思議だけどすごくうれしいことだし、ホントに奇跡だなと思います。しかも10周年のタイミングでメジャーデビューって映画みたいな話じゃないですか。普通ではありえない、東北産だけのストーリーを築いてこれた10年なのかなと感じています。

橘花怜

橘花怜

葉月結菜

葉月結菜

北美梨寧

北美梨寧

──日本武道館公演は10年間の集大成とも言える内容で、“TOHOKU9”の気合いと覚悟が感じられました。

律月ひかる 日本武道館という大きな夢を9人全員で一緒に叶えることができたことが、まずホントによかったです。もちろんたくさんの方たちの支えがあってのことだけど、メンバー1人ひとりがいろんなことを乗り越えてきたからこそ叶えられたと思うので、全員のがんばりに対して「偉いね」と言いたいです。日本武道館を終えたあとはちょっと強くなったというか、より自分たちに自信を持てるようになりました。この先、なんでもやっていけそうだなという気持ちです。

藤谷美海 日本武道館当日を振り返ると、すべてがキラキラして輝いていて、絶対に忘れたくない日でした。かれんくん(橘)がステージで「これからのお守りになるような日にできたらいい」と言っていましたけど、その言葉通り、あの日の思い出がお守りのように心の中に残っていますし、私も自信が付きました。あと、グループを紹介するときに「日本武道館に立ったグループです」と言えることがすごくうれしい。階段を上がったことを実感しています。

伊達花彩 メンバーみんなで日本武道館を目標にすると決めたとき、正直、日本武道館がどんな場所かよくわかっていない状態だったんですけど、活動していく中で日本武道館がいかにすごい会場なのかを知っていきました。だから、この9人でそのステージに立てたことがめちゃめちゃうれしいです。あと印象的だったのが、1曲目の「東京アレルギー」が始まる前に、イヤモニを通してコレオの先生が「GO!」って声をかけてくださったこと。そこでみんなの気持ちがひとつになり、気合いが入ってぶちアガったのを覚えてます。もう、そこで泣きそうでした。日本武道館を乗り越えたことが自信につながったし、この9人ならもっと大きい目標も達成できるんじゃないかと強く思ってます。

──日本武道館ロスなど一切なく、ひたすら前を向いているのが東北産らしいですね。武道館ワンマンのほかに、今年の夏で印象に残っていることはありますか?

桜ひなの 今年も夏フェスにいくつか出させてもらったんですけど、「TIF」(「TOKYO IDOL FESTIVAL」)のときにスケジュールが分単位で組まれていていろんなステージに出させていただいたんです。もう売れっ子になった気分でした(笑)。あと去年に比べて、すれ違ったアイドルさんたちから声をかけてもらう頻度が圧倒的に増えました。ただ憧れている側だった自分が、アイドルさんに憧れられる存在にこの10年でなれたんだと実感できて、すっごくすっごくうれしくて暑い中でもがんばれました。

吉瀬真珠 今年の夏は、メジャーデビューに向けた活動で初めて尽くしでした。まず、リリースイベントをやるのが初めてだったんですよ。フリーイベントはたくさんやらせてもらっていますが、シングルのリリイベとなると心持ちが全然違いました。ドキドキしましたし、「らゔ♡戦セーション」をより多くの人に届けたいという思いが強かったので、すごく気合いが入りました。

安杜羽加 日本武道館が終わってからけっこうハードスケジュールで、メンバーみんなで売れっ子体験をしていました(笑)。ライブをやりつつ、その間に新曲4曲分のレコーディングや振り入れがあったり、かなり覚えることが多かったです。でも東北産って「ヤバい! ヤバい!」とか言いながら、みんなちゃんとやるんですよね。この10年間もそうでしたし、頭がパンクしそうなときもちゃんとやりきるんです。誰も投げ出したりしない。それってすごいことだなと思いますし、そういうメンバーの根の真面目さが今につながってると思います。この10年で培ってきたものを生かしながら、メジャーデビューに向かっていったとても濃い夏でした。

桜ひなの

桜ひなの

吉瀬真珠

吉瀬真珠

安杜羽加

安杜羽加

東北産は“犬が泥んこになって無邪気に笑ってる感じ”

──そして、ついにメジャー1stシングルがエイベックスからリリースされました。まずは表題曲の「らゔ♡戦セーション」について紹介をお願いします。

 “かわいいの時代”に宣戦布告するみたいな曲です。

──この曲を携えて、今のアイドルシーンに対して戦いの狼煙を上げると。

伊達 そんな感じです! 東北産って、今のアイドルにないジャンルのグループだと思うんですよ。前から自分たちでも言ってますけど、かわいいの皮を被りつつ、根っこの泥臭さが強い。なんだか、犬が泥んこになって無邪気に笑ってる感じ。

一同 アハハハ!

