LUNA SEA「MOTHER」「STYLE」セルフカバーアルバム特集|INORAN & Jソロインタビュー (2/4)

変化することはいいこと

──完成したアルバムと向き合ってみて、印象が変わった曲はありましたか?

うーん……印象は特に変わらないかな。この2枚のアルバムはわりとコンスタントにライブでやっている曲が多いし、ずっと重ねてきた“地層”があるので。時間の経過はあんまり関係ないんですよ。例えばThe Rolling Stonesが「Jumpin' Jack Flash」をライブで演奏したとして、発表当時を思い出す人もいれば、ブラジルで100万人以上動員したライブで披露した「Jumpin' Jack Flash」を思い浮かべる人もいる。でも、本人たちはそんなに意識してないと思うんですよね。周りが変わって、感じることが違うだけ。その歴史があったから今があるということは事実なので、改めて過去のアルバムを再録して、ツアーでその音を表現できるのはとてもいいことだなと思います。楽しいし、幸せな体験をしているところです。

──「DUAL ARENA TOUR 2023」が始まった感触は?

やっぱり、アルバムを作ってツアーに出るという流れは、ロックバンドとして、アーティストとして、これ以上ない幸せですね。今その渦中にいることを楽しんでいます。

──アルバムの流れとライブのセットリストはまた違うと思いますが、ツアーのセットリストならではの面白さも感じていますか?

セットリストに対してもそうだし、各曲に対してもそうだし、ライブを通して愛しさが増した感覚があります。弾いている人にも、観ている人にもそういう気持ちがあると、やっぱりいいムードが生まれると思うので。1曲1曲を大切にして演奏できるセットリストですね。

INORAN

──セットリストで言うと、「MOTHER」に収録されている「FAKE」は今までと同様に演奏されていない状態ですが……。

どこかでやりたいですけどねえ。どうなんでしょう。

──「MOTHER」のツアーを開催するという発表があったときに、「FAKE」は演奏されるのか?と話題になっていましたよ。

ふふふ。まあ、ここまでやらなかったらやらないほうがいいんじゃないですか?(笑) いつか、どこかでちゃんとやるとかね。それまでは出し惜しみ続けますよ。ははは!

──楽しみにしています(笑)。ちなみに「EDEN」と「IMAGE」の再現ライブのときと、作品との向き合い方は変わっていますか?

変わりましたね。あのときより自分たちはさらに年を重ねて、経験も積んでいるので。ただライブをやって終わりというものではなくて、せっかくやるからには何かを残そうという気合いみたいなものが違いますね。ツアーにしてよかったなと思うし、この先の公演でどういう景色が見られるのかとにかく楽しみです。

──当時のエネルギーが戻ってくる感覚なのか、新しくなる感じなのか、どちらですか?

新しい感じがあるかな。約30年前に生まれた作品ではあるんですけど、何度もライブで演奏して、みんなが聴き続けてくれたことによって、どんどん成熟してきたわけですよね。ただ、必ずしもいいと言えない成熟の仕方もあると思うんですよ。そういう中で、今回は再録したことで未来に向けてもう一度投げる作業ができたというか。リペアができた感覚があります。例えば来年もツアーをするとしたら、「ROSIER」とかはずっと演奏し続けると思うんですけど、今回のツアーと再録を経たことで、また違う成熟度になっていると思う。実際、すでに新しいものになっている実感があります。

──ライブでは当時の映像を流す演出もありましたが、この約30年間で一番柔軟に変化してきたのはINORANさんだと感じていて。

そうですか?(笑)

──先ほどのレコーディングへの向き合い方もそうですし、ライブでたくさんコーラスを担当するようになったのも大きな変化なのかなと。

僕は変化することはすごくいいことだと思っているので、大げさに言っちゃうと自然の摂理に準じているだけです。どこをどう間違えてコーラスするようになったのかわからないけど(笑)、それも積み重ねてきた結果なんですよね。1995年と2023年を比べてどっちがどうという話じゃなく、その間に熟成期間があるので。美しい経験をしてきたなと思いますよ。

──あと、INORANさんは毎回LUNA SEAのライブになると髪型をいろいろ試されていて、今回のツアーでは金髪ドレッドのインパクトが大きかったです。

そうですよね。僕も逆の立場だったら驚いたと思います(笑)。旅をしてるときにどこかのお店の店員があの髪型をしてるのを見かけて、カッコいいなと思って真似してみただけなんですけど。

──そうだったんですね。ライブはちょっと遊びたいという気持ちが毎回あるんですか?

