Lunv Loyalとはどんなラッパーなのか? その才能を絶賛するSEEDA、Jinmenusagiが証言

秋田県秋田市土崎港出身のラッパーLunv Loyalが今年4月にシングル「存在」でメジャーデビューを果たし、メジャー第2弾シングルとなる新曲「Air Life」を5月15日にリリースした。

今から約13年前、17歳のときにラップと出会ったという彼は、2020年に発表した楽曲「100」がR-指定に絶賛されるなど、同業のラッパーやコアなヒップホップヘッズから強い支持を集めてきたラッパー。そのユニークなパンチラインの数々でも知られている(参考:パンチライン・オブ・ザ・イヤー2023)。

音楽ナタリーでは、Lunv Loyalの魅力を深掘りするため、彼の才能を高く評価する SEEDA、Jinmenusagiとの対談をセッティングし、Lunv Loyal本人へのソロインタビューも実施。シーンの重要人物であるラッパー2人の証言と本人の言葉を通して、Lunv Loyalとはどんなラッパーなのかを明らかにする。

取材・文 / 高橋圭太撮影 / ハタサトシ

Lunv Loyal × SEEDA対談

秋田で噂のアイツだ!

Lunv Loyal SEEDAさんにコンタクトを取ったのはもう10年くらい前ですね。自分がまだ秋田に住んでるとき。SEEDAさんがやってた「CONCRETE GREEN」というコンピレーションシリーズがあって、そこに収録される「Red Hot」という曲のリミックスの一般公募があったんですよ。それでヴァースを録って送ったら直々に連絡が返ってきて、っていうのが最初。ある日、「SEEDAという者ですけども」って留守電が入ってて(笑)。折り返して少ししゃべったんです。自分が参加した「Red Hot Remix」を「CONCRETE GREEN - THE CHICAGO ALLIANCE」(2014年4月リリース)に収録してもらって、ちゃんとギャランティももらって。それが自分のヴァースでもらった初めてのギャランティだったんで感謝してます。

SEEDA マジっすか。でも公募で送ってもらったラッパーの中で圧倒的に一番よかったから選ばせてもらったんですよ。たぶんLunvくんが17歳とか18歳ぐらいの頃だと思うんだけど、秋田でイベントがあったときに僕も呼んでいただいたことがあって、そのときにもうすでに秋田のみんなが「ヤバいラッパーがいる」と言ってて。その話を聞いてたから「CONCRETE GREEN」に応募があったときに「あ、秋田で噂のアイツだ!」みたいな。それもあってすぐ電話しましたね。

左からSEEDA、Lunv Loyal。

左からSEEDA、Lunv Loyal。

Lunv Loyal そこから10年近く経って、こないだ自分が秋田で開催したワンマンライブにSEEDAさんを呼べたというのは感慨深かったですね。自分にとってSEEDAさんの魅力は言葉なんですよ。SEEDAさんの楽曲を聴いて、救われたり、孤独を埋めてもらったりたくさんしたんで。ほかのアーティストとは違う、特別な何かがあるんですよね。影響を受けたし、こういうアーティストになりたいなと単純に思った最初の日本人ラッパーだった。秋田から出てくるときも一緒に曲やることを目標にしてたっすね。

日本語のラップの曲で5本の指に入るぐらい好き

SEEDA Lunvくんは運動神経というか、ラップの地力が圧倒的にありますよね。スタンダードな部分のスキルがすべて高い。基礎体力がすごくあるし、そのせいか制作のスピードもかなり速いんです。フロウもLunvくんでしか出せない味があるよね。

Lunv Loyal 確かに刻みの部分はほかの人とちょっと違うかなと自分でも思います。それって幼少期にずっとやってたお囃子や太鼓のリズムが出てるんじゃないですかね。グルーヴが崩れないように1文字1文字を当てる……それぞれの言葉の輪郭をビートにハッキリ当てるのは得意かもしれない。

SEEDA それに独自の世界観もあって。クールな音楽性の裏に沸々と熱さを感じるというか。それは彼が持ってる他人に対する優しさなのかもしれないけど、独特な世界観だなと思う。その中でカッコいい曲も書けるし、面白いことも言えるという。涙が出るようなことを言えるんですよ、Lunvくんは。そういう“Lunv Loyal節”みたいなものがあるよね。