 でも、ホントにそう思う。「らゔ♡戦セーション」はすごくキャッチーでノリがいい曲ですが、歌詞に「カワイイしかバズんないのつっまんないでしょ?」というフレーズがあるんです。東北産らしく、かわいさの固定観念をぶち壊していこうというマインドの曲ですね。

──では、「らゔ♡戦セーション」の好きなポイントを9人それぞれ聞かせてもらえますか。

吉瀬 私の好きなポイントは、サビで「好きっちゃ!好きっちゃ!好きっちゃ!だべだべ」と歌うところ。説明が難しいですが、指ハートを作って、チュッてしながら飛ばす振付になっているんです。すごくキャッチーでかわいいです。

 ファンの方の中には「メジャーデビューしたら今までの東北産じゃなくなっちゃうのかな?」と不安になっている人もいっぱいいると思うんですね。でも「好きっちゃ!だべだべ」とか、今までの楽曲みたいにちゃんと東北弁のフレーズも入っています。今の流行を意識しつつも初心を忘れないという、私たちが一番大切にしたいことが歌詞にもしっかり表れていて、東北産の新たな一歩の楽曲としてぴったりだなと思います。

北美 「個性は末端までわ・た・し」というフレーズは、個性派ぞろいの9人をひと言で表していて好きです。あと「あざとさも いい子も やりゃいいんでしょ?」にも東北産のマインドが出ているなって。かと思えば「好きっちゃ!だべだべ」とかわいく歌うところもあるし、1曲の中に東北産マインドの“踏み台”にするための”かわいい”が織り混ぜられているように感じました。今まで通りの私たちでもあるし、新しい私たちでもあると思います。

伊達 曲調はすごくポップでかわいらしいんですけど、歌詞にはちゃんと芯があって、伝えたいことがまっすぐに書かれています。だからこそ、しっかり大切に歌っていきたいと思います。

葉月 私は最初に聴いたときから「らゔ♡戦セーション」の曲調が好きなんですけど、歌がけっこう難しいんですよ。高音パートもありますし、曲が進むにつれて音程がどんどんどん上がっていって。でも実力がないと歌えない楽曲をいただけたことがうれしいです。今の流行りのかわいさも取り入れつつ、それとはちょっと違う、ど真ん中じゃないところを狙っている曲調が、私の推しポイントですね。

伊達花彩

伊達花彩

藤谷美海

藤谷美海

律月ひかる

律月ひかる

藤谷 振付はかわいくて真似しやすい、キャッチーな仕上がりになっています。その中に東北産ならではの細かい展開がいっぱい入っていて。2人でチューする場面があったり、手をつないではしゃいでる子がいたり、何回観ても飽きない、すごく好きな振付です。

安杜 ダンスはキャッチーでありつつ、けっこう激しめで、全身を使って戦っているイメージです。もともと東北産は激しいダンスの曲が多いので、その点でも今までと変わっていないことがうれしいですし、それでいて面白い振りが盛り込まれているのも、ふざけていていいなと思いました。やっぱりかわいいだけだとつまんないし、ライブで観たときに楽しいパフォーマンスになっていることが重要なのかなって。

 東北産って戦隊モノっぽいイメージがあるなと思っているんですけど、「らゔ♡戦セーション」のイントロではメンバーが入れ替わって1人ずつポーズを決めるんですよ。私はそこがすごく好きです。なんというか、“最強感”を感じます。

律月 私のお気に入りポイントは、「私は私になりたい それ以外は興味なし」というフレーズです。“Going my way”な感じがすごくいいなって。「らゔ」のあとにハートが付いていたり、「時代は手のなかにゅう☆ジェネレーション」の「にゅう」の後ろに星が入っているのもお気に入りです(笑)。