髪型も、ステージ衣装もそうだし、もっと言ったら演奏のフレーズも、例えば真ちゃん(真矢 / Dr)と遊んじゃおうとか思うことは多いです。今の時代だからこそ、ライブを生きているものにしたいんですよ。これは昔から思っていることだけど、アルバムを完全再現するんだったらCDを流せばいいだけなので。ライブというものは、迫力と振動と、会場の温度、みんなが発する熱があって、視覚とか五感で楽しめる貴重な場所だと思う。そこを自分も楽しんでいます。

INORAN

メンバー全員、いい奴らなんです

──ステージの上でその瞬間に生まれているものは、客席から観ていても感じます。「MOTHER」「STYLE」発売当時のライブを思い返すと、もっとバチバチした緊張感があった印象ですが、ステージ上のムードにも変化を感じますか?

当然、同じ曲を演奏していても、演奏している人の成熟度が全然違いますからね(笑)。25歳の頃と、50代の空気は違うし、反対に24、5歳には戻れないので。みんなが「MOTHER」や「STYLE」というアルバムを思い浮かべたときにつじつまが合うようには意識しているかな。でも、当時は経験も少ないから、単純に遊びを持たせる余裕がなかったんじゃないですか? バチバチしていると言えば、今でもバチバチしてますからね。ははは!

──当時は激動の時代だったと思いますが、振り返るといかがですか?

そうですねえ、決して100点じゃないですけど、90点くらいはあげたいですね。もっとよくできたかもしれないから90点。でも、一生懸命やっていたし、まったく悔いはない活動だったと思います。

──そんな「MOTHER」と「STYLE」が2023年によみがえったこともすごいことですが、そもそもLUNA SEAにとって4年ぶりのアルバムですので、待ち望んでいた人も多いと思います。

月並みなプロモーショントークみたいになりますが……サブスクでもいいけど、やっぱりCDを手に取って聴いていただきたいですね。古いかもしれないけど、今はそういう感覚も大事になっている時代だと思う。アナログ盤やヴァイナルのようなムーブメントもあるし、僕らみたいなバンドはそういうことを言わなきゃいけない世代ですから。手に取ってジャケットを眺めながら聴くとか、自分でプレイヤーに入れて再生する感じがいいよねと言いたいし、そう感じられる作品を作れたと思います。

──ジャケットも素敵な仕上がりで。「MOTHER」のほうはオリジナルのジャケットにミクロな視点でフォーカスして、「STYLE」のほうは、逆にマクロに引いたデザインが面白いと思いました。デザインについてはメンバーで話をしたんですか?

いや、デザイナーさんにお任せですね。でも、その解釈すごいですね。初めて気付きました(笑)。何かを伝えたわけではないので、デザイナーさんが現代的な解釈で作ってくれたんだと思います。あんまり細かい話を僕らからすると、角が丸くなってしまう気がするんですよ。

左からINORAN、J。

──そこも、スティーブさんにミックスをお願いする感覚と近いんですね。それぞれのクリエイティブを尊重しながら、1つの作品を作っていくという。

うん。やっぱりメンバーもいろいろ経験してきて今があるわけで。失敗ではないですけど、口出ししすぎて……みたいなときもいっぱいあったんですよ。そうしながら、5人だけでは作品を作れない、ツアーもできないということを感じていて。だから、チームとしてリスペクトしながらやっていくことはすごく大事なんです。そこに愛があってこその音楽だと思うし。

──なるほど。まだまだツアーは続きますし、年末には「FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY」でひさしぶりのフェス出演もありますね。

楽しみですね。とにかく僕らの音をみんなにぶつけてみて、1人でも多くの人が何かを感じてくれたらいいなと思います。対バン相手を食ってやろうみたいな、そんな若さもないし(笑)。そういうものじゃなくて、もうちょっと豊かな思いをしてもらえるような演奏をして、オーディエンスと一緒にほかにはない瞬間を生み出すことができればいいですね。

──そして、来年はLUNA SEA結成35周年になりますが……。

アニバーサリーイヤーなので、あとから振り返ったときに忘れられない年にしたいなとは思っています。楽しみにしていてください。

──今、計画を立てている段階だったりするんでしょうか?

そうですねえ、ふわっとしてますけど(笑)。来年になってみなきゃわからないけど……周年を迎えて、何かができたとしたら、それはつまりバンドと5人がちゃんといるということだから。そういうことも踏まえて、楽しみにしていてほしいです。でも、次を確約はできないので。まずはこのツアーを楽しんでほしい。今観ておくべきものだと思うし、今聴くべきアルバムたちだと確信しています。

──そうですね。改めて、REBOOTしてからもメンバー全員がずっと第一線で活動してきて、かつLUNA SEAとしてつながっているから、今回のツアーやアルバムが実現したわけで。その熱量を5人が共有しているのは本当に希有なことだと思います。

メンバー全員、いいやつらなんですよ。素朴で、純粋で、音楽バカですから。それしかできない不器用な人たちなんです……って言っておきます(笑)。

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