Lunv Loyal ああ、“節”はけっこう言われるかもしれません。ありがとうございます。

SEEDA 自分はLunvくんの曲で好きなのが「KAZE」っていう曲。もう全部歌えるっすよ。あの曲は自分が落ち込んでるときに聴いてすごく励まされた。もう日本語のラップの曲で5本の指に入るぐらい好きですよ、マジで。

Lunv Loyal めちゃくちゃうれしいっす。自分は……前にも直接伝えたんですけど、SEEDAさんの曲で一番聴いたのはI-DeAさんとやってる「Walk Wit Me」っていう曲で。

SEEDA 恐縮です。

Lunv Loyal 自分も「Walk Wit Me」を聴いて救われた気持ちだったんで、「KAZE」で微力ながら恩返しできたのかな。アルバムだと「GREEN」(2005年8月発売)は死ぬほど聴きました。あの作品は現状ストリーミングで聴けないので、実家からCDコンポごと持ってこようかなって思ってます(笑)。

ガッツリ2人で作れた「高所恐怖症」

──「CONCRETE GREEN」での初接触後、お二人が共演するのは2022年の「Gettin' Money (Remix)」になりますね。この楽曲はどういった経緯で生まれたんでしょう?

SEEDA オリジナルの「Gettin' Money」を聴いて自分がLunvくんに連絡したんです。最初に「ニートtokyo」(SEEDAが主宰するヒップホップ関係者を中心としたインタビューを配信するYouTube番組)のメンバーから「Lunv Loyalがお前のこと言ってるよ」みたいな連絡が来て。で、聴いてみたらめっちゃカッコよくって。それですぐ連絡した感じです。

Lunv Loyal そうでしたね。SEEDAさんから連絡をもらって、そこから自分が「一緒にリミックスやりませんか?」ってアプローチしたという。リリックの中でSEEDAさんの名前出してマジでよかったなと思いました。言ってみるもんだなと(笑)。

SEEDA 参加するからには下手なものは出せないなと思ったのを覚えてる。で、それがその後の「高所恐怖症」のリリースにつながった。

Lunv Loyal 「Gettin' Money」はあくまでリミックスに参加してもらうって形だったので、「高所恐怖症」ではしっかり2人で作りたいっていう話をして。

SEEDA 自分が歌いたいリリックをガーッと書いたのをLunvくんにパスして。で、彼に自分のヴァースも一緒に作ってもらってます。コライティングというか。だからガッツリ2人で作れた印象がありますね。

Lunv Loyal 最高でした。制作が楽しすぎて。

我々の世代が大事にしてたリリシズムがある

Lunv Loyal 自分にとってはSEEDAさんのラップってすごく異次元というか。絶対できないだろうなと思うんですよ。英語でのラップがうまい人って、日本語になると印象が変わることが多いんですけど、本当にその境目がわからないぐらいナチュラルに聴き取れる。それにやっぱり言葉選び。ほかのラッパーと違うオリジナルな言い回しがあって、それがすごい刺さる。リリックの中に孤独を感じるんですよ。自分が好きだった尾崎豊と同じようなバイブスをSEEDAさんから感じますね。

SEEDA リリシズムというかね。Lunvくんにも自分は同じことを思っていて。スタイルは違うんですけど、我々の世代が大事にしてたリリシズムみたいなものを感じますよ。しかもそれをさらに上手に自分のものにしてるのがすごい。

SEEDA

SEEDA

Lunv Loyal うれしいなあ。SEEDAさんから受けた影響はまさにそういう部分だと自分では思ってるんで。勝手にそういう部分でのバトンを継いでるという責任感は感じてるかもしれません。それって失われちゃいけないカルチャーだと思ってます。

SEEDA 秋田に行ったときに感じたのは、Lunvくんはやっぱフッドスターっていうことで。みんなLunvくんの話をするし、地元の話も面白いんすよね。だからそういうフッドの歌だったり、バックグラウンドをテーマにした曲を個人的に聴きたい。

Lunv Loyal 了解です。

SEEDA これはホント個人的な希望なんで(笑)。とにかくこれからもどんどん走っていってどんどん自分たちが見たことのない新しい景色を見せてもらいたいですね。Lunvくんしか作れない景色を。

Lunv Loyal そうですね、そこにこだわっていきたいです。できてないこと、やってないことも含めて挑戦していけたらなって。30代、始まったばかりなんで突っ走ります。